Campus91

茉莉 佳

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14 Summer Vacation

Summer Vacation 15

 美味しいワインとディナーを楽しみながら、わたしたちは時間も忘れて話し込んだ。
藤村さんやみっこ、川島君の仕事の様子や裏話を聞いたり、わたしたちの学校でのできごとなんかを話しているうちに、もうすっかり夜も更けてしまい、結局ワインボトルも二本空けてすっかりご機嫌になって、わたしたちは部屋に引き上げることにした。

『トロイメライ』での部屋割りは、男女別。
二階へ上がって、それぞれの部屋に入るとき、わたしはつい、となりの部屋の扉を開ける川島君を、目で追ってしまった。
こんな素敵なオーベルジュなんだから、やっぱり川島君とふたりっきりで、甘い夜を過ごしたかったな。
もう何週間もわたしたち、ちゃんとしたふたりっきりのデートをしてないんだもの。

「ふふ。ほんとは川島君と、いっしょの部屋がいいんでしょ?」
ツインルームにわたしのあとから入ってきたみっこは、後ろ手でドアをパタンと閉めながら、からかうように言った。
「べっ… 別に、そんなことないけど…」
「うそ。部屋に入る川島君のこと、すがるような目で見てたわよ」
「う… うん」
「そうよね~。やっぱりそうしたいわよね…」
「そりゃ、まあ…」
「いいわよ。じゃあ、川島君に言って、部屋を替わってもらうわ」
「え? みっこはそれでいいの?」
「まぁね。いたいけな子羊ちゃんは、狼の巣で眠ることになるけどね」
そう言いながら、みっこはウィンクする。
「子羊って… みっこのこと?」
「あら? なんか『意外』って顔してる。まあ、あたしは子羊ってキャラじゃないかな」
「そ、そんなこと…」
そう返しながら、わたしは別のことを考えていた。

みっこはわたしをからかっているだけなの?
それとも、藤村さんといっしょになるきっかけを、作ろうとしているの?
もし、みっこが藤村さんを好きで、いっしょの夜を過ごしたいのなら、わたしも協力してもいいけど、そうじゃないなら、どうリアクションすればいいんだろ?

「ねえみっこ。モルディブの帰りにみっこ、『好きな人ができちゃったみたい』って言ってたでしょ。あれはそのあと、どうなったの?」

とうとう聞いてしまった。
ずっと意識的に避けていた、その話題。
お酒が入って、饒舌になっちゃったかな?
「なんとなく聞きにくかったんだけど、そろそろ教えてくれてもいいんじゃない? わたし、絶対に人に言ったりしないし、みっこの力になれるのなら、なんでもするから」
「ん…」
今まで機嫌よく、滑舌がよかったみっこは、わたしがその話を口にしたとたん、貝のようにおし黙ってしまった。フランス窓のさんに手をかけて、外の真っ暗な林に視線を移す。

ああ…
わたしはこういうみっこを、もう一年以上見てきた。
彼女がこうして黙って遠くに視線をやるのって、自分のなかのなにかと、葛藤しているときなんだ。

「…なにも考えないで会うことなんか、できなかった」

長い沈黙のあと、みっこはようやく、重たい口を開いた。
「え?」
「彼と会うと、どうしても相手のひとのことが気になるの。それが、辛い」
「相手のひとって…」
「だからもう、会いたくない」
わたしの言葉を遮るように、みっこはかぶりを振りながら言う。
「あきらめるつもり? その人のこと」
みっこはコクリと頷く。
だけど、すぐに顔を上げ、わたしの視線から目を逸らすように、首を横に振った。
「でも、やっぱり。ダメみたい」
「ダメって…」
「会う度に、好きになっていく。この気持ち、止められない」
「みっこ…」
「ん」
「その人って、だれなの?」
「…」
「…藤村さん?」
少しの沈黙を挟んでわたしがそう訊くと、みっこは一瞬、ハッと瞳を見開いたが、否定も肯定もしなかった。

つづく
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