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11 Audition
Audition 4
「熱心に教えるのね?」
ひたすらスタジオの中を往復するナオミを、腕を組んで真剣に見つめているみっこに、わたしは話しかけた。
「ナオミって教え甲斐あるから、楽しくって」
へえ。そうなの? みっこはナオミのこと、羨んでいたのにね」
「そりゃ、とっても羨ましいし、妬ましいわよ。あの身長にプロポーションは、あたしがどんなに努力しても絶対に手に入れられない、天性のものだもん」
「は、はっきり言うのね」
「ふふ。だから諦めもつくのよ。あたしはあたしのいいところを伸ばすしかないし。
それにナオミは、あれでいて頑張り屋さんだもん。こっちも応援したくなっちゃうじゃない」
「確かに、ミーハーなようでいて、ナオミってけっこうガッツあるわよね」
「人を教えるって、自分のトレーニングにもなるしね。
こうやって繰り返し繰り返しレッスンしていって、ナオミの余計な贅肉をどんどん削り落としてやって、洗練させてやるのって、新鮮でおもしろいわ。それこそ、『ヴォーグ』の表紙が飾れるようなモデルにナオミを育てるのが、あたしの今の夢かなぁ。
『教えるって教えられること』なんてよく言われるけど、そのとおりね」
「こうしてるとなんとなく、わかる気もする」
「なにが?」
「ママの気持ち」
「みっこも、モデルのお母さんからレッスン受けてたのよね」
「小さい頃は毎日習ってたわよ。というより、日常のすべてがお稽古だったかなぁ。
歩くときも食事のときも、リビングでくつろいでるときでさえ、立ち居振る舞いをチェックされていて、ママの前じゃ気が抜けなかった。
間食にもうるさくて、ケーキとか滅多に食べさせてもらえなかったし、日焼けは厳禁だから、外で遊ぶのさえ制限されてたわ」
「へぇ~。そんなに厳しかったの?」
「そう。プロポーションチェックとかもしょっちゅうで、少しでも体型が緩んできたら、トレーニング量がいきなり増えて、ダイエットさせられるし。
それとは別に、ダンスとピアノのお稽古にも通ってたでしょ。ほんと、遊ぶ時間なんてなかったわね~」
「みっこはそれで、お母さんに反抗してたんだ」
「そうね。確かに嫌いだったわ。ママのこと。
でもね。こうやってナオミにお稽古つけてて、少しわかったの。
ママはママで、あたしのこと考えてくれて、一生懸命育ててくれたんだろうな、って。
たくさんの大切なものを、あたしに教えたかったんだろうなって」
みっこはそう言いながら、なにかを懐かしむように、微かに笑みを漏らした。
そうか。
森田美湖と彼女のお母さんとの確執は、みっこがこうやってだれかを育てることで、少しづつ解けていくのかもしれない。
まるで、子育てが親をも育てるように…
「今度、となりのプールに行きましょうね」
ひととおりレッスンが終わったあと、ハァハァと息をはずませているナオミにタオルを手渡しながら、みっこは言った。
3時間ほどのレッスンで、冬だというのに、ナオミのおでこには玉のような汗がびっしり浮かんでいて、レオタードも汗まみれになっていた。
「泳ぐのぉ?」
「ダイエットには水泳がいちばんよ。
あたしも最近太り気味だから絞らないといけないし、みんなでいっしょに泳ご」
「え~、冗談。みっこがそれで太ってるって言うのなら、わたしたちはなんなのよ?」
わたしがそう言うと、みっこは屈託なく笑う。
「今日のレッスンはおしまい。あたしの部屋でみんなでお茶しない?
『ブルーフォンセ』のクッキーを買ってあるの」
「え~。みこちゃんの『太らせて蹴落とす作戦』第2弾~? くやしいけど、食べたぁい!」
ナオミはそう言いながら、汗まみれのレオタードを脱ぐ。
プルルンと、巨大な胸が惜しげもなく解放される。
ガラス張りで外からも丸見えのスタジオだっていうのに、ナオミって大胆すぎ。
つづく
ひたすらスタジオの中を往復するナオミを、腕を組んで真剣に見つめているみっこに、わたしは話しかけた。
「ナオミって教え甲斐あるから、楽しくって」
へえ。そうなの? みっこはナオミのこと、羨んでいたのにね」
「そりゃ、とっても羨ましいし、妬ましいわよ。あの身長にプロポーションは、あたしがどんなに努力しても絶対に手に入れられない、天性のものだもん」
「は、はっきり言うのね」
「ふふ。だから諦めもつくのよ。あたしはあたしのいいところを伸ばすしかないし。
それにナオミは、あれでいて頑張り屋さんだもん。こっちも応援したくなっちゃうじゃない」
「確かに、ミーハーなようでいて、ナオミってけっこうガッツあるわよね」
「人を教えるって、自分のトレーニングにもなるしね。
こうやって繰り返し繰り返しレッスンしていって、ナオミの余計な贅肉をどんどん削り落としてやって、洗練させてやるのって、新鮮でおもしろいわ。それこそ、『ヴォーグ』の表紙が飾れるようなモデルにナオミを育てるのが、あたしの今の夢かなぁ。
『教えるって教えられること』なんてよく言われるけど、そのとおりね」
「こうしてるとなんとなく、わかる気もする」
「なにが?」
「ママの気持ち」
「みっこも、モデルのお母さんからレッスン受けてたのよね」
「小さい頃は毎日習ってたわよ。というより、日常のすべてがお稽古だったかなぁ。
歩くときも食事のときも、リビングでくつろいでるときでさえ、立ち居振る舞いをチェックされていて、ママの前じゃ気が抜けなかった。
間食にもうるさくて、ケーキとか滅多に食べさせてもらえなかったし、日焼けは厳禁だから、外で遊ぶのさえ制限されてたわ」
「へぇ~。そんなに厳しかったの?」
「そう。プロポーションチェックとかもしょっちゅうで、少しでも体型が緩んできたら、トレーニング量がいきなり増えて、ダイエットさせられるし。
それとは別に、ダンスとピアノのお稽古にも通ってたでしょ。ほんと、遊ぶ時間なんてなかったわね~」
「みっこはそれで、お母さんに反抗してたんだ」
「そうね。確かに嫌いだったわ。ママのこと。
でもね。こうやってナオミにお稽古つけてて、少しわかったの。
ママはママで、あたしのこと考えてくれて、一生懸命育ててくれたんだろうな、って。
たくさんの大切なものを、あたしに教えたかったんだろうなって」
みっこはそう言いながら、なにかを懐かしむように、微かに笑みを漏らした。
そうか。
森田美湖と彼女のお母さんとの確執は、みっこがこうやってだれかを育てることで、少しづつ解けていくのかもしれない。
まるで、子育てが親をも育てるように…
「今度、となりのプールに行きましょうね」
ひととおりレッスンが終わったあと、ハァハァと息をはずませているナオミにタオルを手渡しながら、みっこは言った。
3時間ほどのレッスンで、冬だというのに、ナオミのおでこには玉のような汗がびっしり浮かんでいて、レオタードも汗まみれになっていた。
「泳ぐのぉ?」
「ダイエットには水泳がいちばんよ。
あたしも最近太り気味だから絞らないといけないし、みんなでいっしょに泳ご」
「え~、冗談。みっこがそれで太ってるって言うのなら、わたしたちはなんなのよ?」
わたしがそう言うと、みっこは屈託なく笑う。
「今日のレッスンはおしまい。あたしの部屋でみんなでお茶しない?
『ブルーフォンセ』のクッキーを買ってあるの」
「え~。みこちゃんの『太らせて蹴落とす作戦』第2弾~? くやしいけど、食べたぁい!」
ナオミはそう言いながら、汗まみれのレオタードを脱ぐ。
プルルンと、巨大な胸が惜しげもなく解放される。
ガラス張りで外からも丸見えのスタジオだっていうのに、ナオミって大胆すぎ。
つづく
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