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09 Moulin Rouge
Moulin Rouge 6
「ん…」
わたしたちの問いに答える気配もなく、みっこは芳賀さんをちらりと見る。みっこの代わりに、芳賀さんが冗談めかして言った。
「まぁな。『沈黙は愛』ってところだろ」
なにそれ? よくわかんない。
そのとき、フロアに新しい曲が流れ出し、歓声が上がった。
あっ!
カオマの『ランバダ』だわ。
『セクシーなラテンダンス』として、テレビでよく扇情的に紹介されているから、洋楽にはあまり詳しくないわたしでも知っている。
「この曲好き! 芳賀君、踊ってあげる。行きましょ!」
みっこはそう言って芳賀さんの手を取ると、さっと席を立った。
「さつきも踊らない?」
「あ… わ、わたしはまだいい。ここで見てるから」
「じゃ、見ててね。すごいの踊ってあげる」
そう言いながら軽くウィンクして微笑むと、みっこは芳賀さんと腕組みしてフロアへ出た。
またしても、はぐらかされてしまった。
自分のこととなると、みっこはいきなりガードが固くなるんだから。ずるい。
フロアの空いてる所までいくと、森田美湖と芳賀修二はそこで向かい合い、互いに手を差し伸べる。
イントロから歌がはじまった瞬間、芳賀さんはみっこの腕をグイと引っ張った。
綺麗なターンを決めながら、みっこは芳賀さんの腕の中にすっぽり納まる。
そのままからだを預け、髪を乱して唇をゆるめ、求めるような視線で、彼に顔を寄せる。
官能的なラテンのリズムに合わせて、みっこは大胆にも、芳賀さんの股に脚を深く入れて下半身を密着させ、激しく腰をグラインドさせながら、ときにはからだを大きくのけぞらせ、脚を高く持ち上げる。芳賀さんの肩から胸、腰へとゆっくり、しっとりと指を這わせていく。そのしぐさがすごく色っぽい。なんて挑発的でエロティック!
ラテンのダンスって、情熱的で淫らで、『恋人の踊り』なんて言われてるものもあるけど、まさにみっこはそんな感じ。
短いスカートの裾からショーツが見えるのもおかまいなしに、愛の情欲を全身で表すかのように、激しくなまめかしく身をよじって、みっこはねっとりとしたランバダのリズムに抱かれていた。
「そこのペア、すごいね。悩ましいよ!」
思わずD.Jの軽口が飛ぶ。
回りで踊っている人たちも、みっこと芳賀さんのダンスの迫力に、圧倒されたみたい。
いつの間にかふたりを囲むように人の輪ができ、手拍子をとったり口笛を吹いたりしていた。
それを受けて、ふたりのダンスはますます過激に淫美に、エスカレートしていく。
すごい!
美男美女のペアは、やっぱりサマになるわ。
「さつきちゃん」
みっこのダンスに見とれていたわたしのとなりに席を移して、川島君はささやいてきた。
「森田さんと芳賀さんって、本当につきあってるのかい?」
「え? どういうこと?」
「森田さんの彼を見る目が冷たいんだ。好きな人に向ける視線じゃないよ」
「芳賀さんはみっこの恋人じゃないってこと?」
「たぶんね」
「でも…」
わたしはみっこと芳賀さんのことを、最初から振り返ってみた。
ダブルデートを提案してきたときは、『彼氏なんてできたの?』ってわたしの問いにみっこは答えず、今日も『芳賀修二君よ』と、紹介しただけ。
そうか。
みっこは彼のことを『恋人』だなんて、ひとことも言ってない。
わたしが勝手に思い込んでいただけ。
嘘をついてるわけじゃないけど、本当のことも言ってない。それって、彼女がよくやる手。
だけどみっこは、あんなに親しげに芳賀さんと踊っている。
こんなにからだを密着させて踊るなんて、ただの友だちじゃ考えられない。
いったいふたりは、どういう関係なんだろ?
つづく
わたしたちの問いに答える気配もなく、みっこは芳賀さんをちらりと見る。みっこの代わりに、芳賀さんが冗談めかして言った。
「まぁな。『沈黙は愛』ってところだろ」
なにそれ? よくわかんない。
そのとき、フロアに新しい曲が流れ出し、歓声が上がった。
あっ!
カオマの『ランバダ』だわ。
『セクシーなラテンダンス』として、テレビでよく扇情的に紹介されているから、洋楽にはあまり詳しくないわたしでも知っている。
「この曲好き! 芳賀君、踊ってあげる。行きましょ!」
みっこはそう言って芳賀さんの手を取ると、さっと席を立った。
「さつきも踊らない?」
「あ… わ、わたしはまだいい。ここで見てるから」
「じゃ、見ててね。すごいの踊ってあげる」
そう言いながら軽くウィンクして微笑むと、みっこは芳賀さんと腕組みしてフロアへ出た。
またしても、はぐらかされてしまった。
自分のこととなると、みっこはいきなりガードが固くなるんだから。ずるい。
フロアの空いてる所までいくと、森田美湖と芳賀修二はそこで向かい合い、互いに手を差し伸べる。
イントロから歌がはじまった瞬間、芳賀さんはみっこの腕をグイと引っ張った。
綺麗なターンを決めながら、みっこは芳賀さんの腕の中にすっぽり納まる。
そのままからだを預け、髪を乱して唇をゆるめ、求めるような視線で、彼に顔を寄せる。
官能的なラテンのリズムに合わせて、みっこは大胆にも、芳賀さんの股に脚を深く入れて下半身を密着させ、激しく腰をグラインドさせながら、ときにはからだを大きくのけぞらせ、脚を高く持ち上げる。芳賀さんの肩から胸、腰へとゆっくり、しっとりと指を這わせていく。そのしぐさがすごく色っぽい。なんて挑発的でエロティック!
ラテンのダンスって、情熱的で淫らで、『恋人の踊り』なんて言われてるものもあるけど、まさにみっこはそんな感じ。
短いスカートの裾からショーツが見えるのもおかまいなしに、愛の情欲を全身で表すかのように、激しくなまめかしく身をよじって、みっこはねっとりとしたランバダのリズムに抱かれていた。
「そこのペア、すごいね。悩ましいよ!」
思わずD.Jの軽口が飛ぶ。
回りで踊っている人たちも、みっこと芳賀さんのダンスの迫力に、圧倒されたみたい。
いつの間にかふたりを囲むように人の輪ができ、手拍子をとったり口笛を吹いたりしていた。
それを受けて、ふたりのダンスはますます過激に淫美に、エスカレートしていく。
すごい!
美男美女のペアは、やっぱりサマになるわ。
「さつきちゃん」
みっこのダンスに見とれていたわたしのとなりに席を移して、川島君はささやいてきた。
「森田さんと芳賀さんって、本当につきあってるのかい?」
「え? どういうこと?」
「森田さんの彼を見る目が冷たいんだ。好きな人に向ける視線じゃないよ」
「芳賀さんはみっこの恋人じゃないってこと?」
「たぶんね」
「でも…」
わたしはみっこと芳賀さんのことを、最初から振り返ってみた。
ダブルデートを提案してきたときは、『彼氏なんてできたの?』ってわたしの問いにみっこは答えず、今日も『芳賀修二君よ』と、紹介しただけ。
そうか。
みっこは彼のことを『恋人』だなんて、ひとことも言ってない。
わたしが勝手に思い込んでいただけ。
嘘をついてるわけじゃないけど、本当のことも言ってない。それって、彼女がよくやる手。
だけどみっこは、あんなに親しげに芳賀さんと踊っている。
こんなにからだを密着させて踊るなんて、ただの友だちじゃ考えられない。
いったいふたりは、どういう関係なんだろ?
つづく
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