Campus91

茉莉 佳

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12 CANARY ENSIS

CANARY ENSIS 17

 メイクとヘアがだいたい完成して、わたしたちがビーチに出たときには、撮影の準備も終わっていた。
三脚には蛇腹のついた大きなカメラが据えつけられ、砂の上にはたくさんの太いコードが這っていて、それがストロボなどに繋がり、4メートルくらいの高さに組み上げられたパイプの上には、大きな白い半透明の布が空を覆っていた。
これは『デュフューザー』といって、モデルに当たる光をやわらげる効果があるらしい。
大きなテントの下のディレクターチェアに腰かけたみっこは、仲澤さんとYUKOさんから最後の仕上げをしてもらいながら、藤村さんとラフ画を見て、動きやポーズの確認をしている。
南の島だというのに、暑苦しそうなスーツを着た男性や、それとは対照的な、個性的でラフなカッコをした男性が数人やってきて、それぞれ藤村さんに挨拶をしている。彼の丁寧な対応を見ていると、どうやらクライアントのお偉いさんたちや、広告代理店のプロデューサーさんに営業さんたちみたい。撮影の現場はどんどん人が増えていき、賑やかになってきた。
『知らない人が増えてくると思うけど、さつきちゃんはとりあえず、元気よく挨拶していればいいよ』
と、藤村さんがアドバイスしてくれたので、そういう人を見かけるたびに、わたしは明るく挨拶するのを心がけた。

「はじめまして。あなたがみっこの友だちのさつきさんだね」
そう言って、眼鏡をかけて開襟シャツを着た、40歳くらいの知的な顔立ちの男性が、みっこのとなりに立っていたわたしに近づいてきた。
「わたしの事務所の社長兼マネージャー、高野さんよ」
みっこが、わたしに紹介する。
「はじめまして。おはようございます!」
「元気いいね。今回はマネージャー代理のお仕事、ご苦労さま。みっこが『早い便で現地入りしたい』って言うけど、ぼくの予定がつかなくてね。今回はありがとう」
「い、いえ。わたし、たいしたことできなくて」
「あの、みっこが、『君をぜひに』っていうくらいだから、ふたり、仲がいいんだね」
そう言って高野さんは微笑んだ。
『あの、みっこ』って…
みっこってモデル業界の中じゃ、いったいどんな存在なんだろう?
「これからはぼくがみっこのスケジュールとか調整するから、弥生さんは彼女の面倒を見てくれるだけでいいよ」
「心配しないでさつき。あたし面倒なんてかけないから」
そう言ってみっこは笑う。わたしのマネージャー代理の仕事は、もう終わったってことか。こんな楽な仕事でここにいて、なんだか申し訳ないな。

「あ、さつきちゃん、ヒマそうね。ちょっとそこに立ってみて」
みっこの側にぼんやり立っていたわたしを見て、星川先生がそう言い、砂浜の真ん中の、大きなディフューザーの下を指差した。
「ここですか?」
アンブレラのついたストロボに囲まれ、きれいに整備されたその場所に、わたしは立った。
「いいわよ。そのままね~」
そう言って星川先生は黒い幕を被って、カメラのファインダーを覗き込む。首藤さんが露出計を、わたしの顔の前にかざした。

“パシッ”

一瞬真っ白い閃光が光り、思わず目をつぶってしまう。首藤さんは露出計の数値を、星川先生に告げた。
「顔、F16」
「もうちょっと光量落として。ハレ切って測ってみて~」
首藤さんが露出計に手をかざして、わたしの前をあちこち動かし、続けざまにストロボが光った。

つづく
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