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16 Double Game
Double Game 2
そうやって、小池さんのモデルをみっこが引き受けて、もう半年が経つ。
その間に、窓の外の西蘭女子大のキャンパスの木立は、ちりそめの桜から、若葉が萌える新緑。
その緑も濃さを増していき、日差しにくっきりと影を刻み、その日差しも衰えてきて、赤く色づいた落葉が舞い散る景色へと、衣替えしていった。
そう言えば若葉の頃は、川島君とみっこと三人で、由布院にバカンスに行く計画を立ててたっけ。
あの頃はまだまだ、無邪気だった。
もちろん、みっこに対するコンプレックスは、出会った頃からあったけど、それは漠然としたもので、川島君をめぐる『ライバル』として、彼女を見たことなんて、なかった。
そう…
あのモルディブからの帰りの飛行機。
『あたし… 好きな人が、できちゃったみたい』
あのとき、みっこがそう告白してから、わたしたち三人の歯車は、微妙に狂いはじめてきたのかもしれない。
森田美湖が好きなひとは、プロデューサーの藤村さん、に違いない。
モルディブでの最後の夜は、ふたりで海辺で仲良さそうにしていたし。
だけど…
ディズニーランドや他のことで、わたしは川島君とみっこに対して、すっかり疑心暗鬼になってしまっていた。
自分の気持ちをわたしに悟られまいとしてか、みっこは恋の話になると、口を噤むことが多くなったし、川島君だって、東京から帰ってきてからは、デートをしていても『心ここにあらず』っていうことが度々あって、なにを考えているかわからなくなるときがある。
なんだか、ふたりとの間に『壁』みたいなものを感じる。
もちろん、それはわたしの、単なる思い過ごしかもしれない。
ふたりに対していろんな疑惑を持っているから、そういう風に思うだけなのかもしれない。
だったら、ふたりとちゃんと向き合って、問いただせば気も楽になるんだろうけど、わたしにはそれができない。
もし、川島君とみっこが、いっしょにディズニーランドに行くくらい仲が良くなっていて、それ以上の感情をお互い持っているとしたら…
ふたりにどういう態度をとっていいのか、わたしにはわからない。
すべての事実が明らかになってしまうと、三人の関係はどう転ぶか、わからない。
だったら、川島君やみっこが秘密にしたいことは、わたしもあえて知らないふりをしていた方が、いいのかもしれない。
川島くんとみっこのことは今も変わらず大好きだし、わたしを裏切るようなことは、ふたりともしないはず。
でも…
わたしの妄想は、いつもそこをグルグルと回っている。
それはまるで、シュレディンガーの猫。
生きているのか死んでいるのか、わからない、宙ぶらりんの状態。
真実は、封印を解くまで、謎のまま…
「さつき、なに、ぼうっとしてるの?」
みっこがそう言いながら、ポンと肩を叩いて、わたしはハッと我に返った。
そうだった。
今はドレスの仮縫い中だったんだ。
10月も下旬になって、いよいよ文化祭が近づいてくると、ショーの準備は忙しさを増してきた。
「今度のショーは、オープニングに凝ったものだから、人手が足りなくって。さつきに『フィッター』を頼みたいの」
「フィッター?」
「ショーの間の衣装の整理や、着る手伝いをしてくれる人のことよ」
「うん。いいわよ。わたし、やってみたい」
みっこから頼まれ、今回のファションショーにはわたしもスタッフのひとりとして、参加することになった。
つづく
その間に、窓の外の西蘭女子大のキャンパスの木立は、ちりそめの桜から、若葉が萌える新緑。
その緑も濃さを増していき、日差しにくっきりと影を刻み、その日差しも衰えてきて、赤く色づいた落葉が舞い散る景色へと、衣替えしていった。
そう言えば若葉の頃は、川島君とみっこと三人で、由布院にバカンスに行く計画を立ててたっけ。
あの頃はまだまだ、無邪気だった。
もちろん、みっこに対するコンプレックスは、出会った頃からあったけど、それは漠然としたもので、川島君をめぐる『ライバル』として、彼女を見たことなんて、なかった。
そう…
あのモルディブからの帰りの飛行機。
『あたし… 好きな人が、できちゃったみたい』
あのとき、みっこがそう告白してから、わたしたち三人の歯車は、微妙に狂いはじめてきたのかもしれない。
森田美湖が好きなひとは、プロデューサーの藤村さん、に違いない。
モルディブでの最後の夜は、ふたりで海辺で仲良さそうにしていたし。
だけど…
ディズニーランドや他のことで、わたしは川島君とみっこに対して、すっかり疑心暗鬼になってしまっていた。
自分の気持ちをわたしに悟られまいとしてか、みっこは恋の話になると、口を噤むことが多くなったし、川島君だって、東京から帰ってきてからは、デートをしていても『心ここにあらず』っていうことが度々あって、なにを考えているかわからなくなるときがある。
なんだか、ふたりとの間に『壁』みたいなものを感じる。
もちろん、それはわたしの、単なる思い過ごしかもしれない。
ふたりに対していろんな疑惑を持っているから、そういう風に思うだけなのかもしれない。
だったら、ふたりとちゃんと向き合って、問いただせば気も楽になるんだろうけど、わたしにはそれができない。
もし、川島君とみっこが、いっしょにディズニーランドに行くくらい仲が良くなっていて、それ以上の感情をお互い持っているとしたら…
ふたりにどういう態度をとっていいのか、わたしにはわからない。
すべての事実が明らかになってしまうと、三人の関係はどう転ぶか、わからない。
だったら、川島君やみっこが秘密にしたいことは、わたしもあえて知らないふりをしていた方が、いいのかもしれない。
川島くんとみっこのことは今も変わらず大好きだし、わたしを裏切るようなことは、ふたりともしないはず。
でも…
わたしの妄想は、いつもそこをグルグルと回っている。
それはまるで、シュレディンガーの猫。
生きているのか死んでいるのか、わからない、宙ぶらりんの状態。
真実は、封印を解くまで、謎のまま…
「さつき、なに、ぼうっとしてるの?」
みっこがそう言いながら、ポンと肩を叩いて、わたしはハッと我に返った。
そうだった。
今はドレスの仮縫い中だったんだ。
10月も下旬になって、いよいよ文化祭が近づいてくると、ショーの準備は忙しさを増してきた。
「今度のショーは、オープニングに凝ったものだから、人手が足りなくって。さつきに『フィッター』を頼みたいの」
「フィッター?」
「ショーの間の衣装の整理や、着る手伝いをしてくれる人のことよ」
「うん。いいわよ。わたし、やってみたい」
みっこから頼まれ、今回のファションショーにはわたしもスタッフのひとりとして、参加することになった。
つづく
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