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13 Rainy Resort
Rainy Resort 8
「ほんとは、川島君といっしょにいたいんでしょ?」
そんなわたしを見て、みっこがささやいた。
「えっ?」
「ふふ。今、そんな目で見てたわよ。『いっしょの部屋で寝たい』って」
「やだ~。みっこのエッチ」
「そんな意味じゃなくって… まぁ、それもあるかもだけど。
あたしはいいから、さつきは彼の部屋に泊まれば?」
「いいよぉ」
「遠慮しなくていいのに」
「遠慮じゃないよ」
「ん~… やっぱり、三人ってのは微妙かな。あたしも早く恋人作らなくちゃね」
お風呂セットを抱えたみっこはペロリと舌を出し、冗談のように言ったけど、その表情は少し寂しそうだった。
『恋人』か…
あれからみっこの恋は、どうなったんだろう?
『好きな人が、できちゃったみたい』
と、モルディブからの帰りに告白してから、みっこはその話題をまったく口にしない。
彼女の場合、『訳あり』な恋にはまりそうになっているみたいだから、わたしも迂闊に訊くのがはばかられる。
なんだか複雑。
わたしもみっこの彼氏と4人で、晴れてダブルデートなんてしてみたいけど、そんな日って、来るのかな?
『白いピアノ』の温泉は、大きな窓のある室内浴場と露天風呂があって、野外の露天風呂からは、キラキラとまたたく星空と、真っ黒いシルエットで横たわる九重連山が、よく見える。
そんな温泉につかりながら、わたしたちはずっと、恋話に花を咲かせていた。
「そう言えば、去年の夏にいっしょに海に行ったとき、わたし、みっこには『絶対彼氏がいる』って思ってたんだ。あの頃って、まだみっこのことよく知らなくて、みっこもなかなか打ち解けてくれなかったわよね」
「そうだったわね。あたしも直樹さんとの別れをずっと引きずってて、さつきから『恋人いる?』って訊かれたときも、『心から好きになれる男の人に、出会ったこと、ない』なんて、直樹さんを否定するようなことを、ムキになって言ってた気がする」
「覚えてるわよ。そのときのみっこ、すっごい厳しい顔してた」
「え~? やだなぁ」
「なんか、懐かしいわね~」
「そうね…」
遠い目をしながら湯船につかったみっこは、キラキラとまたたく星を見上げて、ポツリとつぶやく。
「人って… どんどん変わっていくものね」
「え?」
「あの頃は、さつきにはまだ彼氏がいなくて、『純情な子だな~』って思ってたのに、今じゃ川島君とブイブイ言わせてるし」
「ブイブイって… そんなんじゃないよぉ」
「あはは。冗談。でもあの頃は、こうやって一年後にいっしょに温泉に入るなんて、思ってなかったわね」
「そうね。今年の夏も、またバカンスに行こうね!」
「ええ。行きたいわね。絶対」
シャンプーをして、お風呂から上がって、髪を乾かしている間も、ふたりはずっとそんな話をしていた。だけどわたしの方から、みっこの今の恋の話題に触れることはしなかったし、みっこも話す気配もなかった。
部屋に戻ってお肌の手入れをしながら、みっこはふと、思い出したように言う。
「ほんとにいいのよ。さつきは川島君のお部屋に泊まっても」
「みっこ、まだそんなこと言ってるの?」
「だって… ふたりに悪いし…」
この子、わたしと川島君に、妙に気を遣ってる気がする。
それは嬉しいことだけど、ちょっと遠慮しすぎているみたいで、『生意気でわがままな小娘』の森田美湖にしては、なんだか不自然な気もする。
「だからいいんだって。このバカンスは、みっこのために計画したんだし。わたし今夜はずっと、みっこといろんな話、していたいのよ」
「そう…」
わたしがそう言うと、みっこはようやく安堵したような表情を浮かべ、その夜はもう、川島君とのことを言い出すことはなかった。
つづく
そんなわたしを見て、みっこがささやいた。
「えっ?」
「ふふ。今、そんな目で見てたわよ。『いっしょの部屋で寝たい』って」
「やだ~。みっこのエッチ」
「そんな意味じゃなくって… まぁ、それもあるかもだけど。
あたしはいいから、さつきは彼の部屋に泊まれば?」
「いいよぉ」
「遠慮しなくていいのに」
「遠慮じゃないよ」
「ん~… やっぱり、三人ってのは微妙かな。あたしも早く恋人作らなくちゃね」
お風呂セットを抱えたみっこはペロリと舌を出し、冗談のように言ったけど、その表情は少し寂しそうだった。
『恋人』か…
あれからみっこの恋は、どうなったんだろう?
『好きな人が、できちゃったみたい』
と、モルディブからの帰りに告白してから、みっこはその話題をまったく口にしない。
彼女の場合、『訳あり』な恋にはまりそうになっているみたいだから、わたしも迂闊に訊くのがはばかられる。
なんだか複雑。
わたしもみっこの彼氏と4人で、晴れてダブルデートなんてしてみたいけど、そんな日って、来るのかな?
『白いピアノ』の温泉は、大きな窓のある室内浴場と露天風呂があって、野外の露天風呂からは、キラキラとまたたく星空と、真っ黒いシルエットで横たわる九重連山が、よく見える。
そんな温泉につかりながら、わたしたちはずっと、恋話に花を咲かせていた。
「そう言えば、去年の夏にいっしょに海に行ったとき、わたし、みっこには『絶対彼氏がいる』って思ってたんだ。あの頃って、まだみっこのことよく知らなくて、みっこもなかなか打ち解けてくれなかったわよね」
「そうだったわね。あたしも直樹さんとの別れをずっと引きずってて、さつきから『恋人いる?』って訊かれたときも、『心から好きになれる男の人に、出会ったこと、ない』なんて、直樹さんを否定するようなことを、ムキになって言ってた気がする」
「覚えてるわよ。そのときのみっこ、すっごい厳しい顔してた」
「え~? やだなぁ」
「なんか、懐かしいわね~」
「そうね…」
遠い目をしながら湯船につかったみっこは、キラキラとまたたく星を見上げて、ポツリとつぶやく。
「人って… どんどん変わっていくものね」
「え?」
「あの頃は、さつきにはまだ彼氏がいなくて、『純情な子だな~』って思ってたのに、今じゃ川島君とブイブイ言わせてるし」
「ブイブイって… そんなんじゃないよぉ」
「あはは。冗談。でもあの頃は、こうやって一年後にいっしょに温泉に入るなんて、思ってなかったわね」
「そうね。今年の夏も、またバカンスに行こうね!」
「ええ。行きたいわね。絶対」
シャンプーをして、お風呂から上がって、髪を乾かしている間も、ふたりはずっとそんな話をしていた。だけどわたしの方から、みっこの今の恋の話題に触れることはしなかったし、みっこも話す気配もなかった。
部屋に戻ってお肌の手入れをしながら、みっこはふと、思い出したように言う。
「ほんとにいいのよ。さつきは川島君のお部屋に泊まっても」
「みっこ、まだそんなこと言ってるの?」
「だって… ふたりに悪いし…」
この子、わたしと川島君に、妙に気を遣ってる気がする。
それは嬉しいことだけど、ちょっと遠慮しすぎているみたいで、『生意気でわがままな小娘』の森田美湖にしては、なんだか不自然な気もする。
「だからいいんだって。このバカンスは、みっこのために計画したんだし。わたし今夜はずっと、みっこといろんな話、していたいのよ」
「そう…」
わたしがそう言うと、みっこはようやく安堵したような表情を浮かべ、その夜はもう、川島君とのことを言い出すことはなかった。
つづく
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