57 / 300
07 Carnival Night
Carnival Night 3
「被服科3年の小池先輩っていえば、1年生で学内のファッションコンクールでグランプリ取って以来、三連覇中の方なんですよ。
あの『毎日ファッション・コンクール』にも上位入賞するくらいの天才で、もうアパレル系の会社からオファーがあって、服作ってるって聞きましたのよ。わたしの尊敬する大先輩なんです」
「だいたい西蘭女子大のファッションショーってぇ、ほとんどミスコンなんだって。全キャンパスからきれいな子選んでるのよぉ」
「それに小池先輩はモデル選びが特に厳しくって、去年だって自分でオーディションしたって話ですのよ。そんな人から選ばれて、森田さんってほんとにすごいなって、思ってましたのに」
「おまけに今年のショーは、東京のモデルクラブの人が見にくるんだってぇ。
えへ! スカウトされるチャンスじゃない!」
ミキちゃんとナオミはかわるがわるみっこに言う。特にナオミの方は、なんだか口調がはずんでいる。
「えへ。あたしファッションショーに出るんだ。みこちゃんにさつきちゃんも見にきてね。あ~あ。モデル! モデルになりたいっ!」
そう言いながらナオミはコロコロと笑う。
無邪気っていうか、天然っていうか、その独特の鼻にかかったようなしゃべり方と相まって、ナオミってどこか『マリリン・モンロー』っぽくって、男の人との噂も絶えないらしい。
「モデルって『派手』なイメージあるけど、本当はとっても地味な仕事なのよ。そんなに甘いものじゃないわ」
浮かれているナオミに水をさすように、みっこは冷ややかに言った。
「そうぉ? きれいな服着てパチパチ写真撮られてりゃいいんじゃん。簡単よぉ」
「パチパチ写真撮られるようになるには、いろんなことをガマンしなきゃいけないわ。特に新人モデルってのは、クライアントには絶対服従なのよ。『もっとやせろ』だの『腹の肉を減らせ』だの、『髪を切れ』だの『笑顔が暗い』だの、さんざん注文つけられて。結局、『他にイメージに合う子が見つかった』なんて、簡単に切り捨てられたりして。
そうやって潰れていった新人モデルを、あたし、たくさん見た」
「ほんとですの? 森田さん」
ミキちゃんが驚いて聞き返す。
「ええ」
みっこは続けた。
「それに、舞台に立ったり写真撮られたりしているのって、ほんのわずかの間よ。そのわずかな時間のために、ふだんからちゃんと自己管理して、スタイルや美容に気をつけて、汗だくになってダンスやウォーキング、ムーブメントの練習をするのよ。
自分のからだだけが資本だから、なんの保証もないし、友だちと夜更かししたり、自由に遊ぶことだってできなくなる。
モデルって名前だけに憧れているのなら、絶対続かない。本当に心から、モデルの仕事を愛してなきゃ、とてもできないわ」
あ…
みっこの最後のせりふ。
『本当に心から、モデルの仕事を愛してなきゃ、とてもできないわ』
この言葉がわたしの中で、なにかをかすった。
みっこはモデルって仕事を憎んでいたの?
それとも愛していたの?
「そんなの平気。すぐ慣れるわよぉ。それよりモデルになって、いつもきれいなカッコして、パリとかニューヨークに仕事で飛び回るのって、カッコいいじゃない!」
あまりにもあっけらかんとしたナオミの答えに、さすがのみっこもあきれた様子。立ち上がったみっこは、教科書を入れたバインダーをナオミの頭の上に乗せながら言った。
「じゃあナオミ。このバインダーを乗せたまま、教室のはしまで行って、戻ってきてみて」
つづく
あの『毎日ファッション・コンクール』にも上位入賞するくらいの天才で、もうアパレル系の会社からオファーがあって、服作ってるって聞きましたのよ。わたしの尊敬する大先輩なんです」
「だいたい西蘭女子大のファッションショーってぇ、ほとんどミスコンなんだって。全キャンパスからきれいな子選んでるのよぉ」
「それに小池先輩はモデル選びが特に厳しくって、去年だって自分でオーディションしたって話ですのよ。そんな人から選ばれて、森田さんってほんとにすごいなって、思ってましたのに」
「おまけに今年のショーは、東京のモデルクラブの人が見にくるんだってぇ。
えへ! スカウトされるチャンスじゃない!」
ミキちゃんとナオミはかわるがわるみっこに言う。特にナオミの方は、なんだか口調がはずんでいる。
「えへ。あたしファッションショーに出るんだ。みこちゃんにさつきちゃんも見にきてね。あ~あ。モデル! モデルになりたいっ!」
そう言いながらナオミはコロコロと笑う。
無邪気っていうか、天然っていうか、その独特の鼻にかかったようなしゃべり方と相まって、ナオミってどこか『マリリン・モンロー』っぽくって、男の人との噂も絶えないらしい。
「モデルって『派手』なイメージあるけど、本当はとっても地味な仕事なのよ。そんなに甘いものじゃないわ」
浮かれているナオミに水をさすように、みっこは冷ややかに言った。
「そうぉ? きれいな服着てパチパチ写真撮られてりゃいいんじゃん。簡単よぉ」
「パチパチ写真撮られるようになるには、いろんなことをガマンしなきゃいけないわ。特に新人モデルってのは、クライアントには絶対服従なのよ。『もっとやせろ』だの『腹の肉を減らせ』だの、『髪を切れ』だの『笑顔が暗い』だの、さんざん注文つけられて。結局、『他にイメージに合う子が見つかった』なんて、簡単に切り捨てられたりして。
そうやって潰れていった新人モデルを、あたし、たくさん見た」
「ほんとですの? 森田さん」
ミキちゃんが驚いて聞き返す。
「ええ」
みっこは続けた。
「それに、舞台に立ったり写真撮られたりしているのって、ほんのわずかの間よ。そのわずかな時間のために、ふだんからちゃんと自己管理して、スタイルや美容に気をつけて、汗だくになってダンスやウォーキング、ムーブメントの練習をするのよ。
自分のからだだけが資本だから、なんの保証もないし、友だちと夜更かししたり、自由に遊ぶことだってできなくなる。
モデルって名前だけに憧れているのなら、絶対続かない。本当に心から、モデルの仕事を愛してなきゃ、とてもできないわ」
あ…
みっこの最後のせりふ。
『本当に心から、モデルの仕事を愛してなきゃ、とてもできないわ』
この言葉がわたしの中で、なにかをかすった。
みっこはモデルって仕事を憎んでいたの?
それとも愛していたの?
「そんなの平気。すぐ慣れるわよぉ。それよりモデルになって、いつもきれいなカッコして、パリとかニューヨークに仕事で飛び回るのって、カッコいいじゃない!」
あまりにもあっけらかんとしたナオミの答えに、さすがのみっこもあきれた様子。立ち上がったみっこは、教科書を入れたバインダーをナオミの頭の上に乗せながら言った。
「じゃあナオミ。このバインダーを乗せたまま、教室のはしまで行って、戻ってきてみて」
つづく
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。