Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
48 / 300
05 Love Affair

Love Affair 16

   affair7

 秋も深まってきて、シトシトと雨が降る夜だった。
この秋は、川島君をめぐる女の子たちとの小さな事件に、一喜一憂していた気がする。
だけどそれも、今夜で終わらせるつもりだった。
今日こそは川島君に、自分の気持ちを打ち明けるつもりにしていた。

小説講座を終えた夜。
わたしと川島君はいつものように九州文化センターをあとにすると、濡れたアスファルトにネオンが滲んでいる夜の大通りに出た。
どちらが言い出すでもなく、ふたりの足はいつもの『紅茶貴族』の方へ向かう。
だけど今夜の川島君、口数が少ない。
ちょっと元気ないみたい。
わたしたちは黙ったまま、繁華街の雑踏を抜けた。
冷たい秋雨の雫が足許を濡らして、からだが凍える。

違う。
雨のせいだけじゃない。
これから先の恋のゆくえを予感して、心が震えるんだ。

しばらく黙って歩いて、川島君は『ふう』と、大きくため息をついた。
「ぼくはカメラマン失格かな。サークルも、運営できる器じゃないのかも」
「え? どうして?」
思いもかけない川島君の言葉に、わたしは驚いて聞き返す。
川島君とあららぎさんとの間に、なにかあったのかもしれない。
それとも、志摩みさとさんと…

わたしの問いには答えず、ただ空を仰いで、川島君は自分を鼓舞するように言う。
「でも、やるしかないよな。みんなの原稿を預かってる責任もある。ちゃんとやるよ」
「川島君… どうしたの?」
「ああ。つまんないこと言ってごめんよ」
そう言って彼は、無理矢理明るい表情を作った。
「なにかあったの?」
「…」
川島君は黙っている。
「川島君?」
「…どうせわかることだから、黙っててもしかたないな…」
そう言ってため息ついた川島君は、意を決するように話しはじめた。

「えみちゃん… サークルやめるって。
ぼくが撮った写真も『使わないでほしい』って言われたんだよ」
「蘭さんとなにかあったの?」
そう訊きながら、わたしは予感するものがあった。先週の集会の後、蘭さんは川島君に告白したんだろうって。
そして…

「川島君、蘭さんのこと、振ったの?」
わたしの言葉に、彼はびっくりした様子で聞き返す。
「どうしてわかるんだい?」
「だって… 蘭さん、こないだの集会の時、わたしに話してくれたの。『川島君に告白する』って。その彼女が川島君と訣別するようなことするのは、それしか考えられないから」
「…」
その言葉に観念したように、川島君は打ち明けはじめた。
「さつきちゃん、いつか言ってただろ。『女の子に期待だけさせるのって、残酷』だって」
「うん」
「どうやらぼくは、残酷だったみたいなんだ。
ぼくは彼女の期待には応えてやれなかった」
「でも、蘭さんって… 可愛いじゃない。川島君、どうして断ったの?」
「…」
わたしの質問には答えず、自分に言い聞かせるように、川島君はポツポツと話しはじめた。
「『カメラマンとモデルだけの割り切った関係』なんて、偉そうなこと言ったけど、そんなの机上の空論だったよ。
実際の人間関係は、そんな綺麗ごとなんか、通用しない。
ぼくはえみちゃんのこと、傷つけた。最悪の形で。でも、どうしてやることもできない」
そう言うと川島君は、肩を落とす。
彼の吐くため息が、白くかすんだ。
こないだの集会の帰り、蘭さんと川島君との間で、そういうやりとりがあったのだろう。
それはきっと、『綺麗ごと』じゃすまないような、ドロドロとした会話。

「しかたないよ。もう終わったことなんでしょ?
だったらもう、蘭さんのことは忘れて、新しいモデルさんを探せばいいじゃない?」
そう川島君をなぐさめたわたしの声は、自分でもびっくりするくらい優しかった。
きっとそれは、喜びを悟られまいとしているから?

わたしこそ残酷。
蘭さんが川島君に振られたことを、喜んでる。

つづく
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

Emerald

藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。 叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。 自分にとっては完全に新しい場所。 しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。 仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。 〜main cast〜 結城美咲(Yuki Misaki) 黒瀬 悠(Kurose Haruka) ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。 ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。