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13 Rainy Resort
Rainy Resort 9
翌朝、目を覚ますと、みっこはとなりのベッドにはいなかった。
顔を洗って着替えをすませ、ペンションの庭に出てみる。
ハーブがたくさん植えられた花壇の前で、みっこはオーナーさんと話をしていたが、わたしが出てくるのを見て、手を振った。
「おはよう、さつき。夕べはよく眠れた?」
「おはようみっこ、早いのね」
「あたし、早起きなのよ」
真綿の黄色い毛玉のような可愛いカモミールの花を、みっこは両手に抱えて微笑んだ。
「オーナーさんから頂いたのよ。食後にカモミールとレモングラスで、ハーブティを入れて下さるんだって」
「昨日はわたしたちも楽しませてもらいましたから、そのお礼ですよ」
「ありがとうございます。あたしこそ、いい思い出ができました」
「そう言って頂けて、わたしたちも嬉しいですよ」
朝の光のような爽やかな微笑みを浮かべてお礼を言うみっこに、オーナーさんも愛想よく返した。
向こうの花壇から、ハーブをいっぱい摘んで戻ってきた奥さんらしい人も、みっこに微笑んで言った。
「森田さんのピアノを聴いて、『わたしももっと練習しなきゃ』って思いましたよ。またぜひ泊まりにいらして、ピアノを聴かせて下さいね」
「ありがとうございます。奥さんのチェロもとっても素敵で、オーナーさんとの息もぴったりで、楽しかったです」
花が咲くようなみっこの笑顔につられるように、オーナーご夫婦もにっこり微笑む。
みっこってほんとに、人の心を掴むのがじょうず。
快晴だった昨日と違って、今日はどんよりと雲の多い、すっきりしないお天気で、九重連山もその頂きは、低くたれ込めた雲に覆われていた。
朝食が終わって、爽やかなハーブティをサービスして頂いたあと、わたしたちはペンションのテニスコートに出た。
コートには昨夜泊まっていたカップルが、一足先に出ていてプレイしている。
「わたし、テニスなんて、川島君とつきあいはじめてから、はじめてやったのよ。みっこはテニスできる?」
「ん。ちょっとくらいならね」
「ほんとにちょっと? みっこって、たいていのことはなんでもこなしちゃうから」
「そんなことないわよ」
淡いピンクのショートパンツに、ウイグル綿のポロシャツを合わせたテニスルックのみっこは、髪をツーテールに結び、コート脇のベンチで、ラケットの編み目を丁寧につくろいながら答える。その仕草がキマっていて、上級者のオーラを醸している。
先にコートに出ていた川島君がラケットを振って、わたしたちを促す。
「乱打しよう」
わたしとみっこは同じサイドのコートに入り、川島君はネットをはさんで、わたしたちに向かう。
テニスは趣味で時々やっているという川島君は、なかなか上手で、わたしたちを相手に、交互にボールを返していった。
「さつきちゃ~ん、もうちょっといい球返してよ。ぼくはふたりも相手してるんだからな!」
「しかたないじゃない。ヘタなんだもん」
わたしの返球があちこちに反れるのを追いかけながら、川島君は笑いながら冗談を言った。だけど、テニスが下手なわたしには、あまり気分のいい言葉じゃない。
ちょっとむくれながら、チラリととなりのみっこを見た。
予感したとおり、みっこはテニスの腕もなかなかのもの。
小気味いいフットワークで、素早く球に追いついて、腕の伸びた綺麗なフォームで、ラケットを振り抜き、川島君の足元に正確にリターンしている。
コートを駆け回る長い脚が、躍動感があってとってもセクシー。
『わたしは今、みっこと較べられているんだ』
ラケットを握りながら、わたしは漠然と感じていた。
つづく
顔を洗って着替えをすませ、ペンションの庭に出てみる。
ハーブがたくさん植えられた花壇の前で、みっこはオーナーさんと話をしていたが、わたしが出てくるのを見て、手を振った。
「おはよう、さつき。夕べはよく眠れた?」
「おはようみっこ、早いのね」
「あたし、早起きなのよ」
真綿の黄色い毛玉のような可愛いカモミールの花を、みっこは両手に抱えて微笑んだ。
「オーナーさんから頂いたのよ。食後にカモミールとレモングラスで、ハーブティを入れて下さるんだって」
「昨日はわたしたちも楽しませてもらいましたから、そのお礼ですよ」
「ありがとうございます。あたしこそ、いい思い出ができました」
「そう言って頂けて、わたしたちも嬉しいですよ」
朝の光のような爽やかな微笑みを浮かべてお礼を言うみっこに、オーナーさんも愛想よく返した。
向こうの花壇から、ハーブをいっぱい摘んで戻ってきた奥さんらしい人も、みっこに微笑んで言った。
「森田さんのピアノを聴いて、『わたしももっと練習しなきゃ』って思いましたよ。またぜひ泊まりにいらして、ピアノを聴かせて下さいね」
「ありがとうございます。奥さんのチェロもとっても素敵で、オーナーさんとの息もぴったりで、楽しかったです」
花が咲くようなみっこの笑顔につられるように、オーナーご夫婦もにっこり微笑む。
みっこってほんとに、人の心を掴むのがじょうず。
快晴だった昨日と違って、今日はどんよりと雲の多い、すっきりしないお天気で、九重連山もその頂きは、低くたれ込めた雲に覆われていた。
朝食が終わって、爽やかなハーブティをサービスして頂いたあと、わたしたちはペンションのテニスコートに出た。
コートには昨夜泊まっていたカップルが、一足先に出ていてプレイしている。
「わたし、テニスなんて、川島君とつきあいはじめてから、はじめてやったのよ。みっこはテニスできる?」
「ん。ちょっとくらいならね」
「ほんとにちょっと? みっこって、たいていのことはなんでもこなしちゃうから」
「そんなことないわよ」
淡いピンクのショートパンツに、ウイグル綿のポロシャツを合わせたテニスルックのみっこは、髪をツーテールに結び、コート脇のベンチで、ラケットの編み目を丁寧につくろいながら答える。その仕草がキマっていて、上級者のオーラを醸している。
先にコートに出ていた川島君がラケットを振って、わたしたちを促す。
「乱打しよう」
わたしとみっこは同じサイドのコートに入り、川島君はネットをはさんで、わたしたちに向かう。
テニスは趣味で時々やっているという川島君は、なかなか上手で、わたしたちを相手に、交互にボールを返していった。
「さつきちゃ~ん、もうちょっといい球返してよ。ぼくはふたりも相手してるんだからな!」
「しかたないじゃない。ヘタなんだもん」
わたしの返球があちこちに反れるのを追いかけながら、川島君は笑いながら冗談を言った。だけど、テニスが下手なわたしには、あまり気分のいい言葉じゃない。
ちょっとむくれながら、チラリととなりのみっこを見た。
予感したとおり、みっこはテニスの腕もなかなかのもの。
小気味いいフットワークで、素早く球に追いついて、腕の伸びた綺麗なフォームで、ラケットを振り抜き、川島君の足元に正確にリターンしている。
コートを駆け回る長い脚が、躍動感があってとってもセクシー。
『わたしは今、みっこと較べられているんだ』
ラケットを握りながら、わたしは漠然と感じていた。
つづく
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