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03 Sweet Memories
Sweet Memories 4
『自分が存在している理由』って…
いつかわたしが、みっこに言った台詞と同じ!
この人の考えてること、わたしの心と根っこの方で繋がってるみたい!
そう思って川島君の話を聞いていると、彼の言葉のひとつひとつが、わたしの胸の奥に、びっくりするくらい自然に入ってくる。
男の人と話していて、こんなことは初めて。
なんだか嬉しい。
少し照れたように頬を赤らめながら、川島君はクッキーをつまんだ。
「はは。理屈っぽいことばかり並べてしまったな。ごめんな。今日は弥生さんから、小説講座のことを聞くだけだった筈なのに」
「そんなことない。川島君の言うこと、よくわかるわ」
「ほんと?」
「でも、意外だった」
かすかにでもいい。
自分の気持ちを匂わせるような言葉を、わたしは彼に伝えたかった。
「高校の頃は、川島君がわたしとおんなじことを考えてるなんて、思いもしなかったから」
「ぼくは思ってたよ」
「え?」
その言葉に、わたしの方が驚かされる。思わず川島君の瞳を見つめる。
彼もわたしの瞳を見つめていた。
心の奥まで見透かされてしまいそうな、まっすぐな視線。
川島君はおもむろに、理由を話しはじめた。
「弥生さんって、しっかりしてたもんな。同じ方向に流されていくミーハーな女子たちと違って、ちゃんと自分で考えて、自分がなにをすればいいか、わかってるみたいだった。
人生に確かな目標を持っているっていうか、いろいろ深い話ができるんじゃないかなって、感じていたんだよ」
「そ、そんな風に思ってくれていたなんて。あっ、あの… ありがとう」
真っ赤になって慌てるわたしを見て、彼はクスッと笑う。
川島君って、いつも落ち着いている。
同級生の男子ってなんだか子供っぽいんだけど、川島君は大人びてるっていうか、言動のはしばしに余裕を感じられる。
そういえば高校の頃から、この人が怒ったりあわてたりしてるとこって、見たことがない。
いつだってどこでだって、いつも落ち着いてて冷静で、そのくせ近寄りにくいってわけじゃなく、誰にでも親しげに微笑みかけていた。
行動力もあって、なにかイベントがある度に、中心になって進めたりしていた。
だから、クラスの男子にも女子にも人気があって、いつだってクラス委員や幹事とかに選ばれていたっけ。
「そういえば、弥生さんとこうしてゆっくり話しするのって、初めてだね」
「そ、そうね」
「弥生さんは、男子とはあまりしゃべってなかったみたいだからなぁ」
「わたし… 男子って、苦手だったから」
あ…
どうしてこんなことが、するっと言えるんだろ。
「はは。うちのクラスの男子、休み時間も教室で野球したりプロレスしたりで、かなり野蛮だったから、女子から見ればやっぱり、ドン引きだよな」
「そんなことないけど… わたし男兄弟とかいないし、男の人のこと、よく分からないの」
「それはまずいな」
「え?」
「男なんて、いきなりオオカミに変身したりする、ガサツで危険な生き物なんだぜ」
「えっ… そ、そうなの?!」
「なんてね。女の子をそうやってからかったりするのも、悲しい男の性かもしれないな~。まあ、そんなことで喜ぶような、単純なイキモノなんだよ。男って」
「もうっ。それってただ、イジワルなだけじゃない?」
「ごめんよ」
「あ、はははっ」
軽く舌を出す川島君を見て、わたしは思わず声を出して笑った。自分でもびっくりするくらい、自然な笑み。
川島君となら、構えずに話ができる。
わたし、どうしてこんないい人に、今まで話しかける勇気がなかったんだろ。
「高校生だった頃に、こんな風に話せたらよかったのにね」
わたしの口から思いもかけず、そんな素直な言葉が溢れてくる。なんだか彼の前で、ようやく自分らしくなれたみたい。
「高校の時は話せなかったくせに、卒業して再会したりすると、意外なくらい話せるもんだな」
「ほんと、不思議ね」
わたし、ずっとこんな風に川島君と話がしたかった。
何度そうしたいと思って、手紙を書いただろう?
その度に、机の奥にしまいこんで渡せなかった、わたしの想い。
こうして今、川島君と話しながら、わたしの心は次第にあの頃…
高校生だった頃に戻っていった。
つづく
いつかわたしが、みっこに言った台詞と同じ!
この人の考えてること、わたしの心と根っこの方で繋がってるみたい!
そう思って川島君の話を聞いていると、彼の言葉のひとつひとつが、わたしの胸の奥に、びっくりするくらい自然に入ってくる。
男の人と話していて、こんなことは初めて。
なんだか嬉しい。
少し照れたように頬を赤らめながら、川島君はクッキーをつまんだ。
「はは。理屈っぽいことばかり並べてしまったな。ごめんな。今日は弥生さんから、小説講座のことを聞くだけだった筈なのに」
「そんなことない。川島君の言うこと、よくわかるわ」
「ほんと?」
「でも、意外だった」
かすかにでもいい。
自分の気持ちを匂わせるような言葉を、わたしは彼に伝えたかった。
「高校の頃は、川島君がわたしとおんなじことを考えてるなんて、思いもしなかったから」
「ぼくは思ってたよ」
「え?」
その言葉に、わたしの方が驚かされる。思わず川島君の瞳を見つめる。
彼もわたしの瞳を見つめていた。
心の奥まで見透かされてしまいそうな、まっすぐな視線。
川島君はおもむろに、理由を話しはじめた。
「弥生さんって、しっかりしてたもんな。同じ方向に流されていくミーハーな女子たちと違って、ちゃんと自分で考えて、自分がなにをすればいいか、わかってるみたいだった。
人生に確かな目標を持っているっていうか、いろいろ深い話ができるんじゃないかなって、感じていたんだよ」
「そ、そんな風に思ってくれていたなんて。あっ、あの… ありがとう」
真っ赤になって慌てるわたしを見て、彼はクスッと笑う。
川島君って、いつも落ち着いている。
同級生の男子ってなんだか子供っぽいんだけど、川島君は大人びてるっていうか、言動のはしばしに余裕を感じられる。
そういえば高校の頃から、この人が怒ったりあわてたりしてるとこって、見たことがない。
いつだってどこでだって、いつも落ち着いてて冷静で、そのくせ近寄りにくいってわけじゃなく、誰にでも親しげに微笑みかけていた。
行動力もあって、なにかイベントがある度に、中心になって進めたりしていた。
だから、クラスの男子にも女子にも人気があって、いつだってクラス委員や幹事とかに選ばれていたっけ。
「そういえば、弥生さんとこうしてゆっくり話しするのって、初めてだね」
「そ、そうね」
「弥生さんは、男子とはあまりしゃべってなかったみたいだからなぁ」
「わたし… 男子って、苦手だったから」
あ…
どうしてこんなことが、するっと言えるんだろ。
「はは。うちのクラスの男子、休み時間も教室で野球したりプロレスしたりで、かなり野蛮だったから、女子から見ればやっぱり、ドン引きだよな」
「そんなことないけど… わたし男兄弟とかいないし、男の人のこと、よく分からないの」
「それはまずいな」
「え?」
「男なんて、いきなりオオカミに変身したりする、ガサツで危険な生き物なんだぜ」
「えっ… そ、そうなの?!」
「なんてね。女の子をそうやってからかったりするのも、悲しい男の性かもしれないな~。まあ、そんなことで喜ぶような、単純なイキモノなんだよ。男って」
「もうっ。それってただ、イジワルなだけじゃない?」
「ごめんよ」
「あ、はははっ」
軽く舌を出す川島君を見て、わたしは思わず声を出して笑った。自分でもびっくりするくらい、自然な笑み。
川島君となら、構えずに話ができる。
わたし、どうしてこんないい人に、今まで話しかける勇気がなかったんだろ。
「高校生だった頃に、こんな風に話せたらよかったのにね」
わたしの口から思いもかけず、そんな素直な言葉が溢れてくる。なんだか彼の前で、ようやく自分らしくなれたみたい。
「高校の時は話せなかったくせに、卒業して再会したりすると、意外なくらい話せるもんだな」
「ほんと、不思議ね」
わたし、ずっとこんな風に川島君と話がしたかった。
何度そうしたいと思って、手紙を書いただろう?
その度に、机の奥にしまいこんで渡せなかった、わたしの想い。
こうして今、川島君と話しながら、わたしの心は次第にあの頃…
高校生だった頃に戻っていった。
つづく
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