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12 CANARY ENSIS
CANARY ENSIS 16
「おなかすいたぁ~」
鏡台の前に座り、仲澤さんからメイクのベースを塗ってもらいながら、みっこは声を上げた。
「みっこ、朝ごはん食べてないの?」
「朝ごはんどころか、昨夜のご馳走にもあまり手をつけてないわよ」
「えっ? どうして?」
「だって今日はいきなり水着撮影でしょ。おなかぽっこりじゃ、仕事にならないもの。さつき、悪いけど、冷蔵庫の中にチョコレートとミルクがあるから、取ってちょうだい」
わたしは冷蔵庫から、チョコレートとミルクの入ったコップを取り出し、みっこに差し出した。
「ありがと。メイクができあがる前に、カロリーだけはとっとかないとね。美穂さん、ちょっと待って」
仲澤さんにそう言って手を止めさせると、みっこは大急ぎでチョコレートをかじり、ミルクを数口飲んだ。
仲澤さんはみっこの肌の調子を、念入りにチェックしている。
化粧品のCMだから、そこはかなり気を遣うんだろうなぁ。
『最近はパソコンで、肌のトラブルを簡単に修正できるようになってきた』と、昨夜、星野先生たちが話していたけど、最初から綺麗な肌の方がいいに決まっているだろうし。
「みっこちゃん、うまい具合にほんのりと焼けたわね」
「でしょ。水着の線とか気をつけていたし、ムラにもなってないでしょ。美穂さんが上手に日焼け止め塗ってくれたおかげよ」
「どういたしまして。だけど羨ましいわ~。みっこちゃんってお肌のトラブル、ほとんどないんだもの」
「ありがと。それってただ、グータラ大学生していただけだからかも。仕事が忙しくなってきたら、いやでも肌が荒れてくるわ」
「あは。またそんなことを」
仲澤さんはそう言って微笑む。昨日はあんなに緊張していた彼女だけど、一晩のうちにもうすっかりみっこと打ち解けて、リラックスしている。
「メイクだいたいできた? そろそろ髪をあたらせてちょうだい」
そう言いながら、ヘアメイキャッパーのYUKOさんが部屋にやってきた。
「みっこちゃんも今年でもう、20歳なのね~。道理であたしも老けるはずだわ」
「え~。YUKOさん、全然そんなことないわよ。むしろ若返った気がするわ」
「そう? やっぱり愛のチカラかしら?」
「そう言えば、前の彼氏さんとは、あれからどうなったの?」
「それっていつの前カレ? みっこちゃんがお休みしている間に、わたしも愛の遍歴、重ねたわよ」
「それでますます女に磨きがかかったのね。YUKOさんって、男の生気を吸って生きてるみたい」
「まあ。人を吸血鬼みたく言っちゃって。相変わらず口の悪い子ね~」
そう言いながらYUKOさんは機嫌よく、みっこの髪を巻いていく。
「みっこちゃん。お久し振り~」
しばらくすると今度は、長い巻き髪が綺麗な、背の高い女の人が、みっこに小さく手を振りながら、部屋のドアから顔をのぞかせた。
「お久し振りですー。瀬奈さん!」
みっこも応えるように、笑顔で手を振る。
「今日は張り切って服選んできたわよ。ほら、これなんか可愛いでしょ。機関誌用のリゾート着にと思って」
『瀬奈さん』と呼ばれた女性は、はしごレースとピンタックが綺麗に並んだ白いワンピースを、自分に当てて見せる。ああ。この人はスタイリストさんなのね。
「わぁ、『PINK HOUSE』ですか? 綺麗なラインですね。さすが瀬奈さんチョイス!」
髪を巻かれながら、瀬奈さんのかざしたドレスを見て、みっこは嬉しそうに微笑む。
撮影前だというのに、みっこの部屋はそんな緊張を感じさせない、なごやかな雰囲気だった。
つづく
鏡台の前に座り、仲澤さんからメイクのベースを塗ってもらいながら、みっこは声を上げた。
「みっこ、朝ごはん食べてないの?」
「朝ごはんどころか、昨夜のご馳走にもあまり手をつけてないわよ」
「えっ? どうして?」
「だって今日はいきなり水着撮影でしょ。おなかぽっこりじゃ、仕事にならないもの。さつき、悪いけど、冷蔵庫の中にチョコレートとミルクがあるから、取ってちょうだい」
わたしは冷蔵庫から、チョコレートとミルクの入ったコップを取り出し、みっこに差し出した。
「ありがと。メイクができあがる前に、カロリーだけはとっとかないとね。美穂さん、ちょっと待って」
仲澤さんにそう言って手を止めさせると、みっこは大急ぎでチョコレートをかじり、ミルクを数口飲んだ。
仲澤さんはみっこの肌の調子を、念入りにチェックしている。
化粧品のCMだから、そこはかなり気を遣うんだろうなぁ。
『最近はパソコンで、肌のトラブルを簡単に修正できるようになってきた』と、昨夜、星野先生たちが話していたけど、最初から綺麗な肌の方がいいに決まっているだろうし。
「みっこちゃん、うまい具合にほんのりと焼けたわね」
「でしょ。水着の線とか気をつけていたし、ムラにもなってないでしょ。美穂さんが上手に日焼け止め塗ってくれたおかげよ」
「どういたしまして。だけど羨ましいわ~。みっこちゃんってお肌のトラブル、ほとんどないんだもの」
「ありがと。それってただ、グータラ大学生していただけだからかも。仕事が忙しくなってきたら、いやでも肌が荒れてくるわ」
「あは。またそんなことを」
仲澤さんはそう言って微笑む。昨日はあんなに緊張していた彼女だけど、一晩のうちにもうすっかりみっこと打ち解けて、リラックスしている。
「メイクだいたいできた? そろそろ髪をあたらせてちょうだい」
そう言いながら、ヘアメイキャッパーのYUKOさんが部屋にやってきた。
「みっこちゃんも今年でもう、20歳なのね~。道理であたしも老けるはずだわ」
「え~。YUKOさん、全然そんなことないわよ。むしろ若返った気がするわ」
「そう? やっぱり愛のチカラかしら?」
「そう言えば、前の彼氏さんとは、あれからどうなったの?」
「それっていつの前カレ? みっこちゃんがお休みしている間に、わたしも愛の遍歴、重ねたわよ」
「それでますます女に磨きがかかったのね。YUKOさんって、男の生気を吸って生きてるみたい」
「まあ。人を吸血鬼みたく言っちゃって。相変わらず口の悪い子ね~」
そう言いながらYUKOさんは機嫌よく、みっこの髪を巻いていく。
「みっこちゃん。お久し振り~」
しばらくすると今度は、長い巻き髪が綺麗な、背の高い女の人が、みっこに小さく手を振りながら、部屋のドアから顔をのぞかせた。
「お久し振りですー。瀬奈さん!」
みっこも応えるように、笑顔で手を振る。
「今日は張り切って服選んできたわよ。ほら、これなんか可愛いでしょ。機関誌用のリゾート着にと思って」
『瀬奈さん』と呼ばれた女性は、はしごレースとピンタックが綺麗に並んだ白いワンピースを、自分に当てて見せる。ああ。この人はスタイリストさんなのね。
「わぁ、『PINK HOUSE』ですか? 綺麗なラインですね。さすが瀬奈さんチョイス!」
髪を巻かれながら、瀬奈さんのかざしたドレスを見て、みっこは嬉しそうに微笑む。
撮影前だというのに、みっこの部屋はそんな緊張を感じさせない、なごやかな雰囲気だった。
つづく
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