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11 Audition
Audition 5
あれからみっこの部屋には何度か来たけど、他の友達を交えて楽しいひとときを過ごすのは、はじめて。
みっこの生活ぶりがとても気に入ったようで、ナオミは何度も、『いいなぁ』を連発していた。
「いいなぁみこちゃんは。こんなリッチなマンションで暮らしてるなんて。
1階にはプールもスタジオもあるし、なんか、トレンディドラマのヒロインみたい」
「ふふ。パパに買ってもらったのよ」
そう言ってみっこは、意味ありげにウィンクする。
「え~っ。みこちゃんやるぅ! 『パパ』がいるんだ!
やっぱり一流モデルになると、マンション買ってくれるようなリッチなパパくらい、できるもんなのねぇ~」
「なに勘違いしてるの。本物のパパよ」
「なんだぁ。紛らわしい言い方、しないでよぉ」
そう言いながらナオミは、興味津々といった様子で、みっこの家の中を見て回る。
その間にみっこは、湯気を立ててピーピーと鳴りだしたケトルを、ガスレンジからおろし、紅茶の葉の入ったメリオールにお湯を注いだ。
「でもモデルって、もっとふだんからいい服着て、いろんなパーティとかディナーに招待されて、おもしろおかしく、派手に暮らしてるかと思ってたけど… みこちゃんって、すごく地味ね」
バターの風味が上品に香るクッキーをパクパクつまみながら、ナオミは言った。
「まあね。そりゃカリスマモデルやスーパーモデルなら、パーティとかのお呼ばれで忙しいでしょうけど、それでもふだんの生活はこんなものじゃない?」
「そうかなぁ? ガッコにだってふつうの綿シャツとかジーンズで来てるでしょ? DCブランドとかボディコンで来れば、もっと目立つのにぃ」
「そんなのは通学用じゃないでしょ」
「でもみこちゃんは、ディスコやカフェバーとか、行ったりするんでしょお?」
「たまには行くけど、最近はご無沙汰してるわね~」
「夜遊びなんかしないの?」
「それもご無沙汰してるわね。だいたい11時までには眠るようにしてるから、夜遊びなんかする暇ないし」
「お酒は飲まないの?」
「まあ、適度なお酒はからだにいいけど、夜酒は睡眠の質が落ちるから、飲まないわね」
「え~? じゃあ、男は?」
「まあ、適度なエッチは美容にいいけど、それもずっとご無沙汰してるわね… って、なに言わせるのよ、ナオミは!」
「あははは。みこちゃん、おもしろい~!」
そう言ってケラケラと笑いながら、ナオミは紅茶のおかわりをねだる。メリオールの葉を新しいものに換えるため、みっこはキッチンに立った
「なんだか、みこちゃん。変わったね~」
キッチンに立つみっこを見ながら、ナオミは小声でわたしにささやいた。
「え? どこが?」
「みこちゃんってさ~、前はなんか怖いとこあったんだけどぉ、最近は話しやすくなったよね」
「ナオミもそう感じるの?」
「うん。文化祭のあとにさぁ、由貴ちゃんがみこちゃんに、『絵のモデルしてほしい』って、言ってきたことがあったじゃない」
「うん」
「あのときみこちゃん、最初は『ブスッ』って黙ってて、すっごい怖い顔してた。だからあたしもミキちゃんも、みこちゃんに話しかけられなくて、なんか気まずかったわ」
「そんなこと、あったわね~」
そうかぁ。
あの時ナオミとミキちゃんは、由貴ちゃんの作品のクリアファイルをずっと見てて、みっこの沈黙には気づいてないかと思っていたけど、実はふたりとも、こっそり気を揉んでいたんだ。
ナオミは安堵したように言う。
「あたしね。今のみこちゃん、好きだな~」
つづく
みっこの生活ぶりがとても気に入ったようで、ナオミは何度も、『いいなぁ』を連発していた。
「いいなぁみこちゃんは。こんなリッチなマンションで暮らしてるなんて。
1階にはプールもスタジオもあるし、なんか、トレンディドラマのヒロインみたい」
「ふふ。パパに買ってもらったのよ」
そう言ってみっこは、意味ありげにウィンクする。
「え~っ。みこちゃんやるぅ! 『パパ』がいるんだ!
やっぱり一流モデルになると、マンション買ってくれるようなリッチなパパくらい、できるもんなのねぇ~」
「なに勘違いしてるの。本物のパパよ」
「なんだぁ。紛らわしい言い方、しないでよぉ」
そう言いながらナオミは、興味津々といった様子で、みっこの家の中を見て回る。
その間にみっこは、湯気を立ててピーピーと鳴りだしたケトルを、ガスレンジからおろし、紅茶の葉の入ったメリオールにお湯を注いだ。
「でもモデルって、もっとふだんからいい服着て、いろんなパーティとかディナーに招待されて、おもしろおかしく、派手に暮らしてるかと思ってたけど… みこちゃんって、すごく地味ね」
バターの風味が上品に香るクッキーをパクパクつまみながら、ナオミは言った。
「まあね。そりゃカリスマモデルやスーパーモデルなら、パーティとかのお呼ばれで忙しいでしょうけど、それでもふだんの生活はこんなものじゃない?」
「そうかなぁ? ガッコにだってふつうの綿シャツとかジーンズで来てるでしょ? DCブランドとかボディコンで来れば、もっと目立つのにぃ」
「そんなのは通学用じゃないでしょ」
「でもみこちゃんは、ディスコやカフェバーとか、行ったりするんでしょお?」
「たまには行くけど、最近はご無沙汰してるわね~」
「夜遊びなんかしないの?」
「それもご無沙汰してるわね。だいたい11時までには眠るようにしてるから、夜遊びなんかする暇ないし」
「お酒は飲まないの?」
「まあ、適度なお酒はからだにいいけど、夜酒は睡眠の質が落ちるから、飲まないわね」
「え~? じゃあ、男は?」
「まあ、適度なエッチは美容にいいけど、それもずっとご無沙汰してるわね… って、なに言わせるのよ、ナオミは!」
「あははは。みこちゃん、おもしろい~!」
そう言ってケラケラと笑いながら、ナオミは紅茶のおかわりをねだる。メリオールの葉を新しいものに換えるため、みっこはキッチンに立った
「なんだか、みこちゃん。変わったね~」
キッチンに立つみっこを見ながら、ナオミは小声でわたしにささやいた。
「え? どこが?」
「みこちゃんってさ~、前はなんか怖いとこあったんだけどぉ、最近は話しやすくなったよね」
「ナオミもそう感じるの?」
「うん。文化祭のあとにさぁ、由貴ちゃんがみこちゃんに、『絵のモデルしてほしい』って、言ってきたことがあったじゃない」
「うん」
「あのときみこちゃん、最初は『ブスッ』って黙ってて、すっごい怖い顔してた。だからあたしもミキちゃんも、みこちゃんに話しかけられなくて、なんか気まずかったわ」
「そんなこと、あったわね~」
そうかぁ。
あの時ナオミとミキちゃんは、由貴ちゃんの作品のクリアファイルをずっと見てて、みっこの沈黙には気づいてないかと思っていたけど、実はふたりとも、こっそり気を揉んでいたんだ。
ナオミは安堵したように言う。
「あたしね。今のみこちゃん、好きだな~」
つづく
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