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08 講義室の王女たち
講義室の王女たち 2
「え? あたしが?」
「蘭さんとトラブって、モデルがいなくなった川島君に、『モデル級の子、紹介しようか?』って言ったんだけど、それでかなり落ち込んだらしいの」
「それってもしかして、あたしのこと?」
「そう」
「あ~、それはショックだろな。好きな子から『別の女の子紹介する』って言われるのって。たとえモデルだとしても」
「わたし、そこまで考えてなくて…」
「でもまぁ、それを乗り越えて結ばれたんだから、とにかくよかったじゃない」
「ありがと」
「とうとうさつきも、大人の階段登るのかぁ~」
「なにそれ。わたしたちまだ、なんにもしてないし…」
「あら? そんな意味で言ったんじゃないんだけど。さつきって意外とエッチね~」
「もうっ。みっこの方こそ、あのあと上村君とどうなったのよ?」
「さつきとおんなじよ。みんなでファミレス行って、しばらくしゃべって、そこで解散」
「電話番号とか聞かれてないの?」
「彼の番号はもらったけど、しばらくはペンディングかなぁ?」
「ペンディング?」
「そのうち、あたしの方から連絡するって言ってるの」
「みっこは上村君のこと、どう思ってるの?」
「ん~… とてもいい子なんだけどね…」
「だけど?」
「ちょっと物足りないかな。やっぱりふたつも年下で、高2ってのは。子供すぎて」
「みっこって、うんと年上で、リードしてくれるような恋愛がいいの?」
「ん… 自分がわがままだからかな。振り回されるような恋にあこがれる、かも」
ジリリリリリリ…
「では今日の講義はこれで終わり。来週は180ページからだからね」
みっこと話し込んでいるうちに、終業のベルが鳴り、西田教授がパタンと分厚い本を閉じて、告げた。そういえば今は講義中だっけ。このわたしが西田教授の講義もうわの空で、おしゃべりに夢中になるなんて、滅多にないことだわ。
めがねを直しながら本を小脇に抱え、教授は講義室を出ようとしたが、ふと立ち止まって、わたしの方を振り返った。
「弥生君。今日の昼休みは時間とれるかね?」
「あ… はい。大丈夫です」
とっさにそう返事をして、思わず頬が火照る。
「じゃあ、昼食の後にでも、私の研究室に来てくれないか? 南棟の302号室だからね」
そう言って、教授は講義室をあとにした。
「なになに? さつきったら川島君とつきあいはじめたばかりのくせに、もう西田教授と二股?」
クリアケースに教科書をしまいながら、みっこはわたしをからかう。
「そんなんじゃないって、実は…」
学校の南にあるカフェテリアにいっしょに向かいながら、わたしは事情を説明した。
実はわたし、西田教授から前期の課題として出されていた小説の創作課題で、とてもいい点をつけてもらったんだ。
周りの女子大生の日常を描いた近況小説だったけど、教授はたいそう興味を示してくれて、
『わたしの研究の一環として、いつかゆっくり話しを聞かせてくれないか?』
とおっしゃっていた。
わたしもみっこも次の講義は午後からで、ちょっと空いた時間はたいてい、南のカフェテリアで過ごしている。
テラスがサンルームになったこのカフェテリアは、窓から光がたっぷりと差し込んできて、雰囲気も明るくて気持ちがいい。
すごく美味しいってわけじゃないけど、スイーツメニューがけっこう充実していて、なにより安くて、わたしみたいな貧乏学生には嬉しい。
「やっほー。みこちゃんさつきちゃん。やっぱりここにいたんだぁ」
「おふたりいつもツーショットなのね」
そう言いながら、ナオミとミキちゃんがカフェテリアに入ってきた。
「ねえねえ、みこちゃん。あのあと上村君とはどうしたの?」
フルーツパフェを手にしたナオミは、みっこのとなりに腰をおろすよりも早く、訊いてきた。みっこは怪訝そうな顔でナオミを見る。
「あら? ファミレスの前で、みんな別れたじゃない?」
「え~? みこちゃん、ほんとにそのまま帰っちゃったの?」
「そうだけど… ナオミたちはあれから、どこかに行ったの?」
「えへ」
ナオミはちょっと頬を赤らめて肩をすくめると、軽く舌を出す。
「カツくんと、やっちゃった」
つづく
「蘭さんとトラブって、モデルがいなくなった川島君に、『モデル級の子、紹介しようか?』って言ったんだけど、それでかなり落ち込んだらしいの」
「それってもしかして、あたしのこと?」
「そう」
「あ~、それはショックだろな。好きな子から『別の女の子紹介する』って言われるのって。たとえモデルだとしても」
「わたし、そこまで考えてなくて…」
「でもまぁ、それを乗り越えて結ばれたんだから、とにかくよかったじゃない」
「ありがと」
「とうとうさつきも、大人の階段登るのかぁ~」
「なにそれ。わたしたちまだ、なんにもしてないし…」
「あら? そんな意味で言ったんじゃないんだけど。さつきって意外とエッチね~」
「もうっ。みっこの方こそ、あのあと上村君とどうなったのよ?」
「さつきとおんなじよ。みんなでファミレス行って、しばらくしゃべって、そこで解散」
「電話番号とか聞かれてないの?」
「彼の番号はもらったけど、しばらくはペンディングかなぁ?」
「ペンディング?」
「そのうち、あたしの方から連絡するって言ってるの」
「みっこは上村君のこと、どう思ってるの?」
「ん~… とてもいい子なんだけどね…」
「だけど?」
「ちょっと物足りないかな。やっぱりふたつも年下で、高2ってのは。子供すぎて」
「みっこって、うんと年上で、リードしてくれるような恋愛がいいの?」
「ん… 自分がわがままだからかな。振り回されるような恋にあこがれる、かも」
ジリリリリリリ…
「では今日の講義はこれで終わり。来週は180ページからだからね」
みっこと話し込んでいるうちに、終業のベルが鳴り、西田教授がパタンと分厚い本を閉じて、告げた。そういえば今は講義中だっけ。このわたしが西田教授の講義もうわの空で、おしゃべりに夢中になるなんて、滅多にないことだわ。
めがねを直しながら本を小脇に抱え、教授は講義室を出ようとしたが、ふと立ち止まって、わたしの方を振り返った。
「弥生君。今日の昼休みは時間とれるかね?」
「あ… はい。大丈夫です」
とっさにそう返事をして、思わず頬が火照る。
「じゃあ、昼食の後にでも、私の研究室に来てくれないか? 南棟の302号室だからね」
そう言って、教授は講義室をあとにした。
「なになに? さつきったら川島君とつきあいはじめたばかりのくせに、もう西田教授と二股?」
クリアケースに教科書をしまいながら、みっこはわたしをからかう。
「そんなんじゃないって、実は…」
学校の南にあるカフェテリアにいっしょに向かいながら、わたしは事情を説明した。
実はわたし、西田教授から前期の課題として出されていた小説の創作課題で、とてもいい点をつけてもらったんだ。
周りの女子大生の日常を描いた近況小説だったけど、教授はたいそう興味を示してくれて、
『わたしの研究の一環として、いつかゆっくり話しを聞かせてくれないか?』
とおっしゃっていた。
わたしもみっこも次の講義は午後からで、ちょっと空いた時間はたいてい、南のカフェテリアで過ごしている。
テラスがサンルームになったこのカフェテリアは、窓から光がたっぷりと差し込んできて、雰囲気も明るくて気持ちがいい。
すごく美味しいってわけじゃないけど、スイーツメニューがけっこう充実していて、なにより安くて、わたしみたいな貧乏学生には嬉しい。
「やっほー。みこちゃんさつきちゃん。やっぱりここにいたんだぁ」
「おふたりいつもツーショットなのね」
そう言いながら、ナオミとミキちゃんがカフェテリアに入ってきた。
「ねえねえ、みこちゃん。あのあと上村君とはどうしたの?」
フルーツパフェを手にしたナオミは、みっこのとなりに腰をおろすよりも早く、訊いてきた。みっこは怪訝そうな顔でナオミを見る。
「あら? ファミレスの前で、みんな別れたじゃない?」
「え~? みこちゃん、ほんとにそのまま帰っちゃったの?」
「そうだけど… ナオミたちはあれから、どこかに行ったの?」
「えへ」
ナオミはちょっと頬を赤らめて肩をすくめると、軽く舌を出す。
「カツくんと、やっちゃった」
つづく
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