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17 しあわせの作り方
しあわせの作り方 2
「今、卒展用の写真を撮っているんだけど、みっこにそのモデルをお願いして、長崎まで行ったんだよ。
でも時間がなくて…
みっこは本業で忙しくて、スケジュールが合う日も限られてて、急に日程が決まって、さつきちゃんに声かけられなかったんだ。ごめん。悪いと思ってるよ」
「…どうして」
「え?」
「どうして言ってくれなかったの?」
「だから、日程が急に決まって」
「電話一本かけてくれればすむことじゃない? それともなにか、わたしに言えないことでもしてるの?」
「そんなことないよ」
「川島君。みっことつきあってるの?」
「え? なに言ってるんだ。そんなはずないじゃないか」
「みっこのこと、好きなの?」
「そりゃ… 好きだけど。それは友だちやモデルとしてで、別に恋愛感情はないよ」
「嘘」
「嘘じゃない。みっこには純粋に、ぼくの作品づくりのために、協力してもらってるんだ。だから、『好き』とか『つきあってる』とか、そんな風に受け取ってほしくないんだよ」
「…」
「昔、恵美ちゃんにモデルやってもらってたの、覚えてる?
恵美ちゃんもいいモデルだったけど、恋愛関係でもめて、酷い別れ方してしまったから、ぼくはその二の舞はしたくないんだ。
その点、みっこは一流のプロモデルで、ぼくなんかが撮らせてもらえるのは、奇跡みたいにありがたいことだよ。
彼女はカメラマンとの関わり方も心得ているし、さつきちゃんの親友だし、ぼくとさつきちゃんがつきあってるのを当然知ってるから、恵美ちゃんみたいに、恋愛絡みでゴタゴタしたりしないよ。
彼女とは、『モデルとカメラマン』として、きっちりやっていけるはずだよ」
「…」
「さつきちゃん?」
「…」
「聞いてる?」
「………わかった」
「え?」
「もういい」
「もういいって?」
「じゃあ。おやすみなさい」
「あ… ああ。ほんとにいいの?」
「うん」
「ほんとに納得してくれた?」
「ええ。おやすみなさい」
「ああ… おやすみ」
そう言って電話を切ったあと、わたしは無理に自分を納得させようとした。
彼の言うように、高校時代から去年の秋まで、川島君は蘭恵美さんに、恋愛感情抜きでモデルになってもらい、写真を撮っていた。
そのことで、回りからは冷やかされたり、下衆っぽい目で見られたりもした。
だけど、川島君にしてみれば、作品づくりのためにモデルの女の子とふたりっきりで出かけるのなんて、特別な意味を持たないことなんだ。
川島君はそうやって、『友だちとして』、『モデルとして』、女の子とつきあえる。
だからみっこのことも、『卒業展のモデル』と割り切って、長崎まで撮影に出かけた。
それだけなんだ。
理性で、自分にそう言い聞かせることはできる。
でも、心のどこかに、ざわざわした感情が残る。
森田美湖はもともとわたしの親友で、川島君はわたしを通して、彼女と仲良くなった。
なのに、そのわたしになんの伺いも立てず、みっこにモデルを頼んで、わたしが知らないうちにふたりだけで撮影に行くなんて、わたしだけのけ者にされたみたいで、気分が悪い。
川島君にはそういう、乙女心をわかってないような鈍感さがあるけど、自分の作品のできにこだわる彼には、そういう『友だちになった順番』なんて、多分、どうでもいいことなんだろうな。
つづく
でも時間がなくて…
みっこは本業で忙しくて、スケジュールが合う日も限られてて、急に日程が決まって、さつきちゃんに声かけられなかったんだ。ごめん。悪いと思ってるよ」
「…どうして」
「え?」
「どうして言ってくれなかったの?」
「だから、日程が急に決まって」
「電話一本かけてくれればすむことじゃない? それともなにか、わたしに言えないことでもしてるの?」
「そんなことないよ」
「川島君。みっことつきあってるの?」
「え? なに言ってるんだ。そんなはずないじゃないか」
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「そりゃ… 好きだけど。それは友だちやモデルとしてで、別に恋愛感情はないよ」
「嘘」
「嘘じゃない。みっこには純粋に、ぼくの作品づくりのために、協力してもらってるんだ。だから、『好き』とか『つきあってる』とか、そんな風に受け取ってほしくないんだよ」
「…」
「昔、恵美ちゃんにモデルやってもらってたの、覚えてる?
恵美ちゃんもいいモデルだったけど、恋愛関係でもめて、酷い別れ方してしまったから、ぼくはその二の舞はしたくないんだ。
その点、みっこは一流のプロモデルで、ぼくなんかが撮らせてもらえるのは、奇跡みたいにありがたいことだよ。
彼女はカメラマンとの関わり方も心得ているし、さつきちゃんの親友だし、ぼくとさつきちゃんがつきあってるのを当然知ってるから、恵美ちゃんみたいに、恋愛絡みでゴタゴタしたりしないよ。
彼女とは、『モデルとカメラマン』として、きっちりやっていけるはずだよ」
「…」
「さつきちゃん?」
「…」
「聞いてる?」
「………わかった」
「え?」
「もういい」
「もういいって?」
「じゃあ。おやすみなさい」
「あ… ああ。ほんとにいいの?」
「うん」
「ほんとに納得してくれた?」
「ええ。おやすみなさい」
「ああ… おやすみ」
そう言って電話を切ったあと、わたしは無理に自分を納得させようとした。
彼の言うように、高校時代から去年の秋まで、川島君は蘭恵美さんに、恋愛感情抜きでモデルになってもらい、写真を撮っていた。
そのことで、回りからは冷やかされたり、下衆っぽい目で見られたりもした。
だけど、川島君にしてみれば、作品づくりのためにモデルの女の子とふたりっきりで出かけるのなんて、特別な意味を持たないことなんだ。
川島君はそうやって、『友だちとして』、『モデルとして』、女の子とつきあえる。
だからみっこのことも、『卒業展のモデル』と割り切って、長崎まで撮影に出かけた。
それだけなんだ。
理性で、自分にそう言い聞かせることはできる。
でも、心のどこかに、ざわざわした感情が残る。
森田美湖はもともとわたしの親友で、川島君はわたしを通して、彼女と仲良くなった。
なのに、そのわたしになんの伺いも立てず、みっこにモデルを頼んで、わたしが知らないうちにふたりだけで撮影に行くなんて、わたしだけのけ者にされたみたいで、気分が悪い。
川島君にはそういう、乙女心をわかってないような鈍感さがあるけど、自分の作品のできにこだわる彼には、そういう『友だちになった順番』なんて、多分、どうでもいいことなんだろうな。
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