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18 Rip Stick ~before side
Rip Stick 13
しばしの静寂。
次に起こるできごとを、観客たちは息を潜めて待っているよう。
そんな暗闇の会場全体に、まるでなにかの予兆のように、マドンナの『ヴォーグ』のイントロが、神秘的な音色を響かせはじめた。それにしたがって、レーザーライトが点滅し、客席をなめるように動きはじめる。
そして、曲がノリのいいパートに入ったとたん、ライトが一斉にステージを照らし、それぞれポーズをキメていた25人全員のモデルを、くっきりと浮かび上がらせた。
“ゥワァァァァァァ…”
驚きと喝采がいっしょくたになった、歓声とも叫びともつかない声が客席から沸き起こり、その音はハウリングしながら大きなうねりになって、ステージに押し寄せる。
その渦のなかで、中世っぽい黒いドレスやタキシードを纏った25人のモデルが、一斉に『ヴォーギングダンス』を踊った。
客席からの歓声と拍手の渦が、一段と高まる。
みっこの言う『ゲイのダンス』のヴォーギングダンスは、今年大流行しているダンスで、手の振りが幾何学的でなまめかしく、まるでなにかの予言みたいに黙示的。
数ヶ月のレッスンの成果もあって、みんなのダンスは見事に揃っていた。
みっこは漆黒のバッスルスタイルのミニ丈ドレスを纏い、ステージの中央で踊っている。
手の振りや腰使いがビシビシと決まって、可憐ななかにもセクシィな色気が漂う。
スカートの裾からチラチラとのぞくガーターベルトと、ストッキングのレース模様が、なんとも艶っぽい。
そして、他のモデルたちの先頭を切って、センターステージまで悩ましい足どりでウォーキングしていくと、背中をのけぞらせて、見事なダンスを披露していった。
う~ん。
爪の先から髪の流れにまで神経の行き届いたみっこのダンスは、他の人たちと較べても、圧倒的な技術力と表現力を持っている。こうして25人のモデルのダンスを見ていても、みっこがいちばん華やかで上手で、どうしても目を惹く。
観客席は、流行のヴォーギングダンスをアレンジした、ショーの派手なオープニングに、大きく湧いていた。
「いい? 1分半しかないからね。最初のモデルたちが戻ってきたら、1分で着替えさせて、ステージに出して。ここがショーの最大のヤマだから!」
「はいっ!」
バックステージでは進行係が、これからの段取りを念押ししている。
幕間からショーの様子を伺っていたわたしは、モデルが戻ってくる時間が近づくと、緊張感を高め、自分のポジションについた。
今回のショーは、最初に全員のモデルを登場させてしまったせいで、オープニングから次のシーンへのつなぎが、モデルとスタッフにとっては、いちばんの難関なのだ。
与えられた時間は、わずかに1分半。
その間にモデルは素早く着替えて、ステージに出ないといけない。
リハーサルのときに何度も練習して、それなりにうまく繋げることができたけど、本番ではなにが起こるかわからない。
絶対に失敗できない。
経験を買われて、みっこがセカンドシーンの、最初のモデルを務めることになっていた。
「さつきちゃん。リハどおり、あなたはみっこちゃんが次に着る服のセッティングを手伝って。わたしは髪をあたるから。
脱いだ服の整理は次に戻ってくるまででいいから、まずはこのヤマ場で時間内に送り出すことだけ考えて」
次の出し物に使うコサージュを握りしめた小池さんは、そう念押しして、みっこの戻りを待ち構えている。
ショーイングを終え、ステージの袖に戻ってきたみっこは、観客向けのにこやかな表情から、いきなり真剣な眼差しに変わった。
『来た!』
つづく
次に起こるできごとを、観客たちは息を潜めて待っているよう。
そんな暗闇の会場全体に、まるでなにかの予兆のように、マドンナの『ヴォーグ』のイントロが、神秘的な音色を響かせはじめた。それにしたがって、レーザーライトが点滅し、客席をなめるように動きはじめる。
そして、曲がノリのいいパートに入ったとたん、ライトが一斉にステージを照らし、それぞれポーズをキメていた25人全員のモデルを、くっきりと浮かび上がらせた。
“ゥワァァァァァァ…”
驚きと喝采がいっしょくたになった、歓声とも叫びともつかない声が客席から沸き起こり、その音はハウリングしながら大きなうねりになって、ステージに押し寄せる。
その渦のなかで、中世っぽい黒いドレスやタキシードを纏った25人のモデルが、一斉に『ヴォーギングダンス』を踊った。
客席からの歓声と拍手の渦が、一段と高まる。
みっこの言う『ゲイのダンス』のヴォーギングダンスは、今年大流行しているダンスで、手の振りが幾何学的でなまめかしく、まるでなにかの予言みたいに黙示的。
数ヶ月のレッスンの成果もあって、みんなのダンスは見事に揃っていた。
みっこは漆黒のバッスルスタイルのミニ丈ドレスを纏い、ステージの中央で踊っている。
手の振りや腰使いがビシビシと決まって、可憐ななかにもセクシィな色気が漂う。
スカートの裾からチラチラとのぞくガーターベルトと、ストッキングのレース模様が、なんとも艶っぽい。
そして、他のモデルたちの先頭を切って、センターステージまで悩ましい足どりでウォーキングしていくと、背中をのけぞらせて、見事なダンスを披露していった。
う~ん。
爪の先から髪の流れにまで神経の行き届いたみっこのダンスは、他の人たちと較べても、圧倒的な技術力と表現力を持っている。こうして25人のモデルのダンスを見ていても、みっこがいちばん華やかで上手で、どうしても目を惹く。
観客席は、流行のヴォーギングダンスをアレンジした、ショーの派手なオープニングに、大きく湧いていた。
「いい? 1分半しかないからね。最初のモデルたちが戻ってきたら、1分で着替えさせて、ステージに出して。ここがショーの最大のヤマだから!」
「はいっ!」
バックステージでは進行係が、これからの段取りを念押ししている。
幕間からショーの様子を伺っていたわたしは、モデルが戻ってくる時間が近づくと、緊張感を高め、自分のポジションについた。
今回のショーは、最初に全員のモデルを登場させてしまったせいで、オープニングから次のシーンへのつなぎが、モデルとスタッフにとっては、いちばんの難関なのだ。
与えられた時間は、わずかに1分半。
その間にモデルは素早く着替えて、ステージに出ないといけない。
リハーサルのときに何度も練習して、それなりにうまく繋げることができたけど、本番ではなにが起こるかわからない。
絶対に失敗できない。
経験を買われて、みっこがセカンドシーンの、最初のモデルを務めることになっていた。
「さつきちゃん。リハどおり、あなたはみっこちゃんが次に着る服のセッティングを手伝って。わたしは髪をあたるから。
脱いだ服の整理は次に戻ってくるまででいいから、まずはこのヤマ場で時間内に送り出すことだけ考えて」
次の出し物に使うコサージュを握りしめた小池さんは、そう念押しして、みっこの戻りを待ち構えている。
ショーイングを終え、ステージの袖に戻ってきたみっこは、観客向けのにこやかな表情から、いきなり真剣な眼差しに変わった。
『来た!』
つづく
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