Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
149 / 300
12 CANARY ENSIS

CANARY ENSIS 24

「みっ…」
彼女に近づこうとして、わたしは足を止めた。
芝生の上で、みっこは海に向かって、わたしに背を向けるように座っていたけど、そのとなりに寄り添うように、だれかがいたからだ。

大きなシルエット。
男の人…
えっ?
藤村さん!?

ふたりのシルエットは、海に揺れる月の光の中に、ぼんやりと浮かんでいた。いったいこんな所で、ふたりっきりでなにを話してるの?
昼間はあんなにざっくばらんに接していて、まるで親子か、年の離れた兄妹みたいにしか見えなかったふたりは、今はまるで恋人同士のように、ぴったりとからだを寄せあっている。とても話しかけられるような雰囲気じゃない。

みっこは顔を上げて、藤村さんを見つめた。
藤村さんは、みっこの頬に手を添える。

『あっ…』
心の中で、思わず叫んた。
ふたりはゆっくり近づきあうと、キスをした。
ふたつのシルエットは、ひとつになる。
長いキス。
そのまま藤村さんはみっこを横たえ、重なりあった。
しばらくすると、ため息が漏れるような、みっこのよがり声が聞こえてきた気がした。

『これ以上は見ちゃいけない!』
わたしはそう感じて、音を立てないように注意しながら、素早くその場を離れた。


 急ぎ足でホテルに戻りながら、心臓が激しく脈打ち、混乱した。

『なんだか、羨ましいな~』
と、みっこがわたしと川島君のことを言っていたのは、つい昨日のこと。
『肌を重ねあえる人がすぐ近くにいるって、最高に幸せなことよね』
とみっこは、恋人なんかいないような口ぶりだった。
なのに、その次の日の夜には、もう、あんなことをしているなんて…

みっこと藤村さんって、恋人同士だったの?

みっこからは今まで、そんな話は聞いたことがないし、今度のロケでだって、まったくそんなそぶりは、ふたりとも見せていなかった。
例えふたりが恋人同士だとしても、それは別に構わないんだけど、藤村さんには別居中とはいえ、奥さんがいるようだし、みっこもそれは知っている。
そういうたぐいの恋愛は、誰にも知られずに、秘めやかにしなきゃいけないってのも、よくわかるつもり。もちろん、親友のわたしにさえ、言えないことだってあると思うし…

『わがままで生意気な小娘』のみっこには、確かに藤村さんみたいな、うんと年上の包容力のある男性がお似合いだとは思う。
だけど、みっこがわざわざ、そんなリスキーな相手に飛び込んだりする?
もちろん、恋なんて、どういうきっかけではじまるかわかんないし、好きって気持ちは理性で抑えられるものじゃないし。
それに、わたしなんかが、首を突っ込むことじゃないとは思うけど…

ただ…
今、確かなのは…

みっこにも『肌を重ねあえる人』がいるっていう、事実。


「さつきちゃん!?」
ホテルの中庭に入ったところで、缶コーヒーを手にした川島君とはちあわせた。わたしを見てびっくりした様子。
「どうしたんだ? 海で待っててくれればいいのに」
「ごめんなさい。ちょっと…」
言いかけて、わたしは口を噤んだ。
こんなこと、とても言えない。川島君には。
ううん。
川島君だけじゃなく、他のだれにも、今、わたしの見たことは、話せない気がする。
もちろん、みっこにも…

「あんまり遅いんで、心細くなっちゃって」
わたしはそう言って、ごまかした。
「ごめん。冷たいコーヒーしかなかったから、部屋のポットであたためていたんだよ」
「じゃ、部屋に戻りましょ」
「戻るって?」
「う… うん。もう遅いし… 部屋でくつろぐのもいいかなと思って」
「それもそうだな」
そう言った川島君の腕を、わたしはぎゅっと抱きしめる。
「どうしたんだい?」
「ううん。なんでもない」

…なんだか熱い。
気持ちが妙にたかぶっていて、今はこうやってくっついていたい気分。
みっこのラブシーンなんか見ちゃったせいかな?
どんな事情があるにしても、その時が来れば、みっこもきっと話してくれるわよね。
今夜見たできごとに関しては、わたしはみっこからの告白を待つことにした。

 部屋に戻ったわたしたちは、いっしょにシャワーを浴びながら、海での続きのように抱きあった。

わたしは川島君が好き。
大好き!

その気持ちはどんどん大きくなって、もう言葉で告げるだけじゃ、物足りない。
わたしは川島君がほしい。
心だけじゃなく、からだも、なにもかも。
わたしは川島君に、触れてほしい。
頬に、唇に、胸に。
もっともっと、触れてほしい。
川島君に触れてもらえると、とっても幸せな気持ちになってくるから。

シャワーを浴びたあと、飽きることもなく、わたしたちはベッドでお互いを求めあった。

つづく
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
追放された『貸与者』は、不条理な世界を監査(清算)する 「お前のようなゴミはいらない」 勇者パーティの荷物持ちソラは、魔王討伐を目前に非情な追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 彼らの力はすべて、ソラの規格外のステータスを『借りていた』だけの虚飾に過ぎないことを。 「……わかった。貸していた力(資産)、すべて返還(清算)してもらうよ」 契約解除。勇者たちは凡人へと転落し、ソラはレベル9999の万能感を取り戻す。 しかし、彼が選んだのは復讐ではない。 世界に蔓延る「不条理な負債」を暴き、正当な価値を再定義する『監査官』としての道だった。 才能なしと虐げられた少女ミィナを助け、ソラは冷徹に告げる。 「君の絶望は、私が買い取った。利息として……君を最強にしてあげよう」 「因果の空売り」「魂の差し押さえ」「運命の強制監査」 これは、最強の『貸与者』が、嘘まみれの英雄や腐敗した領地を、帳簿の上から「ざまぁ」する物語。

女子小学五年生に告白された高校一年生の俺

think
恋愛
主人公とヒロイン、二人の視点から書いています。 幼稚園から大学まである私立一貫校に通う高校一年の犬飼優人。 司優里という小学五年生の女の子に出会う。 彼女は体調不良だった。 同じ学園の学生と分かったので背負い学園の保健室まで連れていく。 そうしたことで彼女に好かれてしまい 告白をうけてしまう。 友達からということで二人の両親にも認めてもらう。 最初は妹の様に想っていた。 しかし彼女のまっすぐな好意をうけ段々と気持ちが変わっていく自分に気づいていく。