Campus91

茉莉 佳

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10 Invitation

Invitation 9

「でも、そのあともしたんでしょ?」
「ん~。ダメなのよね~。
あの人に会って、キスされて、抱きしめられると、『もう、どうなってもいい』って気持ちになっちゃって。
そうするといつの間にか、ブラウスもスカートも脱がされてて、キスしながらボタンでもファスナーでも、簡単にはずされてしまうのよ」
「へぇ~。器用なのね」
「ううん。器用っていうより、エッチに慣れてるのよ。きっと。
「悔しいからあたし、ボタンが40個くらいついたワンピースとか、下着も脱がされないように、ギュウギュウに締めつけられたコルセットとか、デートのときに着ていったことがあったわ」
「わぁ。すごいガード固くしたのね」
「それがね。逆に興奮されておもしろがられて、愛撫しながらひとつひとつ、丁寧にはずしていくの。
そんな風にされると、こっちまで、なんだかじらされてるような、たまらない気持ちになっちゃって… そのときはじめて、快感っていうか… イった感じがしちゃったの」
「つっ… 爪、立てたの?」
話に思わず引きずり込まれ、昨日藍沢氏が言っていたことを思い出して訊く。みっこは呆れたように答えた。
「立てた立てた!
『みっこちゃんと別れるまでは、ぼくの背中はだれにも見せられないね』なんて、あの人しゃあしゃあと言うんだもん。だからあたしもムキになって、血が滲むくらいガシガシ引っかいてやったわ」
「わぁ~。痛そう。みっこってやっぱり過激なのね」
「ふふ。でも… 幸せだったな。
あの人とひとつになれた充実感… っていうのかな?
あの人のものがあたしの中でいっぱいに広がると、足りなかった部分が満たされていくような気がして、痺れるような快感に浸れるの。あたしのいちばん奥の秘密のお部屋を、“コツコツ”って、ノックされて、ドアをめくられて。
そのうち大きな波が訪れて、きゅーんって意識が遠のいちゃって、頭の中にいろんな幻覚がグルグルまわるの。
それが嬉しくて気持ちよくて、あたし一度も彼を拒まなかったし、あたしの方から求めることだってあった。
今思えば、あたしと直樹さんとの恋愛の中で、あの頃が怖いものなしの、いちばん無邪気な幸せに浸ることができた時期だった」
みっこはそう言うと、じっと『ウエッジウッド』に注がれたアールグレイの水面みなもを見つめた。ゆらゆらと波紋を残して、みっこのシルエットが曖昧あいまいに揺れる。
きっと彼女は今、その頃の『無邪気な幸せ』だった日々を、ビデオでも見るように懐かしく憶い出しているのかもしれない。

そうして、そんな、なにも悩みのない恋愛は、もうできないことを。
なにかに訣別しているような…
そんな気がして、わたしは黙ってみっこを見つめた。

「『恋をしたことのない者は人生の半分、それも美しい方の半分を知らない』って、ことわざがあるでしょ」
『ウエッジウッド』を両手で包み込むようにして、みっこは言った。
「あたし、この言葉が大好き。今振り返れば、いろいろ恥ずかしいことやみっともないことをしたり、言ったりしたけど、いつでも心がドキドキしてて、どれもみんな素敵なできごとばかりだった。
そんな恋に巡り会えて、直樹さんと結ばれて、あたし、本当に幸せだったと思ってる」
「そうよね。その言葉、共感できるな。わたしも、『恋』っていう稀な感情が、今、自分の中にあることを嬉しく思うし、感謝もしているもん」
みっこの言葉がいちいち自分の気持ちと重なって、わたしは同調するように言った。
川島君との恋を、わたしは一生手放したくないと思っているし、みっこもかつて、そう思っていたに違いない。
なのにどうして、ふたりは別れることになったの?

つづく
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