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18 Rip Stick ~before side
Rip Stick 5
そう。
ここは去年の文化祭の夜、みっこと恋について、いろいろ語りあったところ。
そして…
川島君が突然現れ、告白してくれて、ふたりがつきあうようになった場所。
わたしのいちばんの、思い出の場所。
「今だから言うけどあたしね。さつきのことが、すっごく羨ましかったの」
「え?」
「あの頃…」
みっこはそう言って、去年の様々なできごとを思い出すように、じっと瞳を閉じて、かすかに微笑む。しばらくそうして、おもむろに目を開き、わたしにニッコリ微笑んだ。
「去年の今頃って、よく、さつきの恋話を聞かせてもらって、相談に乗ったりしてたわよね」
「うん…」
「あの頃はまだ、川島君との恋の行方なんてわかんなかったけど、人を好きになって、生き生き輝いているさつきが、ほんとに羨ましかった」
「みっこ…」
「あたし、さつきにいろいろけしかけるようなこと言ったでしょ。だから、さつきが川島君とつきあえるようになって、ほっとしたのよ」
「…うん」
「こんなこと言うのも変かもしれないけど、川島君と長崎に行ったときね、彼はほんとに『紳士』だったわ」
「紳士?」
みっこは真顔で、わたしを見つめる。
わたしをこんな、思い出の場所に連れてきて、今いちばん気にしている件を持ち出すなんて…
その意味を知りたくて、わたしもみっこを探るように見つめた。
「よくいるのよ。下心のあるカメラマンって」
「え?」
「モデル仲間とか、撮影会モデルさんから時々聞く話なんだけど、『作品性』とか『芸術性』とかにかこつけて、意味もなくモデルを脱がせたがったり、『ポーズ指導』とか言って、スケベ心丸出しで触ってきたり、撮影のあとのアフターを期待して、食事とかドライブに誘ってきたりするカメラマン。
そういうのって、けっこう多いみたい」
「そ、そうなの?」
「『いい作品撮るためにお互いが理解できるよう、セックスしなきゃ』なんて露骨に言われた、って話も聞いたことあるわ」
「うっそぉ~!」
「カメラなんてナンパの小道具。写真を撮るより、女の子を釣るアイテムになってるカメラマンって、割といるのよね~。がっかり」
「『綺麗に撮ってやるから』、なんて言って口説くのはわかるけど… プロの世界でもそうなの?」
「まあ、ね。似たようなものかな。
撮影のときは、たいていクライアントやエージェントの人も観てるから、そんなに露骨な態度とられることはまずないけど、モデルなんてただの『商品』とか『素材』で、自分は芸術作品を生み出してるつもりの、アーティスト気取りのカメラマンは、よくいるわね。
そんな『上から目線』で撮影されちゃ、例えお仕事でも、こっちも気分が萎えるわ」
「やっぱり、そんなものなのね」
「でも川島君は違ったの」
「え? 違った?」
思わず聞き返したわたしを見つめ、みっこはニッコリと微笑みながら、話を続けた。
「あたしのこと、いっしょに作品を創り上げていくパートナーとして。でも、あくまで『モデルとカメラマン』として。『自分の恋人の親友』として。川島君は理想的な接し方をしてくれた」
「そ… そう」
「川島君って、なんだか安心できるのよね」
「安心?」
「クルマのなかとかでふたりきりになっても、不安を感じないの」
「ふ~ん…」
「いろいろ聞いたわよ」
「えっ? なにを?」
「さつきのこと。
川島君、嬉しそうに話すのよ」
「ほっ、ほんとに? なんの話ししたの?」
「さつきの小説の話とか、文学の話とか、恋愛観とか。
今までさつきとしかそんな話はしなかったから、川島君の口から聞くのは視点がちょっと違ってて、とっても新鮮だったわ」
「川島君、どんなこと言ってたの?」
「たくさん話しすぎて、ひとことじゃ言えないけど…
ただ、さつきは川島君から、ほんとに大事に思われてるんだって、つくづく感じちゃったかな。なんだか妬けちゃた」
そう言って、みっこはクスッと笑いながら、続ける。
つづく
ここは去年の文化祭の夜、みっこと恋について、いろいろ語りあったところ。
そして…
川島君が突然現れ、告白してくれて、ふたりがつきあうようになった場所。
わたしのいちばんの、思い出の場所。
「今だから言うけどあたしね。さつきのことが、すっごく羨ましかったの」
「え?」
「あの頃…」
みっこはそう言って、去年の様々なできごとを思い出すように、じっと瞳を閉じて、かすかに微笑む。しばらくそうして、おもむろに目を開き、わたしにニッコリ微笑んだ。
「去年の今頃って、よく、さつきの恋話を聞かせてもらって、相談に乗ったりしてたわよね」
「うん…」
「あの頃はまだ、川島君との恋の行方なんてわかんなかったけど、人を好きになって、生き生き輝いているさつきが、ほんとに羨ましかった」
「みっこ…」
「あたし、さつきにいろいろけしかけるようなこと言ったでしょ。だから、さつきが川島君とつきあえるようになって、ほっとしたのよ」
「…うん」
「こんなこと言うのも変かもしれないけど、川島君と長崎に行ったときね、彼はほんとに『紳士』だったわ」
「紳士?」
みっこは真顔で、わたしを見つめる。
わたしをこんな、思い出の場所に連れてきて、今いちばん気にしている件を持ち出すなんて…
その意味を知りたくて、わたしもみっこを探るように見つめた。
「よくいるのよ。下心のあるカメラマンって」
「え?」
「モデル仲間とか、撮影会モデルさんから時々聞く話なんだけど、『作品性』とか『芸術性』とかにかこつけて、意味もなくモデルを脱がせたがったり、『ポーズ指導』とか言って、スケベ心丸出しで触ってきたり、撮影のあとのアフターを期待して、食事とかドライブに誘ってきたりするカメラマン。
そういうのって、けっこう多いみたい」
「そ、そうなの?」
「『いい作品撮るためにお互いが理解できるよう、セックスしなきゃ』なんて露骨に言われた、って話も聞いたことあるわ」
「うっそぉ~!」
「カメラなんてナンパの小道具。写真を撮るより、女の子を釣るアイテムになってるカメラマンって、割といるのよね~。がっかり」
「『綺麗に撮ってやるから』、なんて言って口説くのはわかるけど… プロの世界でもそうなの?」
「まあ、ね。似たようなものかな。
撮影のときは、たいていクライアントやエージェントの人も観てるから、そんなに露骨な態度とられることはまずないけど、モデルなんてただの『商品』とか『素材』で、自分は芸術作品を生み出してるつもりの、アーティスト気取りのカメラマンは、よくいるわね。
そんな『上から目線』で撮影されちゃ、例えお仕事でも、こっちも気分が萎えるわ」
「やっぱり、そんなものなのね」
「でも川島君は違ったの」
「え? 違った?」
思わず聞き返したわたしを見つめ、みっこはニッコリと微笑みながら、話を続けた。
「あたしのこと、いっしょに作品を創り上げていくパートナーとして。でも、あくまで『モデルとカメラマン』として。『自分の恋人の親友』として。川島君は理想的な接し方をしてくれた」
「そ… そう」
「川島君って、なんだか安心できるのよね」
「安心?」
「クルマのなかとかでふたりきりになっても、不安を感じないの」
「ふ~ん…」
「いろいろ聞いたわよ」
「えっ? なにを?」
「さつきのこと。
川島君、嬉しそうに話すのよ」
「ほっ、ほんとに? なんの話ししたの?」
「さつきの小説の話とか、文学の話とか、恋愛観とか。
今までさつきとしかそんな話はしなかったから、川島君の口から聞くのは視点がちょっと違ってて、とっても新鮮だったわ」
「川島君、どんなこと言ってたの?」
「たくさん話しすぎて、ひとことじゃ言えないけど…
ただ、さつきは川島君から、ほんとに大事に思われてるんだって、つくづく感じちゃったかな。なんだか妬けちゃた」
そう言って、みっこはクスッと笑いながら、続ける。
つづく
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