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18 Rip Stick ~before side
Rip Stick 9
「まあ… 実を言うとね。そのときはやっぱり悔しかったわ。
でも、去年のことはわたしにとって、『カリスマ』なんて回りからよいしょされて、思い上がっていた自分を戒める、いい経験だったと思うの。
それに、あれから一年で新しいアイディアも湧いてきて、それを形にする技術も身につけて、わたしのスキルも上がったわ。
このファションショーは、西蘭のミスコン替わりでもあるから、出場者は在学中に1回しかモデルをできないでしょ。だから、よりいい形で、こうやってみっこちゃんをモデルに迎えられて、逆に去年断ってもらってよかったとさえ思ってるのよ」
小池さんはそう言って、みっこに微笑みかける。そのとなりで、真っ赤に目を腫らせて髪もボロボロにし、一心不乱にドレスの細部を縫っていたミキちゃんが、嬉しそうに手を上げた。
「小池さん、終わりました~っ!」
「わぁ! ありがとミキちゃん。ここの刺繍だけはもう間に合わないかと思ってたけど、ミキちゃんの頑張りで助かったわ。もう、完璧ね!」
そう言ってドレスをチェックした小池さんは、思い出したようにあたりを見渡し、ポツリと言う。
「そういえば、おなか、すいたわね。みんなお昼も食べてないし…
なにか食べ物ないかな? だれか模擬店でお菓子でも買ってこない?」
「あっ。わたし、パウンドケーキ作ってきましたよ。どうですか?」
バッグから財布を取り出そうとした小池さんに、わたしは昨夜から作っておいたフルーツパウンドケーキを差し出した。今までの経験から、修羅場のあとはみんなおなかがすいてるって、予想していたんだ。
「やったぁ。さつきちゃんの手作りケーキ! 本番前に元気が出るわ」
小池さんは嬉しそうに、わたしが差し出したパウンドケーキに手を伸ばした。
「あ~。さつきちゃん、ケーキ作ったんだぁ。いただきま~す」
楽屋に遊びに来ていたナオミが、いつの間にかわたしたちのチームの輪に入ってきていて、遠慮なくケーキに手を伸ばしてくる。
「じゃあ、わたしは紅茶でも買ってきますね」
作業を終えたばかりのミキちゃんが気を利かせて、足元をフラフラさせながらも、近くの自販機から『午後の紅茶』を買ってきてくれる。
本番前だというのに、ささやかなティータイムがはじまった。
「ん~。おいしい~!」
ケーキを頬張った小池さんは、嬉しそうに口許をほころばせた。
それを見ながら、みっこは言う。
「でしょ。さつきはお菓子づくりの天才なんですよ。こないだあたし、さつきの手作りのケーキ食べて、思わず泣いちゃいました。あんまり美味しくて」
「みっこちゃんも大袈裟ね~。でもそれ、わかる。空腹にこのケーキは、天使からの贈り物だわ。ありがとう、さつきちゃん」
「いえ。わたしこのくらいしか、できることないですから」
そう言ってみっこを見る。ケーキを口に運びながらわたしを見たみっこは、ニッコリとうなずいた。
ちょっと安心。
辛いことがあっても、すぐにこうやって冗談にして笑い飛せのは、いつものみっこだな。
「森田さ~ん。面会よ」
そのとき楽屋の入口から、みっこを呼ぶスタッフの声がした。
みっこは席を立って楽屋を出て行ったが、両手一杯の真っ白な薔薇とかすみ草の花束を抱えて、すぐに戻ってきた。
「わぁ! すごい。きれい!」
「どうしたのみっこ? 面会って、だれだったの?」
彼女は薔薇の花束に顔を埋め、香りをかぐように瞳を閉じて言った。
「お祝いだって。上村君から」
「上村君?! あのときの?」
「そう。去年、学園祭の夜に、あたしをフォークダンスに誘ってきた高校生」
そうだった。
去年の学園祭の夜。みっこにフォークダンスを申し込みにきた男の子。
みっこがナンパされるところは何回か見たけど、彼女がはじめて誘いを受けた男の子だったから、印象に残っている。
みっこの口から上村君の話しを聞くことはあまりなかったけど、今でも繋がってたんだ。
「そう言えばナオミ、カツくんとはどうなったの?」
花束を抱えたたまま、みっこはナオミに訊く。
つづく
でも、去年のことはわたしにとって、『カリスマ』なんて回りからよいしょされて、思い上がっていた自分を戒める、いい経験だったと思うの。
それに、あれから一年で新しいアイディアも湧いてきて、それを形にする技術も身につけて、わたしのスキルも上がったわ。
このファションショーは、西蘭のミスコン替わりでもあるから、出場者は在学中に1回しかモデルをできないでしょ。だから、よりいい形で、こうやってみっこちゃんをモデルに迎えられて、逆に去年断ってもらってよかったとさえ思ってるのよ」
小池さんはそう言って、みっこに微笑みかける。そのとなりで、真っ赤に目を腫らせて髪もボロボロにし、一心不乱にドレスの細部を縫っていたミキちゃんが、嬉しそうに手を上げた。
「小池さん、終わりました~っ!」
「わぁ! ありがとミキちゃん。ここの刺繍だけはもう間に合わないかと思ってたけど、ミキちゃんの頑張りで助かったわ。もう、完璧ね!」
そう言ってドレスをチェックした小池さんは、思い出したようにあたりを見渡し、ポツリと言う。
「そういえば、おなか、すいたわね。みんなお昼も食べてないし…
なにか食べ物ないかな? だれか模擬店でお菓子でも買ってこない?」
「あっ。わたし、パウンドケーキ作ってきましたよ。どうですか?」
バッグから財布を取り出そうとした小池さんに、わたしは昨夜から作っておいたフルーツパウンドケーキを差し出した。今までの経験から、修羅場のあとはみんなおなかがすいてるって、予想していたんだ。
「やったぁ。さつきちゃんの手作りケーキ! 本番前に元気が出るわ」
小池さんは嬉しそうに、わたしが差し出したパウンドケーキに手を伸ばした。
「あ~。さつきちゃん、ケーキ作ったんだぁ。いただきま~す」
楽屋に遊びに来ていたナオミが、いつの間にかわたしたちのチームの輪に入ってきていて、遠慮なくケーキに手を伸ばしてくる。
「じゃあ、わたしは紅茶でも買ってきますね」
作業を終えたばかりのミキちゃんが気を利かせて、足元をフラフラさせながらも、近くの自販機から『午後の紅茶』を買ってきてくれる。
本番前だというのに、ささやかなティータイムがはじまった。
「ん~。おいしい~!」
ケーキを頬張った小池さんは、嬉しそうに口許をほころばせた。
それを見ながら、みっこは言う。
「でしょ。さつきはお菓子づくりの天才なんですよ。こないだあたし、さつきの手作りのケーキ食べて、思わず泣いちゃいました。あんまり美味しくて」
「みっこちゃんも大袈裟ね~。でもそれ、わかる。空腹にこのケーキは、天使からの贈り物だわ。ありがとう、さつきちゃん」
「いえ。わたしこのくらいしか、できることないですから」
そう言ってみっこを見る。ケーキを口に運びながらわたしを見たみっこは、ニッコリとうなずいた。
ちょっと安心。
辛いことがあっても、すぐにこうやって冗談にして笑い飛せのは、いつものみっこだな。
「森田さ~ん。面会よ」
そのとき楽屋の入口から、みっこを呼ぶスタッフの声がした。
みっこは席を立って楽屋を出て行ったが、両手一杯の真っ白な薔薇とかすみ草の花束を抱えて、すぐに戻ってきた。
「わぁ! すごい。きれい!」
「どうしたのみっこ? 面会って、だれだったの?」
彼女は薔薇の花束に顔を埋め、香りをかぐように瞳を閉じて言った。
「お祝いだって。上村君から」
「上村君?! あのときの?」
「そう。去年、学園祭の夜に、あたしをフォークダンスに誘ってきた高校生」
そうだった。
去年の学園祭の夜。みっこにフォークダンスを申し込みにきた男の子。
みっこがナンパされるところは何回か見たけど、彼女がはじめて誘いを受けた男の子だったから、印象に残っている。
みっこの口から上村君の話しを聞くことはあまりなかったけど、今でも繋がってたんだ。
「そう言えばナオミ、カツくんとはどうなったの?」
花束を抱えたたまま、みっこはナオミに訊く。
つづく
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