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05 Love Affair
Love Affair 4
補足する様に、悠姫ミノルさんが言う。
「出版社も今、どんどんMacを導入しているけど、それと同じシステムで同じアプリケーションだから、原理的には商業出版物と同じ様な本になるはずだよ。印刷方法の違いはあるけど」
「すごいですね! コンピューターで同人誌作るなんて。なんかハイテクです。
自分のお話しが活字になるのに憧れてたから、嬉しいです」
「ビジュアルアーツ専門学校生なら、そのくらいできないとな」
ちょっぴり誇らしげに、川島君が言う。
「まあ、『Adobe』社もドロー系のDTPソフト出してるけど、『Illustrator』はテキストの編集が面倒で、『FreeHand』よりはまだ使い勝手が悪いかな~」
「『PhotoShop』もまだまだ機能面で物足りないところ多いよな。特に複数の画像を合成するときとか、一度合成したら修正きかないの、なんとかならないかな」
「ピクセル単位で演算するから、複数の画像を扱うには、まずパソコンのスペックを要求されるだろ」
「そういえば今度のMacは、68系のプロセッサからRISCチップのPowerPCへ変わるって話じゃないか。そうしたら演算速度もかなり速くなって、フィルタ処理も楽になりそうだな」
川島君と悠姫さんはパソコンの話に没頭していく。
男の人って、こういうメカの話が好きなんだな。わたしにはなにがなんだかさっぱりだけど。
「ふうん」
そんな話で盛り上がっていたふたりの隣で、わたしの原稿を読み終わった志摩みさとさんが、感心したように言った。
「弥生さん。とっても素敵なお話し書くのね。この主人公の『パセリ』ちゃんに感情移入しちゃって、ラストシーンはなんだかホロっとしてきちゃった」
「え? そうですか?!」
「すごく面白かったわ。他にも今まで書いたものがあるんだったら、見せてほしいんだけど、どぉう?」
「じゃあ、今度の集会の時に持ってきます」
わたしの声は、きっと弾んでいたと思う。
人から褒められるのは、やっぱり嬉しい。
『それじゃあ、わたしのも読んで感想聞かせてね』と、志摩さんも微笑みながら言う。
川島君と創作活動をいっしょにできるのは、もちろん嬉しいことだけど、こんな風にだれかと作品を見せ合ったりするのは、創作意欲を刺激されてモチベーションもテンションも上がってくる。最初は不安だったけど、やっぱりこのサークルに入れてもらって、よかったかな。
「えみちゃん、遅いわね」
ハンバーガーを食べながら、持ち寄った作品や編集の話なんかをしているとき、不意に、志摩みさとさんが漏らした。
わたしはドキリとした。
『えみちゃん』って、まさか… 蘭恵美さんのこと?
みさとさん、彼女のこと知ってるの?
しかし、蘭恵美さんのことを知ってるのは、彼女だけじゃないみたいだった。
「えみちゃん、今日は学校に寄らないといけないんだってさ。もうすぐ来ると思うよ」
川島君が原稿に目をやったまま、コーヒーを飲みながら話す。彼の口から「えみちゃん」という親しげな呼び方を聞くと、やっぱり心がざわついてしまう。
「やった。きゃわゆい女子高生の制服ミニスカ姿が見れるな」
「ミノル、よだれたらすなよ」
「まあ、えみちゃん美少女だしね。男どもが鼻の下伸ばすのも、無理ないか」
「それを知ってて武器にするタイプだものね。彼女」
志摩さんの言葉に、紗羅さんが冷静に分析を加える。
みんなの会話に、わたしは心臓の音が速くなるのを感じながら、口をはさんだ。
「あの… えみちゃんって?」
「ああ。ぼくの高校の時のクラブの後輩だよ」
「すっごいわがままな子なのよ。可愛いから許すけど」
川島君のあとに、志摩みさとさんがつけ足した。
「あ。写真見ます? 川島が撮ったやつ」
そう言いながら、松尾さんが封筒から数枚の写真を取り出した。
それは、綺麗な夕焼けの海に、ひとりの少女が佇んでいる写真だった。
真っ赤な景色の中に、小さく写った少女の後ろ姿。
だけどそれは、川島君の心の中の海に、入ることを請われた女の子。
次の写真は彼女のアップ。レンズを通して川島君を見つめて微笑む表情が、ふたりの距離の近さを語っていた。
まさか…
こんなところで、蘭さんといっしょに活動することになるなんて…
もしかして、このサークルにいる限り、わたしは川島君と蘭さんをずっと端から見ていることになるの?
そんなこと、今のわたしに耐えられる?
つづく
「出版社も今、どんどんMacを導入しているけど、それと同じシステムで同じアプリケーションだから、原理的には商業出版物と同じ様な本になるはずだよ。印刷方法の違いはあるけど」
「すごいですね! コンピューターで同人誌作るなんて。なんかハイテクです。
自分のお話しが活字になるのに憧れてたから、嬉しいです」
「ビジュアルアーツ専門学校生なら、そのくらいできないとな」
ちょっぴり誇らしげに、川島君が言う。
「まあ、『Adobe』社もドロー系のDTPソフト出してるけど、『Illustrator』はテキストの編集が面倒で、『FreeHand』よりはまだ使い勝手が悪いかな~」
「『PhotoShop』もまだまだ機能面で物足りないところ多いよな。特に複数の画像を合成するときとか、一度合成したら修正きかないの、なんとかならないかな」
「ピクセル単位で演算するから、複数の画像を扱うには、まずパソコンのスペックを要求されるだろ」
「そういえば今度のMacは、68系のプロセッサからRISCチップのPowerPCへ変わるって話じゃないか。そうしたら演算速度もかなり速くなって、フィルタ処理も楽になりそうだな」
川島君と悠姫さんはパソコンの話に没頭していく。
男の人って、こういうメカの話が好きなんだな。わたしにはなにがなんだかさっぱりだけど。
「ふうん」
そんな話で盛り上がっていたふたりの隣で、わたしの原稿を読み終わった志摩みさとさんが、感心したように言った。
「弥生さん。とっても素敵なお話し書くのね。この主人公の『パセリ』ちゃんに感情移入しちゃって、ラストシーンはなんだかホロっとしてきちゃった」
「え? そうですか?!」
「すごく面白かったわ。他にも今まで書いたものがあるんだったら、見せてほしいんだけど、どぉう?」
「じゃあ、今度の集会の時に持ってきます」
わたしの声は、きっと弾んでいたと思う。
人から褒められるのは、やっぱり嬉しい。
『それじゃあ、わたしのも読んで感想聞かせてね』と、志摩さんも微笑みながら言う。
川島君と創作活動をいっしょにできるのは、もちろん嬉しいことだけど、こんな風にだれかと作品を見せ合ったりするのは、創作意欲を刺激されてモチベーションもテンションも上がってくる。最初は不安だったけど、やっぱりこのサークルに入れてもらって、よかったかな。
「えみちゃん、遅いわね」
ハンバーガーを食べながら、持ち寄った作品や編集の話なんかをしているとき、不意に、志摩みさとさんが漏らした。
わたしはドキリとした。
『えみちゃん』って、まさか… 蘭恵美さんのこと?
みさとさん、彼女のこと知ってるの?
しかし、蘭恵美さんのことを知ってるのは、彼女だけじゃないみたいだった。
「えみちゃん、今日は学校に寄らないといけないんだってさ。もうすぐ来ると思うよ」
川島君が原稿に目をやったまま、コーヒーを飲みながら話す。彼の口から「えみちゃん」という親しげな呼び方を聞くと、やっぱり心がざわついてしまう。
「やった。きゃわゆい女子高生の制服ミニスカ姿が見れるな」
「ミノル、よだれたらすなよ」
「まあ、えみちゃん美少女だしね。男どもが鼻の下伸ばすのも、無理ないか」
「それを知ってて武器にするタイプだものね。彼女」
志摩さんの言葉に、紗羅さんが冷静に分析を加える。
みんなの会話に、わたしは心臓の音が速くなるのを感じながら、口をはさんだ。
「あの… えみちゃんって?」
「ああ。ぼくの高校の時のクラブの後輩だよ」
「すっごいわがままな子なのよ。可愛いから許すけど」
川島君のあとに、志摩みさとさんがつけ足した。
「あ。写真見ます? 川島が撮ったやつ」
そう言いながら、松尾さんが封筒から数枚の写真を取り出した。
それは、綺麗な夕焼けの海に、ひとりの少女が佇んでいる写真だった。
真っ赤な景色の中に、小さく写った少女の後ろ姿。
だけどそれは、川島君の心の中の海に、入ることを請われた女の子。
次の写真は彼女のアップ。レンズを通して川島君を見つめて微笑む表情が、ふたりの距離の近さを語っていた。
まさか…
こんなところで、蘭さんといっしょに活動することになるなんて…
もしかして、このサークルにいる限り、わたしは川島君と蘭さんをずっと端から見ていることになるの?
そんなこと、今のわたしに耐えられる?
つづく
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