Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
128 / 300
12 CANARY ENSIS

CANARY ENSIS 3

「あははは… ふたりとも、そんなに固くならなくていいよ。ぼくは小さい頃からのみっこちゃんを知っているけど、彼女は学校でもモデルクラブでも、あまり友だちがいなかったんだ。だから、彼女の友だちなら大歓迎だよ。まあ、今回のロケは遊びにきたつもりで、楽しんでいってよ」
「もうっ。ダメじゃない文哉さん。甘やかしちゃ。ふたりともバイトに来てるんだから、思いっきりこき使ってやってよ」
お父さんが娘を思いやるような藤村さんの言い方に、みっこは照れくささを誤摩化しながら言う。
「なに言ってんだい。みっこちゃんの友だちだから、甘いんじゃないか」
「文哉さんったら… 『ちゃん』づけはもうやめて」
みっこの頭をくしゃくしゃと撫でる藤村さんを、彼女は上目づかいにはにかむように見上げる。
こんな、甘えるようなむっこの表情って、見たことがない。
このふたりは本当に仲がいいんだな。
さっきは『お父さんと娘』みたいな印象を受けたけど、見方によってはまるで、『お兄さんと、うんと年の離れた妹』のようにも感じる。
「まだまだ未熟ですけど、精いっぱい頑張りますので、よろしくお願いします」
川島君は張り切って答える。
わたしも釣られて、『よろしくお願いします。なんでもしますので』と、ペコペコと頭を下げた。
「ははは。その様子じゃ、ずいぶんみっこちゃんに脅されたみたいだね。
まあ、確かに一応『スタッフ』なんだし、ちゃんと働いてもらうよ。弥生さん… 「さつきちゃん」でいいかな?」
「え? あ、はい」
「さつきちゃんには、みっこちゃんのマネージャーが来るまで、彼女のスケジュール管理と、世話や雑用をやってもらうつもりだし、川島君は主に、撮影機材の設営や撤収の手伝いを頼むよ。その辺の指示は、星川先生から出るから」
「はい」「はい」
わたしと川島君の返事がダブる。藤村さんは仕事の話になると、急にハキハキとした業務口調に変わった。口調はソフトなままなんだけど、冷静で客観的な物言いに、人を引っ張っていく力を感じる。
「ふたりとも、撮影スケジュール表には、もう目を通しているかな?」
「はい! 把握しています」
「はい」
はきはきと川島君が答え、わたしも続いた。
「うん。その表にあるように、CF撮りは明後日からで、明日は先にスチルを撮るから」
「はい」
「川島君は写真の専門学校生という話だけど、技術的なことはともかく、君自身の機転で、積極的に行動してくれることを、期待しているよ」
「はい。頑張ります!」
「よし。他のスタッフを紹介しよう」
そう言って、藤村さんはスタッフひとりひとりを、わたしたちに紹介してくれた。

オールバックのひげのおじさんは、ディレクター・カメラマンの星川英司先生。この先生はしゃべり方がいかにも『業界人』って感じで、ちょっと女言葉がかっていておもしろい。
黒いTシャツで、地元の人みたいに真っ黒に日焼けした若い男の人は、チーフアシスタントの首藤さんで、そのうしろにはアシスタントの若い男性。
ソバージュのヘアをトップでくくった、ちっちゃくて綺麗な女の人は、メイクアップアーティストの仲澤さん。背が高くてスレンダーな長いワンレングスヘアの女性は、ヘアメイキャッパーのYUKOさん。それぞれわたしたちを、好意的に迎えてくれた。

つづく
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。