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05 Love Affair
Love Affair 5
「お。噂をすれば、だな。こっちこっち!」
それからほどなく、川島君がそう言って、店に入ってきた制服姿の女の子に手を振った。
川島君…
わたしのときは気づいてくれなかったのに。
反射的にわたしは、川島君の視線の先に目をやった。
見覚えのある制服姿の彼女… 蘭恵美さんが、カウンターを横切って、まっすぐこちらにやってくるのが見える。
あのときは動揺していて、うろ覚えだったけど、こうして改めて彼女を見ると、つくづく可愛い子だなぁって、ため息が出そうになる。
ミニのプリーツスカートから伸びる、すらりと細い綺麗な脚。
柔らかそうな栗色の長い猫毛が、透きとおるくらい白い肌によく映えていて、お人形みたい。
とろりとした黒目がちな瞳は、まつ毛が長くてコケティッシュで、ふっくらとした小さな唇が、清楚ななかにも女の色気を漂わせている。
こんな魅力的な女の子だったら、川島君がモデルにしたくなるのも、当たり前。
モデルだけじゃなくて、恋人にも…
こちらに近づいてわたしに気がついた蘭さんは、怪訝そうな表情をした。
「ああ、はじめてだったね。彼女は高校の時の同級生で、弥生さつきさん。
さつきちゃん、彼女が蘭恵美ちゃん」
「…はじめまして」
「は、はじめまして」
なにかを探るように、ぎこちなく蘭さんは会釈する。わたしもおどおどと挨拶を返した。
これが、運命のいたずら?
こうして蘭さんと、直接話すことになる日がくるなんて、あの時は思いもしなかった。
そう…
あの、雪の降りしきる冬の日の放課後には。
「川島先輩から、お話はうかがってました。弥生先輩、小説お書きになるんですね」
警戒するような顔で、蘭さんはわたしを見つめながら、無愛想に言った。
「書くってほどじゃないけど」
「わたしは文才なんてないけど、去年からずっと川島先輩のモデルとして、作品づくりに協力してるんです。先輩ってふだんはとっても優しいけど、写真撮る時は鬼になって、無茶な注文ばかりしてくるんですよ。笑っちゃいますよね」
『笑っちゃいますよね』と言った彼女の口調は、どこかつっけんどんだった。
その言葉のはしには、『自分の方がずっと川島君のことを知っていて、請われてモデルをしている』という、優越感みたいなものが漂っていた。
わたし、バカだった。
本屋での奇跡の再会に浮かれて、運命の赤い糸みたいなものを感じていたけど、川島君はわたしが知らないところで、確実に、この子といっしょの時間を重ねていたんだ。
だけどわたしは、それを責めることも、嘆くこともできない。
それこそみっこが言ったとおり、わたしにはそんな『資格』なんてない。
だって、わたしと川島君は、ただの『友達』だから…
はぁ…
なんだか凹んでしまう…
みんなの輪に加わった蘭さんは、ひときわ華やかで可愛らしく咲き誇る、大輪の花だった。
悠姫ミノルさんや松尾さんは、蘭さんを囲んで浮かれている様子で、心なしか川島君も、さっきまでより表情が明るい。
「ね。えみちゃんって、男子に人気あるでしょ。まるでアイドルみたいに甘やかされてるのよ」
蘭さんを囲んで盛り上がっている男たちに聞こえないように、志摩さんはこっそり耳打ちしてきた。
「そ、そうですね。蘭さん、可愛いですから」
「確かにね~。川島君でなくても、モデルをお願いしたくなるわよね~」
「そうですね」
「水着の写真も見せてもらったけど、えみちゃんって細くて脚も長くて、素敵だったわ。その魅力を本人もよくわかってる感じ」
「水着…」
川島君、蘭さんの水着姿まで撮ってるんだ。
水着姿を男の人に見せるなんて、しかもそれを撮らせるなんて、ふつうの関係じゃできないはず。
やっぱりふたりは、恋人同士…
「弥生さん?」
訝しがるように、志摩さんがわたしを見ている。
いけない。
つい視線が、川島君と蘭さんを追っている。
せっかくこんなに和気藹々としているサークルの雰囲気を、わたしひとりで壊すわけにはいかない。
「あっ。なんだか見とれちゃって。ほんとに蘭さんって、可愛いですね。つい、目が吸いついてしまいますよね」
そう言って、わたしは取り繕った。
蘭恵美さんを交えた集会の続きを、わたしは本心を悟られないようにして過ごした。
つづく
それからほどなく、川島君がそう言って、店に入ってきた制服姿の女の子に手を振った。
川島君…
わたしのときは気づいてくれなかったのに。
反射的にわたしは、川島君の視線の先に目をやった。
見覚えのある制服姿の彼女… 蘭恵美さんが、カウンターを横切って、まっすぐこちらにやってくるのが見える。
あのときは動揺していて、うろ覚えだったけど、こうして改めて彼女を見ると、つくづく可愛い子だなぁって、ため息が出そうになる。
ミニのプリーツスカートから伸びる、すらりと細い綺麗な脚。
柔らかそうな栗色の長い猫毛が、透きとおるくらい白い肌によく映えていて、お人形みたい。
とろりとした黒目がちな瞳は、まつ毛が長くてコケティッシュで、ふっくらとした小さな唇が、清楚ななかにも女の色気を漂わせている。
こんな魅力的な女の子だったら、川島君がモデルにしたくなるのも、当たり前。
モデルだけじゃなくて、恋人にも…
こちらに近づいてわたしに気がついた蘭さんは、怪訝そうな表情をした。
「ああ、はじめてだったね。彼女は高校の時の同級生で、弥生さつきさん。
さつきちゃん、彼女が蘭恵美ちゃん」
「…はじめまして」
「は、はじめまして」
なにかを探るように、ぎこちなく蘭さんは会釈する。わたしもおどおどと挨拶を返した。
これが、運命のいたずら?
こうして蘭さんと、直接話すことになる日がくるなんて、あの時は思いもしなかった。
そう…
あの、雪の降りしきる冬の日の放課後には。
「川島先輩から、お話はうかがってました。弥生先輩、小説お書きになるんですね」
警戒するような顔で、蘭さんはわたしを見つめながら、無愛想に言った。
「書くってほどじゃないけど」
「わたしは文才なんてないけど、去年からずっと川島先輩のモデルとして、作品づくりに協力してるんです。先輩ってふだんはとっても優しいけど、写真撮る時は鬼になって、無茶な注文ばかりしてくるんですよ。笑っちゃいますよね」
『笑っちゃいますよね』と言った彼女の口調は、どこかつっけんどんだった。
その言葉のはしには、『自分の方がずっと川島君のことを知っていて、請われてモデルをしている』という、優越感みたいなものが漂っていた。
わたし、バカだった。
本屋での奇跡の再会に浮かれて、運命の赤い糸みたいなものを感じていたけど、川島君はわたしが知らないところで、確実に、この子といっしょの時間を重ねていたんだ。
だけどわたしは、それを責めることも、嘆くこともできない。
それこそみっこが言ったとおり、わたしにはそんな『資格』なんてない。
だって、わたしと川島君は、ただの『友達』だから…
はぁ…
なんだか凹んでしまう…
みんなの輪に加わった蘭さんは、ひときわ華やかで可愛らしく咲き誇る、大輪の花だった。
悠姫ミノルさんや松尾さんは、蘭さんを囲んで浮かれている様子で、心なしか川島君も、さっきまでより表情が明るい。
「ね。えみちゃんって、男子に人気あるでしょ。まるでアイドルみたいに甘やかされてるのよ」
蘭さんを囲んで盛り上がっている男たちに聞こえないように、志摩さんはこっそり耳打ちしてきた。
「そ、そうですね。蘭さん、可愛いですから」
「確かにね~。川島君でなくても、モデルをお願いしたくなるわよね~」
「そうですね」
「水着の写真も見せてもらったけど、えみちゃんって細くて脚も長くて、素敵だったわ。その魅力を本人もよくわかってる感じ」
「水着…」
川島君、蘭さんの水着姿まで撮ってるんだ。
水着姿を男の人に見せるなんて、しかもそれを撮らせるなんて、ふつうの関係じゃできないはず。
やっぱりふたりは、恋人同士…
「弥生さん?」
訝しがるように、志摩さんがわたしを見ている。
いけない。
つい視線が、川島君と蘭さんを追っている。
せっかくこんなに和気藹々としているサークルの雰囲気を、わたしひとりで壊すわけにはいかない。
「あっ。なんだか見とれちゃって。ほんとに蘭さんって、可愛いですね。つい、目が吸いついてしまいますよね」
そう言って、わたしは取り繕った。
蘭恵美さんを交えた集会の続きを、わたしは本心を悟られないようにして過ごした。
つづく
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