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17 しあわせの作り方
しあわせの作り方 7
みっこと長崎に行ったことは、昨日の夜、川島君に電話して聞き出したばかり。
なのに今日、みっこが急にそのことをわたしに打ち明けるのは、なんだかタイミングがよすぎない?
まるで、川島君とみっこが裏で連絡とりあっていて、ふたりで示し合わせて、その上でみっこが、わたしの様子を探りにきているんじゃないかと、疑わざるをえない。
そうしなきゃいけないほど、ふたりはわたしに、隠しておきたいことでもあるの?
せっかくケーキづくりが上手くいって、気分もちょっと上向きになってきたっていうのに、また鬱々とした重たい気分に逆戻り。
みっこと話しながら、わたしは少しずつ鬱憤がたまって声が沈んでいき、彼女に対する受け応えの口調も、冷めたものになっていった。そんなわたしの気も知らないで、みっこは明るい口調で言う。
「そうね。あたしもね。川島君とは、『モデルとカメラマン』として、けじめつけて、つきあっていけると思うわ」
「みっこ、これからも川島君のモデルするつもり?」
「え?」
わたしの言葉に、みっこは一瞬、うろたえた。
「またふたりでどこかに行って、写真撮ったりするの? わたしにないしょで」
「そんなこと… さつきが『ダメ』って言ったら、もう川島君とは、会わないわ」
「それじゃまるでわたしが、『川島君のモデルをしないで』って、言ってるみたいじゃない」
「そういうわけじゃ…」
「蘭さんのときもそうだったけど、『モデルとは恋愛感情抜きでつきあう』って、川島君は言ってるのよ。なのに、そんな理由でみっこが川島君のモデルをやめたら、嫌がったわたしが悪者みたいじゃない」
「悪者なんてことはないわよ。じゃあ、川島君のモデルをするときは、さつきといっしょに行くようにすれば、いいんじゃない?」
「別に… ふたりで行ってもいいわよ。どうせわたし、邪魔だし」
「…さつき」
「なんかもう、疲れちゃった」
「…」
「今朝、川島君から電話があったけど、わたし居留守使っちゃったのよね。
なんだか、今は川島君とは、なにもしゃべりたくないの」
「さつき… 川島君と、うまくいってないの?」
みっこは不安そうに、わたしに訊ねた。
なに?
その白々しい言葉。
『うまくいってない』のは、みっこのせいじゃない。
怒りに近い感情が、ふつふつとわき上がってきて、わたしは突っけんどんに答えた。
「…うまくいってないみたい」
「ほんとに?」
「…みっことも、うまくいってないみたいよ。今は」
「…」
わたしの言葉に彼女は肩を落とし、しょげかえった。
『生意気でわがままな小娘』の森田美湖なら、こうやってひどいことを言われても、ひるまないはずなんだけど、今はわたしへの罪悪感のためか、彼女はなにも言い返してこない。
それをいいことに、わたしは追い討ちをかけるように言い放つ。今までの鬱憤を、みんなみっこにぶつけるように。
「みっこは川島君のこと、好きなんじゃない?」
「え? どうしてそう思うの?」
「なんとなく、そう感じるのよ」
「別に、そんなこと…」
「ないっていうの? でもみっこは、あなたが好きになった人のこと、全然言ってくれないじゃない? わたしいろいろ考えたんだけど、それって、相手が川島君だから、わたしに言えないんじゃないの?」
「そんな… 違うわ」
「ほんとに?」
「ええ」
「じゃあ、みっこの好きな人って、だれなのよ?」
「………」
「なにも言ってくれないのね」
「え?」
「みっこも川島君も、なんにも言ってくれない。
わたしがどんなに傷ついて、悩んだかわかる?
みっこにも川島君にも、裏切られたみたいで、それでわたしがふたりのこと疑うのは、当たり前じゃない。もう、いい加減にしてって感じ」
「…ごめん」
「あやまってもらわなくていい」
「…」
「じゃあ、わたし。もう帰るから」
「 っあたしが…」
そう言って背中を向けたわたしに、みっこは反射的に声をかけた。訝しげにわたしは、彼女を振り返る。
「…あたしが、好きなのは…」
つづく
なのに今日、みっこが急にそのことをわたしに打ち明けるのは、なんだかタイミングがよすぎない?
まるで、川島君とみっこが裏で連絡とりあっていて、ふたりで示し合わせて、その上でみっこが、わたしの様子を探りにきているんじゃないかと、疑わざるをえない。
そうしなきゃいけないほど、ふたりはわたしに、隠しておきたいことでもあるの?
せっかくケーキづくりが上手くいって、気分もちょっと上向きになってきたっていうのに、また鬱々とした重たい気分に逆戻り。
みっこと話しながら、わたしは少しずつ鬱憤がたまって声が沈んでいき、彼女に対する受け応えの口調も、冷めたものになっていった。そんなわたしの気も知らないで、みっこは明るい口調で言う。
「そうね。あたしもね。川島君とは、『モデルとカメラマン』として、けじめつけて、つきあっていけると思うわ」
「みっこ、これからも川島君のモデルするつもり?」
「え?」
わたしの言葉に、みっこは一瞬、うろたえた。
「またふたりでどこかに行って、写真撮ったりするの? わたしにないしょで」
「そんなこと… さつきが『ダメ』って言ったら、もう川島君とは、会わないわ」
「それじゃまるでわたしが、『川島君のモデルをしないで』って、言ってるみたいじゃない」
「そういうわけじゃ…」
「蘭さんのときもそうだったけど、『モデルとは恋愛感情抜きでつきあう』って、川島君は言ってるのよ。なのに、そんな理由でみっこが川島君のモデルをやめたら、嫌がったわたしが悪者みたいじゃない」
「悪者なんてことはないわよ。じゃあ、川島君のモデルをするときは、さつきといっしょに行くようにすれば、いいんじゃない?」
「別に… ふたりで行ってもいいわよ。どうせわたし、邪魔だし」
「…さつき」
「なんかもう、疲れちゃった」
「…」
「今朝、川島君から電話があったけど、わたし居留守使っちゃったのよね。
なんだか、今は川島君とは、なにもしゃべりたくないの」
「さつき… 川島君と、うまくいってないの?」
みっこは不安そうに、わたしに訊ねた。
なに?
その白々しい言葉。
『うまくいってない』のは、みっこのせいじゃない。
怒りに近い感情が、ふつふつとわき上がってきて、わたしは突っけんどんに答えた。
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「ほんとに?」
「…みっことも、うまくいってないみたいよ。今は」
「…」
わたしの言葉に彼女は肩を落とし、しょげかえった。
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それをいいことに、わたしは追い討ちをかけるように言い放つ。今までの鬱憤を、みんなみっこにぶつけるように。
「みっこは川島君のこと、好きなんじゃない?」
「え? どうしてそう思うの?」
「なんとなく、そう感じるのよ」
「別に、そんなこと…」
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「そんな… 違うわ」
「ほんとに?」
「ええ」
「じゃあ、みっこの好きな人って、だれなのよ?」
「………」
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「みっこも川島君も、なんにも言ってくれない。
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「…ごめん」
「あやまってもらわなくていい」
「…」
「じゃあ、わたし。もう帰るから」
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そう言って背中を向けたわたしに、みっこは反射的に声をかけた。訝しげにわたしは、彼女を振り返る。
「…あたしが、好きなのは…」
つづく
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