Campus91

茉莉 佳

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14 Summer Vacation

Summer Vacation 5

「いらっしゃいさつき! 待ってたわ」
電車の発着を告げるベルと、たくさんのビジネスマンが行きかう、慌ただしい東京駅のプラットホームで、みっこは遠くから目ざとくわたしを見つけ、大きな声で呼びかけ、手を振って迎えてくれた。
「ごめ~んみっこ。わざわざ迎えに来てもらって」
大きなバッグを両手に持って、わたしはみっこの方へ歩み寄る。
「いいのよ。わたしも今日はオフだから」
「ほんとにいいの? ずっとみっこの家に泊めてもらっても」
「もちろんよ。パパにもママにも、さつきのことは話してるわ。ママには、『さつきがモデルに復帰するきっかけをくれた』って話したから、あの人すっかりあなたのこと、気に入ってるみたいよ」
「ええ~っ。困るよそんなの。わたしなんにもしてないし」
「いいのいいの。でも、さつきんって厳しいのね。なかなか許してもらえなかったんでしょ? 旅行」
「一週間も東京に行ってるんだから、どこに泊まるのか、親としては心配するわよね」
「まさか、『彼氏ん家に泊まる』なんて言えないしね。まあ、ほんとはそうしたいんでしょうけど」
「そりゃ、それもあるけど… でもわたし、みっこのおうちにも行ってみたかったし」
「歓迎するわ」
そう言って、みっこはとびきりの笑顔をわたしに見せる。
久し振りだなぁ、この笑顔。
こうして東京のたくさんの人のなかで見ても、やっぱりみっこって綺麗で、ひときわ目立つ存在よね~。

 都会の喧噪のなかで、わたしたちは少し大きめの声で話しながら、ターミナルの地下を足早に歩く。
東京の人たちはみんな忙しそうで、ビジネスマンもOLも、わき目もふらずにシャカシャカ歩いている。
『東京と福岡じゃ、時間の流れる速さが違うみたいだな』
そんなことを考えながら、わたしの足どりも自然と速くなっていた。
 山手線の車窓から見えるたくさんの線路は、いろんな色の電車が並んではすれ違っていき、JRだけじゃなく、たくさんの私鉄も並行して走っているらしく、テレビで見たことあるような変わった電車が、あちこちの駅に止まったり、トンネルへと消えていったりしている。
どこまで行っても大きなビルが続き、高架から見えるはるか向こうの景色も、やっぱりビル。
この街には人だけじゃなく、モノも知識も情報も、福岡とは比べ物にならないくらい集まっていて、膨大なエネルギーに溢れている。
みっこの家は、そんな都心から少し離れた、新宿から電車で30分ほど行った中央線沿いの駅から、歩いて10分くらいの所にあった。

「やっと着いた? なんだか疲れちゃった。人ばっかり多くって」
東京が発散するエネルギーにいささかうんざりしながら、わたしはみっこの家の門をくぐった。
「あは。でも、あたしの家のまわりは、わりと静かでしょ?」
「そうね」
確かに、みっこの家のあるあたりは、静かなたたずまいの住宅街だった。
それも高級住宅街らしく、大きな洒落た家がずらりと並んでいて、車庫や駐車場に止めてあるクルマは、どれも外車や高級車ばかり。森田家も例外ではなく、広い敷地にはポプラの樹が生い茂り、ドーマ(屋根の明かり採り窓)のある二階建ての洋館の壁には、蔦がからまっていて、まるで映画に出てくる外国の家みたいで素敵。

つづく
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