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16 Double Game
Double Game 5
「もうすぐ文化祭かぁ」
衣装合わせが終わり、アリーナでのリハーサルまでは少し時間があったので、わたしとみっこはいつものカフェテリアで、暇をつぶしていた。
『午後の紅茶』を飲みながら、みっこはテーブルに肘をついて窓の外の紅葉を眺め、感慨深げに言う。
「あれから一年、か…」
「去年、みっこが小池さんのモデルを断ってから、一年よね」
「…あの頃はあたし『絶対モデルなんかやらない!』って、意地になってたから」
「去年の秋は、ほんとにいろんなことがあったわね~」
「そうね。あたしにも… さつきにも」
「うん…」
「さつきは去年の今頃、『川島君とはもう会わない』って大騒ぎしてたわね」
「ううっ。それを言わないでよ。恥ずかしいじゃない」
「ふふ。まあ、いいじゃない。そういうのを乗り越えて、今はこうしてラブラブなんだから」
「ラブラブ、かぁ…」
「なにか、不満でもあるの?」
わたしがため息つくのを見て、みっこは訝しげに訊く。
「う、ううん。別に…」
「そう。ならいいけど…」
「でも、最近は川島君、卒業制作とかで忙しくて、あまりデートできてないの」
「そうなの?」
「うん」
「川島君、もうすぐ卒業だしね。就職活動とかで、忙しいんでしょうね」
「…みたい」
「これからみんな、どうなるのかなぁ…」
みっこはちょっと憂いのある表情で、窓の外の夕暮れを見ながら、ひとりごとのようにつぶやいた。
「そう言えば、最近はみっこもすっかり忙しくなっちゃって、学校にもあまり出てこなくなったね」
「そうね」
「モデルの仕事、大変なんでしょ?」
「ええ。週に二日くらいは東京に戻ってるし、向こうのアクターズスクールにも通ってるし、忙しくって、目が回りそうよ」
「でも、ちゃんと学校に来ないと、卒業できないわよ」
「…ん。そうね」
みっこはそう言いながら、『午後の紅茶』をコクンと一口飲み、なにかの想いに耽るかのように、しばらく黙った。
「実は… そのことであたし、考えてることがあるの」
しばらく間を置いて、みっこは切り出した。
「なにを?」
「…まだ、話せる段階じゃないけど…」
「いいじゃない。言ってよ」
わたしの言葉に目を伏せながら、みっこは迷うようにつぶやく。
「そう… もう少し自分で考えて、相談した方がいいかも…
ショーが終わるまでは慌ただしいし、そんなに急ぐことでもないから、文化祭が終わって、ゆっくりしたときに話すね。
他にもいろいろ、話したいこと… ううん。話しておかなきゃいけないこともあるし…」
「…話しておかなきゃいけないこと?」
「…ええ」
みっこはそう答えて、視線を窓の外に移す。
釣られてわたしも、外の景色を見ながら考えた。
みっこの『話しておかなきゃいけないこと』って、なんだろ?
窓の外のキャンパスには、色とりどりに着飾った女子大生たちが、行き交っている。
その中で、数人の女の子が黄金色の銀杏の樹の下に立って、なにごとかささやきながら、チラチラとこちらを見ている。
そう言えば最近、そういう女の子が増えたな。
モルディブで撮った、森田美湖のアルディア化粧品サマーキャンペーンCMが、巷で注目を浴び、彼女の出演してるコマーシャルや広告が、ブラウン管や街角、雑誌のページを華やかに飾るようになってくると、学校のみんなのみっこに対する反応も、微妙になってきた。
学校に雑誌のインタビューやカメラマンが来たりすると、女の子たちはみっこのことを、遠くから指さして噂話をし、なかにはサインを求めにやってくる子もいる。
いっしょに講義を受けている女の子たちにも、みっこがモデルをやってることは、すっかり知れ渡ってしまい、今まで気安く話しかけてきていた子が、近寄り難そうに遠巻きにしていたり、話したこともなかった子が、やけに馴れ馴れしく近寄ってきたりと、みっこのまわりもなんだかギクシャクしてきた感じ。
つづく
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