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12 CANARY ENSIS
CANARY ENSIS 18
「いいわよ~。これで一度ポラ切ってみましょ。さつきちゃん、ちょっとポーズ作ってみてよ」
「え? ポーズって…」
そんな。
いきなり言われても、どうしていいかわからない。
わたしは適当に脚を交差させ、両手を前に組んでみる。
「あら、可愛いわね~。じゃあそのままね」
そう言って星川先生はシャッターを切り、またストロボが光る。
う~ん。なんだかモデルになったみたいで、ちょっと気持ちいいかも。
星川先生はカメラから取り出したポラロイドフィルムを、パンパン叩いたり仰いだりしていたが、しばらくするとそれをみんなで覗き込んで、何ごとか話し合っている。
「さつきちゃん、もう一度ね~。は~い、いくわよ~」
ストロボの位置やカメラの設定をちょこちょこといじったあと、星川先生はそう言ってまたシャッターを切った。そういうのを何回か繰り返して、宣言するように言った。
「こちらはいいわよ~。ぼちぼちいきましょうか」
その声で、現場の空気が一瞬、緊張する。
ディレクターチェアから立ち上がったみっこは、羽織っていたローブを脱ぎながら、こちらに歩いてくる。
昨日着ていたハイレッグカットのビキニの水着。
「交代よ。さつき、可愛かったわよ」
わたしの肩にポンと手をかけて、みっこは微笑んだ。
「じゃあ、いくわよ~、みっこちゃん」
星川先生の言葉で、みんながいっせいにみっこに注目する。わたしもみっこが座っていた椅子の側から、ビーチに立つみっこを見つめた。
えっ…
さっきまでの彼女と同じ筈だけど、なにかが違っている。
みっこの表情は厳しい。
真剣そのもの。
鋭い瞳で、みっこはカメラを構えた星川先生を見つめる。
ちょうど、ネコ科の動物が獲物を狙うような、相手の動きのすべてを、見切ろうとするかのような視線。
「じゃあ、最初は軽くね。みっこちゃんいいわよ。そう。目線ちょうだい」
先生がそう言うと、みっこは大きく息を吸い、気合いを入れるように、一瞬両手を握りしめると、まるで人が変わったかのようにこやかな表情になって、くいっと胸を張り、腰をきゅっとひねってポーズを作って、カメラを見つめてニッコリ微笑む。
「いいわよ~。そのまま目線飛ばして~」
星川先生はみっこに指示をしながら、どんどんシャッターを切る。そのたびにみっこは、ポーズを少しずつ変えていく。
わずかに肩をすぼめ、首をかしげる。
唇のかすかなニュアンスが変化していき、夏らしい明るい笑顔から、ちょっとアンニュイさを込めた微笑みまで、様々な笑顔を見せる。
そうしながらみっこは、ゆっくりと砂浜に腰をおろし、女らしさを強調するかのように優美なウエストラインを作り、愛らしくレンズを見つめる。
いつものみっこと違わないようで、どこかいつもとまったく違う…
すべてがよそいきの表情で、それがとっても絵になっているんだ。
そしてすごいのは、どんなポーズをとっても、シャッターを押す瞬間、ピシッとポーズが止まること。
脚を上げるようなポーズでも、みっこはからだの芯が少しもブレることがない。それはダンスでからだを鍛えているからこそ、できることだろな。
『あたしのからだは『アート』なのよ』
と言うみっこの台詞も、あながち冗談じゃないのかもしれない。
それは、自分のからだを芸術にまで高める努力をした、モデル森田美湖のプライドなんだ。
つづく
「え? ポーズって…」
そんな。
いきなり言われても、どうしていいかわからない。
わたしは適当に脚を交差させ、両手を前に組んでみる。
「あら、可愛いわね~。じゃあそのままね」
そう言って星川先生はシャッターを切り、またストロボが光る。
う~ん。なんだかモデルになったみたいで、ちょっと気持ちいいかも。
星川先生はカメラから取り出したポラロイドフィルムを、パンパン叩いたり仰いだりしていたが、しばらくするとそれをみんなで覗き込んで、何ごとか話し合っている。
「さつきちゃん、もう一度ね~。は~い、いくわよ~」
ストロボの位置やカメラの設定をちょこちょこといじったあと、星川先生はそう言ってまたシャッターを切った。そういうのを何回か繰り返して、宣言するように言った。
「こちらはいいわよ~。ぼちぼちいきましょうか」
その声で、現場の空気が一瞬、緊張する。
ディレクターチェアから立ち上がったみっこは、羽織っていたローブを脱ぎながら、こちらに歩いてくる。
昨日着ていたハイレッグカットのビキニの水着。
「交代よ。さつき、可愛かったわよ」
わたしの肩にポンと手をかけて、みっこは微笑んだ。
「じゃあ、いくわよ~、みっこちゃん」
星川先生の言葉で、みんながいっせいにみっこに注目する。わたしもみっこが座っていた椅子の側から、ビーチに立つみっこを見つめた。
えっ…
さっきまでの彼女と同じ筈だけど、なにかが違っている。
みっこの表情は厳しい。
真剣そのもの。
鋭い瞳で、みっこはカメラを構えた星川先生を見つめる。
ちょうど、ネコ科の動物が獲物を狙うような、相手の動きのすべてを、見切ろうとするかのような視線。
「じゃあ、最初は軽くね。みっこちゃんいいわよ。そう。目線ちょうだい」
先生がそう言うと、みっこは大きく息を吸い、気合いを入れるように、一瞬両手を握りしめると、まるで人が変わったかのようにこやかな表情になって、くいっと胸を張り、腰をきゅっとひねってポーズを作って、カメラを見つめてニッコリ微笑む。
「いいわよ~。そのまま目線飛ばして~」
星川先生はみっこに指示をしながら、どんどんシャッターを切る。そのたびにみっこは、ポーズを少しずつ変えていく。
わずかに肩をすぼめ、首をかしげる。
唇のかすかなニュアンスが変化していき、夏らしい明るい笑顔から、ちょっとアンニュイさを込めた微笑みまで、様々な笑顔を見せる。
そうしながらみっこは、ゆっくりと砂浜に腰をおろし、女らしさを強調するかのように優美なウエストラインを作り、愛らしくレンズを見つめる。
いつものみっこと違わないようで、どこかいつもとまったく違う…
すべてがよそいきの表情で、それがとっても絵になっているんだ。
そしてすごいのは、どんなポーズをとっても、シャッターを押す瞬間、ピシッとポーズが止まること。
脚を上げるようなポーズでも、みっこはからだの芯が少しもブレることがない。それはダンスでからだを鍛えているからこそ、できることだろな。
『あたしのからだは『アート』なのよ』
と言うみっこの台詞も、あながち冗談じゃないのかもしれない。
それは、自分のからだを芸術にまで高める努力をした、モデル森田美湖のプライドなんだ。
つづく
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