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05 Love Affair
Love Affair 18
『ふぅん。川島君って、あたしのことが好きだったんだ?
それは嬉しいんだけど、あたしはただの友達としてしか見れないかな。
それに、さつきさんにも『協力する』って言っちゃったし。
まあ、先のことはわかんないけど、今は友達のままでいましょ。
色恋沙汰で、サークル崩壊させるわけにもいかないしね』
甘くて綺麗な絵里香さんの声が、頭の中をぐるぐる回る。
川島君は絵里香さんが好き。
わたしはただの友達で、恋の相談相手。
それでも川島君とつながっているためには、平気な顔してこんな恋話も聞かなきゃいけない。
そんなこと、わたしにできるはずがない。
無理よみっこ。
わたし、川島君の好きな人の話を笑って聞いていられるほど、強くない。
『ドンとぶつかって華々しく散る方が、気が楽になる』
みっこはお気楽に言ったけど、『ただの友達』だというのを思い知らされて、心が引き裂かれそうな状態で、気が楽になるわけない。
『えみちゃんとくっつくより、さつきさんの方がお似合いだと思うのよ』
だなんて。絵里香さんも、勘違いもいいところ。
こんなに、川島君に想われてるのも知らないで。
やっぱり、深入りなんて、するんじゃなかった。
川島君のこと、追いかけるんじゃなかった。
『いっしょにいられるから』って単純な理由で、同人サークルなんかに入るんじゃなかった。
期待持たせるようなことばかり言った、みっこが悪い。
いい人ぶって、川島君の気持ちをものにした、絵里香さんが悪い。
期待だけさせて、それに応えてくれない川島君が、いちばん残酷だ。
ううん。
そうじゃない。
そうやってなにもかも、人のせいにしているわたしが、いちばん醜い。
なんか、思考がグチャグチャ。
いろんな葛藤が渦巻いて、心が押しつぶされそう。
これが、川島君の言う、『恋愛の矛盾』なの?
もう、なにも考えたくない。
逃げ出してしまいたい。
わたしには、それを乗り越えるパワーなんてない。
でも、ここで逃げ出したら、もう、川島君と友達でさえいられなくなる。
「あっ、ごめん。今日、学校の課題もあるし、もう帰らなきゃ。さよなら」
反射的に出た言葉だった。
そう言い残すと、なにか言いたげにこちらを見る川島君にかまわず、赤信号に変わったばかりの横断歩道を、わたしは無理矢理急ぎ足で渡った。
走りかけたクルマがタイヤを軋ませて止まる。
激しいクラクションの音。
ヒステリックな甲高いノイズが、いやがうえにも気持ちを揺さぶる。
渦を巻いて、側溝を雨が流れていく。落葉が真っ黒なマンホールの中に吸い込まれていく。
川島君…
百万分の一でも『わたしのことが好き』だという、淡い期待もあったのに。
もう絶望的。
追いかけても来てくれない…
どうしてあの頃の、ゆるくて幸せなままでいられなかったんだろう?
やっぱり、ずっとあの場所に留まっていればよかった。
ただの友達でも、そばにいれるだけでよかった。
そうすれば、川島君とこんな結果になることなんて、なかったのに。
でも、もうダメ。
あの場面で逃げ出したわたしは、川島君と友達でいる資格さえ、棄ててしまったから。
もう、川島君に会えない。
こんなグダグダな感情を抱いたまま、川島君の前に出ても、きっとその気持ちを見透かされてしまうに決まってる。
こんなみっともないわたし、川島君に見られるのは、死ぬよりイヤだ。
できることなら、時間を巻き戻したい。
あの地下街の書店で、川島君と再会したときの、前まで…
大通りをかけ抜けると、わたしは立ち止まり、煮えたぎった自分の気持ちを冷ますように、傘をおろして、宙を見上げた。
墨を流したような、漆黒の空。
水滴が落ちてくる。
バタバタと、頬に冷たい雫が打ちつけ、ゴウゴウという雨音が、わたしをひとり、暗い闇の中に閉じ込める。
「もう… おしまいにしたい」
声にしたその言葉には、わずかに涙が混じっている。
その夜、わたしは川島祐二への恋に、自分で終止符を打つ決心をした。
END
15th Mar.2011
29th May 2017
12th Sep.2017
6th Dec.2019
それは嬉しいんだけど、あたしはただの友達としてしか見れないかな。
それに、さつきさんにも『協力する』って言っちゃったし。
まあ、先のことはわかんないけど、今は友達のままでいましょ。
色恋沙汰で、サークル崩壊させるわけにもいかないしね』
甘くて綺麗な絵里香さんの声が、頭の中をぐるぐる回る。
川島君は絵里香さんが好き。
わたしはただの友達で、恋の相談相手。
それでも川島君とつながっているためには、平気な顔してこんな恋話も聞かなきゃいけない。
そんなこと、わたしにできるはずがない。
無理よみっこ。
わたし、川島君の好きな人の話を笑って聞いていられるほど、強くない。
『ドンとぶつかって華々しく散る方が、気が楽になる』
みっこはお気楽に言ったけど、『ただの友達』だというのを思い知らされて、心が引き裂かれそうな状態で、気が楽になるわけない。
『えみちゃんとくっつくより、さつきさんの方がお似合いだと思うのよ』
だなんて。絵里香さんも、勘違いもいいところ。
こんなに、川島君に想われてるのも知らないで。
やっぱり、深入りなんて、するんじゃなかった。
川島君のこと、追いかけるんじゃなかった。
『いっしょにいられるから』って単純な理由で、同人サークルなんかに入るんじゃなかった。
期待持たせるようなことばかり言った、みっこが悪い。
いい人ぶって、川島君の気持ちをものにした、絵里香さんが悪い。
期待だけさせて、それに応えてくれない川島君が、いちばん残酷だ。
ううん。
そうじゃない。
そうやってなにもかも、人のせいにしているわたしが、いちばん醜い。
なんか、思考がグチャグチャ。
いろんな葛藤が渦巻いて、心が押しつぶされそう。
これが、川島君の言う、『恋愛の矛盾』なの?
もう、なにも考えたくない。
逃げ出してしまいたい。
わたしには、それを乗り越えるパワーなんてない。
でも、ここで逃げ出したら、もう、川島君と友達でさえいられなくなる。
「あっ、ごめん。今日、学校の課題もあるし、もう帰らなきゃ。さよなら」
反射的に出た言葉だった。
そう言い残すと、なにか言いたげにこちらを見る川島君にかまわず、赤信号に変わったばかりの横断歩道を、わたしは無理矢理急ぎ足で渡った。
走りかけたクルマがタイヤを軋ませて止まる。
激しいクラクションの音。
ヒステリックな甲高いノイズが、いやがうえにも気持ちを揺さぶる。
渦を巻いて、側溝を雨が流れていく。落葉が真っ黒なマンホールの中に吸い込まれていく。
川島君…
百万分の一でも『わたしのことが好き』だという、淡い期待もあったのに。
もう絶望的。
追いかけても来てくれない…
どうしてあの頃の、ゆるくて幸せなままでいられなかったんだろう?
やっぱり、ずっとあの場所に留まっていればよかった。
ただの友達でも、そばにいれるだけでよかった。
そうすれば、川島君とこんな結果になることなんて、なかったのに。
でも、もうダメ。
あの場面で逃げ出したわたしは、川島君と友達でいる資格さえ、棄ててしまったから。
もう、川島君に会えない。
こんなグダグダな感情を抱いたまま、川島君の前に出ても、きっとその気持ちを見透かされてしまうに決まってる。
こんなみっともないわたし、川島君に見られるのは、死ぬよりイヤだ。
できることなら、時間を巻き戻したい。
あの地下街の書店で、川島君と再会したときの、前まで…
大通りをかけ抜けると、わたしは立ち止まり、煮えたぎった自分の気持ちを冷ますように、傘をおろして、宙を見上げた。
墨を流したような、漆黒の空。
水滴が落ちてくる。
バタバタと、頬に冷たい雫が打ちつけ、ゴウゴウという雨音が、わたしをひとり、暗い闇の中に閉じ込める。
「もう… おしまいにしたい」
声にしたその言葉には、わずかに涙が混じっている。
その夜、わたしは川島祐二への恋に、自分で終止符を打つ決心をした。
END
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