Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
155 / 300
13 Rainy Resort

Rainy Resort 2

「みっこにはディスコだとかモルディブだとか、いろんな所に連れて行ってもらったから,たまにはわたしたちで、どこかに案内しようよ」
川島君にそう言いだしたのは、モルディブから帰ってしばらくして。桜の花がようやくほころびかけた頃だった。
「そうだな。森田さんにはいろいろお世話になったし」
「どこがいいかな?」
「彼女、東京の人だろ?
だったらこちらの有名な観光地とかがいいんじゃないかな?
季節もいいし、高原とかどうかな?
湯布院に行って、九重高原のペンションに泊まるくらいが、お手頃だと思うけど」
「そうね。九重には温泉もいろいろとあるんでしょ?」
「温泉に入るのかい? 『おやじギャル』みたいだな」
「え? 川島君、温泉きらい?」
「ぼくは本物のオヤジだから、大好きさ」

 そうやってふたりの意見がまとまり、みっこを誘ったのは、桜の花が真っ盛りの、わたしたちが2年生になりたての頃。
「履修だいたい決まったし、ゴールデンウィーク前の、日曜日をはずした平日で、お互いたいした講義がない日に行こうよ」
「いいわね。でも、まじめなさつきが、そんなこと言うなんて思わなかったわ。2年になって、学校にも慣れたってことね」
「あは… やっぱり人が多いのってイヤじゃない」
「湯布院と九重か… 三人で行くの?」
「そうよ。みっこが誘いたい人がいるんなら、それでもいいけど」
「そういうのはないけど… ちょっと辛いかなぁ」
みっこは少し躊躇ためらっている様子。
「え? あまり気がすすまない?」
「そうじゃなくって…」
わたしの言葉に、彼女は反射的にかぶりを振り、その理由わけを言った。
「もちろん、とっても嬉しいんだけど。あたし… さつきと川島君の邪魔にならないかなぁって、思って」
「なに言ってるの? 邪魔なら誘わないわよ… っていうか、みっこのために計画したんだから」
「ふふ… ありがと、誘ってくれて。とっても嬉しい」
そう言って、みっこは口もとをほころばせる。それから彼女は、思いついたように言った。
「それだったらあたし、『ゆふいんの森』に乗りたいなぁ」
「なに? それ」
「リゾート・エクスプレス」



 『ゆふいんの森』号は、ヨーロッパの優等列車みたいなリッチな気分の味わえる、素敵な内装の特急列車。
車内は木目調を基本にした落ち着いた配色で、列車なのに床が木製のフローリングってのが、おもしろい。
車両の連結部分は橋みたいになっていてユニークだし、軽食や甘味が食べられるビュッフェもあるし、車内の所々にはミニギャラリーもあり、沿線の名物や絵画なんかを飾っていて、列車というよりは、まるで豪華なホテルの中にいるみたい。

 車窓の外は、ビル街から次第に田んぼが多くなっていき、気がつくと列車は、筑後平野の真ん中をひた走っていた。左前方には耳納みのう連山が見える。
久留米からは九州を横断する線路に乗り換え、耳納の山々を右手に眺めながら、『ゆふいんの森』号は田園風景の中を走る。
列車が筑後川に沿って走るようになると、左右の山は次第に迫ってくる。『ゆふいんの森』号は山岳地方に入り、狭い山あいを縫うように走っていった。

「見て見てさつき!」
みっこは車窓を流れる景色を指差す。
「あの山、形が変わってる。山の周辺が切り立ってて、山頂が平らで、なんだかホールケーキみたい」
「ほんとね~。大きな切り株にも見えるわ。なんて言う山なんだろ?」
「あれは『切株山』と申します。『メーサ』という種類の山で、別名『テーブルマウンテン』とも申します。阿蘇山や久住山から流れ出した溶岩台地の周辺部が浸食されて、固い岩盤だけが取り残され、円錐状の台地になったものでございます」
ビュッフェでお団子セットを食べながら、窓の外の景色を見ていたわたしたちに、素敵なキャビンアテンダントの制服を着た女性が、やさしくガイドして下さった。

つづく
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。