Campus91

茉莉 佳

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14 Summer Vacation

Summer Vacation 11

「そう。さつきに渡したいものがあるの」
わたしの不安を振り払ってくれるかのように、みっこは微笑んで立ち上がると、机の引き出しからリボンのかかった小さな箱を出してきて、差し出した。
「遅くなっちゃったけど、Happy Birthday!」
「えっ? あ、ありがと」
「こないだディズニーランドに行ったの。そのときに買ったのよ」
「へぇ! ディズニーランドかぁ。開けていい?」
「どうぞ」
小箱から出てきたのは、ミッキーマウスの腕時計。
だけど、馴染みあるあの派手な赤い色のキャラクターの時計じゃなく、渋い銀色の文字盤にミッキーの顔が彫っている、クラシカルなデザインだった。これなら子供っぽくもないし、お洒落な服や、それこそ去年、みっこがプレゼントしてくれたワンピースなんかにも、さりげなく合いそう。
「ふふ。実はあたしとペアなのよ」
そう言いながら、みっこはジュエルケースから同じ時計を出して、わたしに見せ、ニッコリと微笑んだ。

たまらないなぁ…

みっこと川島君のことを疑心暗鬼して、わたしが煩悶しているときに、みっこはわたしの誕生日を覚えていて、こうしてプレゼントを用意してくれている。
そうやって、いつもわたしのことを気にかけてくれてるってのに、そんな彼女を疑うなんて、なんだか申し訳ない。

やっぱりわたし、みっこが好き。
どんなことがあっても、この友情は大切にしていきたいって、心から思う。

「ありがとうみっこ。大事にするね」
「それにね、サプライズもあるのよ」
「サプライズ?」
「そのときまで、ないしょ」
「え~っ? そんな、気になるじゃない」
「…なんてね。実はね、明々後日しあさってからみんなで、『信州の方に泊まりに行こう』って言ってるの」
「信州?」
「2泊3日でね」
「みんなって?」
「さつきとあたしと、藤村さんに川島君」
「え? 川島君、そんなのひとことも言ってなかった」
「だから、みんなからのサプライズなんだって。さつきのバースディ・トリップってわけ」
「ええっ!?」
「文哉さんに、『さつきが来る』って言ったら、『お誕生日祝いしよう』って計画してくれてね。川島君も乗り気だし、星川センセも特別に、川島君に休みくれるんだって。もちろん、さつきの旅行代は、文哉さん持ち」
「え? そんな…」
「なにか予定あった?」
「そんことないけど、なんだか悪いなって…」
「いいのよ。みんなからの気持ちなんだから」
「うん… 嬉しい」
ちょっと、頬が赤くなってしまう。
こういうサプライズって、なんだか感激。
みんな、わたしのことを考えてくれてたなんて…

だけど…

『川島君も乗り気』ってことは、みっこは川島君と、そういう話をしたってことよね?
いつどこで、そんな話をしたの?
そりゃ、仕事が終わって、みんなと雑談しているついでに、話せることかもしれないけど…

「出発は三日後。9時半に新宿西口に集合よ」
わたしの小さな疑惑にはお構いなしに、みっこは明るく言って、ニッコリ微笑んだ。


 次の日の川島君とのデートは、とっても短いものだった。
その翌々日から旅行で仕事を休むということもあって、残った仕事を明日中に片付けないといけないらしく、川島君に会えたのは、もう夜の9時を回った頃。
わたしたちは星川先生の事務所のある新宿で待ち合わせ、近くのファミレスで慌ただしく食事しただけで、久し振りの再会の感動に浸る暇もなく、みっこの家の前まで送ってくれただけだった。
ほんとはみっこの言うように、川島君の家に泊まりたかったんだけど、旅行の準備もあることだし、わたしはまだいっしょにいたいのをグッと我慢して、みっこの家の前で軽くキスをして、川島君におやすみを言った。

「信州かぁ…」
川島くんの背中を見送りながら、わたしはぼんやりと考えた。
春先にモルディブに行って、5月は由布院と九重。
そして今度の信州。
どんなことが起きるんだろう?

つづく
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