Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
161 / 300
13 Rainy Resort

Rainy Resort 8

「ほんとは、川島君といっしょにいたいんでしょ?」
そんなわたしを見て、みっこがささやいた。
「えっ?」
「ふふ。今、そんな目で見てたわよ。『いっしょの部屋で寝たい』って」
「やだ~。みっこのエッチ」
「そんな意味じゃなくって… まぁ、それもあるかもだけど。
あたしはいいから、さつきは彼の部屋に泊まれば?」
「いいよぉ」
「遠慮しなくていいのに」
「遠慮じゃないよ」
「ん~… やっぱり、三人ってのは微妙かな。あたしも早く恋人作らなくちゃね」
お風呂セットを抱えたみっこはペロリと舌を出し、冗談のように言ったけど、その表情は少し寂しそうだった。

『恋人』か…

あれからみっこの恋は、どうなったんだろう?
『好きな人が、できちゃったみたい』
と、モルディブからの帰りに告白してから、みっこはその話題をまったく口にしない。
彼女の場合、『訳あり』な恋にはまりそうになっているみたいだから、わたしも迂闊に訊くのがはばかられる。
なんだか複雑。
わたしもみっこの彼氏と4人で、晴れてダブルデートなんてしてみたいけど、そんな日って、来るのかな?

 『白いピアノ』の温泉は、大きな窓のある室内浴場と露天風呂があって、野外の露天風呂からは、キラキラとまたたく星空と、真っ黒いシルエットで横たわる九重連山が、よく見える。
そんな温泉につかりながら、わたしたちはずっと、恋話に花を咲かせていた。

「そう言えば、去年の夏にいっしょに海に行ったとき、わたし、みっこには『絶対彼氏がいる』って思ってたんだ。あの頃って、まだみっこのことよく知らなくて、みっこもなかなか打ち解けてくれなかったわよね」
「そうだったわね。あたしも直樹さんとの別れをずっと引きずってて、さつきから『恋人いる?』って訊かれたときも、『心から好きになれる男の人に、出会ったこと、ない』なんて、直樹さんを否定するようなことを、ムキになって言ってた気がする」
「覚えてるわよ。そのときのみっこ、すっごい厳しい顔してた」
「え~? やだなぁ」
「なんか、懐かしいわね~」
「そうね…」
遠い目をしながら湯船につかったみっこは、キラキラとまたたく星を見上げて、ポツリとつぶやく。
「人って… どんどん変わっていくものね」
「え?」
「あの頃は、さつきにはまだ彼氏がいなくて、『純情な子だな~』って思ってたのに、今じゃ川島君とブイブイ言わせてるし」
「ブイブイって… そんなんじゃないよぉ」
「あはは。冗談。でもあの頃は、こうやって一年後にいっしょに温泉に入るなんて、思ってなかったわね」
「そうね。今年の夏も、またバカンスに行こうね!」
「ええ。行きたいわね。絶対」

 シャンプーをして、お風呂から上がって、髪を乾かしている間も、ふたりはずっとそんな話をしていた。だけどわたしの方から、みっこの今の恋の話題に触れることはしなかったし、みっこも話す気配もなかった。

部屋に戻ってお肌の手入れをしながら、みっこはふと、思い出したように言う。
「ほんとにいいのよ。さつきは川島君のお部屋に泊まっても」
「みっこ、まだそんなこと言ってるの?」
「だって… ふたりに悪いし…」
この子、わたしと川島君に、妙に気を遣ってる気がする。
それは嬉しいことだけど、ちょっと遠慮しすぎているみたいで、『生意気でわがままな小娘』の森田美湖にしては、なんだか不自然な気もする。
「だからいいんだって。このバカンスは、みっこのために計画したんだし。わたし今夜はずっと、みっこといろんな話、していたいのよ」
「そう…」
わたしがそう言うと、みっこはようやく安堵したような表情を浮かべ、その夜はもう、川島君とのことを言い出すことはなかった。

つづく
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

Emerald

藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。 叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。 自分にとっては完全に新しい場所。 しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。 仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。 〜main cast〜 結城美咲(Yuki Misaki) 黒瀬 悠(Kurose Haruka) ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。 ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?