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09 Moulin Rouge
Moulin Rouge 4
「男って、自分に従ってくれる素直なタイプの女の子が好きなんだよ。一般的に。
精神的にも肩書き的にも、男の方が優位に立っていないと、コンプレックス持ってしまうって言うか…
だから、対等な立場で接してくる女性って、『尊敬できても恋人には考えられない』って意見が、けっこうあると思うよ」
「ふ~ん。そんなものなの?」
「そんなものだよ。少年マンガを見るとよくわかるよ。
ヒロインで多いタイプが、優しくって可愛いくてだれからも好かれるけど、他の言い寄ってくる男には見向きもせず、自分だけを無条件で好きでいてくれて、どんな時でも男を立ててくれる処女、だから。
そういうのが好きなんだよ。フツーの男って」
「なんか、すごい都合がいいキャラね。まあ、みっこの場合、『生意気でわがままな小娘』だし、確かに、少年マンガのヒロインタイプじゃないかも」
「そうだな。男受けは悪そうだな」
ふうん。なんだか意外。
みっこみたいに綺麗でスタイルがよくって、性格も律儀で機転がきく頭のいい女の子は、どんな男の人にも好かれるって思っていた。
男の視線と女の視線って、やっぱり違うものなのね。
「あ~っ。おなかすいちゃった!」
しばらく踊って、芳賀さんとみっこがフロアから戻ってきた。
みっこは、ソファに腰を降ろすなりそう言って、テーブルの上のフライドポテトをつまむ。
「さすがMoulin Rouge。噂には聞いてたけど、広くて踊りやすいし、照明もサウンドも抜群でごきげんだぜ。なあみっこ」
「お客さんもわりと年齢層高めで、上品な感じなのもいいわね」
「福岡《ここ》じゃ高級店だもんな。俺でさえ来たのははじめてだけど、みっこはよく来るのか? この店」
「ふぅん。いつ来たんだ?」
「一年前」
「だれと?」
「そんなの、どうだっていいじゃない」
「まぁ、な」
「…」
「…」
芳賀さんとみっこの会話の雲行きが怪しくなってきたところで、話題を変えるように、わたしは口を挟んだ。
「にしても、みっこのダンス、すっごいよかったよ! あの上で踊ってるとこも、見てみたいかも」
そう言って、大胆な格好をした女の人がお立ち台の上で踊っていて、まわりに人垣ができていちだんと熱気が高まっている場所を、わたしは指さした。おどけるようにみっこは両手を広げ、肩をすくめる。
「あそこは女の戦いなのよ。あたし、そんなのに加わるつもりなんてないわ」
「あれ? 世界中の女に勝つんじゃなかったの? みっこは」
「あはは。さつきってツッコミ鋭いわね。
あ! 新しいお皿が出るわ。さつき、取りに行こ! これだけは、世界中の女に負けられないわよ!」
そう言ってみっこは立ち上がり、フードコーナーへとわたしを引っ張っていった。
あれだけ激しく踊ると、気分も上がるだろうけど、おなかもすくんだろうな。
みっこはスナックをつまんだり、カクテルをオーダーしたりと、はじめてディスコに来たかのようにはしゃいでいる。
「あたし、もう3杯目よ」
カウンター越しにバーテンからカクテルを受け取ったみっこは、グラスを頬に当て、とろんとした瞳でわたしを見つめ、微笑んだ。
「ええっ。それってちょっと、ペース早すぎるんじゃない?」
「平気」
「みっこ、瞳がラリってるわよ」
「ふふ。だって気持ちいいんだもん。今夜は最っ高~!」
そう言ってみっこはふわふわと歩いていたが、なにを思いついたのか、ふとわたしを見て謎っぽく微笑んだ。
「ねえ、さつき。川島君とはどこまで進んだの?」
「どこまでって… いきなりなんなのよ」
「もう、キスくらいしたの?」
「ええ~っ。まだそんなんじゃないわよぉ~」
突然の問いに、耳たぶまで真っ赤にして否定する。みっこはいたずらっぽく微笑んだ。
「『まだ』ってことは、『そのうち』ってことね」
「もうっ。みっこの方こそ、ツッコミ厳しいわよ」
「さつきに聞いたってダメみたいだから、直接川島君に聞いてみよ~っと」
ふざけながらみっこはそう言って、カクテルグラスを掲げながら先に行ってしまう。遅れてボックスに戻ってみると、みっこはしっかり川島君のとなりのシートに陣取っていた。
つづく
精神的にも肩書き的にも、男の方が優位に立っていないと、コンプレックス持ってしまうって言うか…
だから、対等な立場で接してくる女性って、『尊敬できても恋人には考えられない』って意見が、けっこうあると思うよ」
「ふ~ん。そんなものなの?」
「そんなものだよ。少年マンガを見るとよくわかるよ。
ヒロインで多いタイプが、優しくって可愛いくてだれからも好かれるけど、他の言い寄ってくる男には見向きもせず、自分だけを無条件で好きでいてくれて、どんな時でも男を立ててくれる処女、だから。
そういうのが好きなんだよ。フツーの男って」
「なんか、すごい都合がいいキャラね。まあ、みっこの場合、『生意気でわがままな小娘』だし、確かに、少年マンガのヒロインタイプじゃないかも」
「そうだな。男受けは悪そうだな」
ふうん。なんだか意外。
みっこみたいに綺麗でスタイルがよくって、性格も律儀で機転がきく頭のいい女の子は、どんな男の人にも好かれるって思っていた。
男の視線と女の視線って、やっぱり違うものなのね。
「あ~っ。おなかすいちゃった!」
しばらく踊って、芳賀さんとみっこがフロアから戻ってきた。
みっこは、ソファに腰を降ろすなりそう言って、テーブルの上のフライドポテトをつまむ。
「さすがMoulin Rouge。噂には聞いてたけど、広くて踊りやすいし、照明もサウンドも抜群でごきげんだぜ。なあみっこ」
「お客さんもわりと年齢層高めで、上品な感じなのもいいわね」
「福岡《ここ》じゃ高級店だもんな。俺でさえ来たのははじめてだけど、みっこはよく来るのか? この店」
「ふぅん。いつ来たんだ?」
「一年前」
「だれと?」
「そんなの、どうだっていいじゃない」
「まぁ、な」
「…」
「…」
芳賀さんとみっこの会話の雲行きが怪しくなってきたところで、話題を変えるように、わたしは口を挟んだ。
「にしても、みっこのダンス、すっごいよかったよ! あの上で踊ってるとこも、見てみたいかも」
そう言って、大胆な格好をした女の人がお立ち台の上で踊っていて、まわりに人垣ができていちだんと熱気が高まっている場所を、わたしは指さした。おどけるようにみっこは両手を広げ、肩をすくめる。
「あそこは女の戦いなのよ。あたし、そんなのに加わるつもりなんてないわ」
「あれ? 世界中の女に勝つんじゃなかったの? みっこは」
「あはは。さつきってツッコミ鋭いわね。
あ! 新しいお皿が出るわ。さつき、取りに行こ! これだけは、世界中の女に負けられないわよ!」
そう言ってみっこは立ち上がり、フードコーナーへとわたしを引っ張っていった。
あれだけ激しく踊ると、気分も上がるだろうけど、おなかもすくんだろうな。
みっこはスナックをつまんだり、カクテルをオーダーしたりと、はじめてディスコに来たかのようにはしゃいでいる。
「あたし、もう3杯目よ」
カウンター越しにバーテンからカクテルを受け取ったみっこは、グラスを頬に当て、とろんとした瞳でわたしを見つめ、微笑んだ。
「ええっ。それってちょっと、ペース早すぎるんじゃない?」
「平気」
「みっこ、瞳がラリってるわよ」
「ふふ。だって気持ちいいんだもん。今夜は最っ高~!」
そう言ってみっこはふわふわと歩いていたが、なにを思いついたのか、ふとわたしを見て謎っぽく微笑んだ。
「ねえ、さつき。川島君とはどこまで進んだの?」
「どこまでって… いきなりなんなのよ」
「もう、キスくらいしたの?」
「ええ~っ。まだそんなんじゃないわよぉ~」
突然の問いに、耳たぶまで真っ赤にして否定する。みっこはいたずらっぽく微笑んだ。
「『まだ』ってことは、『そのうち』ってことね」
「もうっ。みっこの方こそ、ツッコミ厳しいわよ」
「さつきに聞いたってダメみたいだから、直接川島君に聞いてみよ~っと」
ふざけながらみっこはそう言って、カクテルグラスを掲げながら先に行ってしまう。遅れてボックスに戻ってみると、みっこはしっかり川島君のとなりのシートに陣取っていた。
つづく
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