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18 Rip Stick ~before side
Rip Stick 15
ステージはみっこの独壇場。
つい今までのバックステージでの修羅場を、微塵も感じさせない。
春の女神のように明るく微笑みながら、アップテンポの曲に合わせて軽やかなウォーキングで、クルリクルリと小気味いいターンを重ねていく。
ウエストがきゅっと絞られた春色のサーキュラースカートが、みっこがターンするたびに、ふわりふわりと舞い上がり、花びらのようなシルエットを描いていく。
セットの途中だったヘアも、みっこは上手く纏めてふんわり感を出し、それが自然で、春のイメージにすごく似合っている。
ランウェイを春風のようにふわふわとウォーキングしながら、センターステージで踊るようにターンを繰り返し、客席にウィンクして投げキッスをしてみたり。
どれも、打ち合わせにないアドリブ。
なのに、とてもそうは見えない素敵なショーイングで、みっこはひとりで観客を魅了していた。
「ゴメン。緊張してアガっちゃって… お客さんが満員のステージって、リハーサルとは全然違うんだもん。わたしもう、ダメ」
振りを間違えたモデルが、ボロボロと涙をこぼし、顔を歪めてベソをかきながらすれ違った。
チームのメンバーが、彼女の肩をたたいて、慰めている。
「はぁっ。まったく、すごい子ね」
泣いているモデルを一瞥した小池さんは、ステージの袖から客席のみっこを見つめると、呆れたようにため息をついた。
「着替えがたったの40秒か。さすがね~」
「根本的な着替え方が違うよね。
他のモデルって、はだか見られるの恥ずかしがったりして、脱ぐのが遅いじゃない。その点森田さんは、あっぱれなくらいスパッと脱いでくれちゃって、やっぱりプロモデルは意識が違うわ」
他の4年生が小池さんのとなりにやってきて、みっこを褒めた。
最大の修羅場をなんとか乗り切ってしまえば、あとのフィッティングは、ずっと楽だった。
小池さんの指示も的確で、衣装やアクセサリーもよく整理されていて、戸惑うこともない。
みっこも自分でサクサクと着替えをしてくれるので、気持ち的にも余裕ができ、みっこがステージに出てしまえば、袖の隙間からその様子をゆっくり眺めることもできた。
みっこが着る衣装は、全部で9着。
去年のファッションショーに出さなかった分を挽回するかのように、参加チームのコレクションのなかではいちばん多かった。
今年の小池さんのファッションテーマは、『ゴシック』。
女の子ならだれでも憧れる、中世のお姫様のようなアイテムをアレンジして、いろいろ盛り込んでみたらしい。
最近は『MILK』や『Jane Marple』といった、『ロリータファッション』と呼ばれるトレンドが注目されはじめてきたらしいけど、小池さんはそれに、バッスルスタイルやレースアップ、コルセットやクリノリンといった、中世の衣装の要素を取り入れてアレンジし、ドレスによってはクリベージ(胸の谷間)を強調して、女っぽさを出したりもしている。
色彩も、オープニングに着た漆黒のドレスから、ビビッドなプリント模様やパステルカラーと、とっても多彩。
ドレスは一点一点、ラインも丈もシルエットも違っているものの、『ゴシック』をテーマにして統一感を出している。
『ロリータ』っていうと女の子っぽい甘いイメージだけど、あまり幼くなりすぎず、中世独特の品格と、形式美のような優美さを醸しだしていて、それぞれ素敵なデザイン。
そしてみっこはひとつひとつのドレスを、それにいちばんふさわしいポーズをつけ、服のシルエットを見せながら、表現していく。
わたしみたいな素人が見たって、その表現力は、他のモデルとは差が歴然としていた。
つづく
つい今までのバックステージでの修羅場を、微塵も感じさせない。
春の女神のように明るく微笑みながら、アップテンポの曲に合わせて軽やかなウォーキングで、クルリクルリと小気味いいターンを重ねていく。
ウエストがきゅっと絞られた春色のサーキュラースカートが、みっこがターンするたびに、ふわりふわりと舞い上がり、花びらのようなシルエットを描いていく。
セットの途中だったヘアも、みっこは上手く纏めてふんわり感を出し、それが自然で、春のイメージにすごく似合っている。
ランウェイを春風のようにふわふわとウォーキングしながら、センターステージで踊るようにターンを繰り返し、客席にウィンクして投げキッスをしてみたり。
どれも、打ち合わせにないアドリブ。
なのに、とてもそうは見えない素敵なショーイングで、みっこはひとりで観客を魅了していた。
「ゴメン。緊張してアガっちゃって… お客さんが満員のステージって、リハーサルとは全然違うんだもん。わたしもう、ダメ」
振りを間違えたモデルが、ボロボロと涙をこぼし、顔を歪めてベソをかきながらすれ違った。
チームのメンバーが、彼女の肩をたたいて、慰めている。
「はぁっ。まったく、すごい子ね」
泣いているモデルを一瞥した小池さんは、ステージの袖から客席のみっこを見つめると、呆れたようにため息をついた。
「着替えがたったの40秒か。さすがね~」
「根本的な着替え方が違うよね。
他のモデルって、はだか見られるの恥ずかしがったりして、脱ぐのが遅いじゃない。その点森田さんは、あっぱれなくらいスパッと脱いでくれちゃって、やっぱりプロモデルは意識が違うわ」
他の4年生が小池さんのとなりにやってきて、みっこを褒めた。
最大の修羅場をなんとか乗り切ってしまえば、あとのフィッティングは、ずっと楽だった。
小池さんの指示も的確で、衣装やアクセサリーもよく整理されていて、戸惑うこともない。
みっこも自分でサクサクと着替えをしてくれるので、気持ち的にも余裕ができ、みっこがステージに出てしまえば、袖の隙間からその様子をゆっくり眺めることもできた。
みっこが着る衣装は、全部で9着。
去年のファッションショーに出さなかった分を挽回するかのように、参加チームのコレクションのなかではいちばん多かった。
今年の小池さんのファッションテーマは、『ゴシック』。
女の子ならだれでも憧れる、中世のお姫様のようなアイテムをアレンジして、いろいろ盛り込んでみたらしい。
最近は『MILK』や『Jane Marple』といった、『ロリータファッション』と呼ばれるトレンドが注目されはじめてきたらしいけど、小池さんはそれに、バッスルスタイルやレースアップ、コルセットやクリノリンといった、中世の衣装の要素を取り入れてアレンジし、ドレスによってはクリベージ(胸の谷間)を強調して、女っぽさを出したりもしている。
色彩も、オープニングに着た漆黒のドレスから、ビビッドなプリント模様やパステルカラーと、とっても多彩。
ドレスは一点一点、ラインも丈もシルエットも違っているものの、『ゴシック』をテーマにして統一感を出している。
『ロリータ』っていうと女の子っぽい甘いイメージだけど、あまり幼くなりすぎず、中世独特の品格と、形式美のような優美さを醸しだしていて、それぞれ素敵なデザイン。
そしてみっこはひとつひとつのドレスを、それにいちばんふさわしいポーズをつけ、服のシルエットを見せながら、表現していく。
わたしみたいな素人が見たって、その表現力は、他のモデルとは差が歴然としていた。
つづく
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