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18 Rip Stick ~before side
Rip Stick 16
『西蘭女子大のミスコンがわり』というだけあって、このファッションショーに起用されているモデルはみんな、みっこに負けず劣らずの美人ぞろい。華もあってスタイルもよく、ほとんどの子がみっこより身長も高いんだけど、『ファッションモデル』という点から見れば、みっこに敵う女の子はいなかった。
ぎこちない足どりや、背筋を曲げて歩くだけで、いきなり服は死んでしまう。
モデルの自己主張が強すぎても、服は主役になれずに、かすんでしまう。
だけどみっこは、服を主役に引き立てて自由に舞い踊らせ、からだに鮮やかにからみつかせ、見る人の目に、印象的な残像を残していく。
小池さんは、それをただ、黙って見つめていた。
そうじゃない…
感動で、言葉が出なかったのかもしれない。
光り輝いたステージも、やがてフィナーレ。
みっこは、オフホワイトのサテン地に、生成りのレースをふんだんに使って、白のグラデーションを描いたウェディングドレス姿で登場した。
背中のレースアップとプリンセスラインが、可愛らしさのなかに女性の色香を醸しだしている。
長い豪華なトレーンを引きずりながら、みっこは清楚な足どりで、センターステージへ向かって、ゆっくりと歩いていく。
満面の笑みに、興奮を抑えるように紅潮した頬は、まるで本物の花嫁のよう。
センターステージの中央で、静かに腰をかがめて会釈したみっこは、フィナーレを飾るかのように、大きく腕を広げて観客の拍手に応え、持っていた真っ白なブーケを、客席に投げた。
『わっ』と、歓声が沸き起こる。
「…やっぱり、みっこちゃんに着てもらえて、よかった」
ずっと黙ったまま、目を凝らして、みっこのウェディングドレス姿を見守っていた小池さんは、ぽつりとつぶやいた。
きらびやかなステージを見つめる瞳には、涙がたまっている。
日頃はクールで、テキパキ仕事をこなす小池さんだったから、それは意外な光景だった。
「わたしの服が、こんな風に揺れたらいいな、広がったらいいな、って思ってたとおりに、みっこちゃんはわたしの服を魅せてくれた。
ううん。そうじゃない。
みっこちゃんは、わたしの服に、命を与えてくれた。
ほんとに嬉しい。
こんな嬉しいことって、ない!」
小池さんはそう言って、ハンカチで瞳を押さえた。
ああ…
この人は、こんなに服を作るのが、好きなんだ。
なんだかわたしまで、感動してきちゃう。
去年の学園祭でのみっこの言葉を思い出して、わたしは小池さんに告げた。
「みっこは言ってたんですよ。
『一着一着に作ってくれた人の愛情とか情熱を感じるし、それを着こなすことに、誇りと満足感みたいなものも感じる』、って」
小池さんは黙ってうなずきながら、またハンカチで瞳を拭った。
あのときのみっこの言葉の意味が、ようやくわかった気がして、なんだか胸が熱くなってきた。
『魂がシンクロする』っていうのかな?
デザイナーの小池さんの思いを、みっこがすべて受け止めて表現できたとき、ひとつの『奇跡』が生まれるのかもしれない。
エンディングのテーマ曲がクライマックスを迎え、興奮のさめない様子で、モデル全員がステージに並ぶ。
衣装を作ったチームのスタッフも、全員ステージにあがり、観客席に向かって笑顔で手を振る。
会場の万雷の拍手のなか、ライトがさらに輝きを増し、それぞれのチームのスタッフとモデルを紹介するアナウンスが流れ、紹介されたチームが中央に進んで会釈をしていき、観客は拍手を贈る。
『Misty Pink』はそのなかでも、ひときわ大きな拍手をもらい、小池さんはそれに応えるように、力いっぱい観客席に手を振った。
そしてフィナーレ。
全員が客席に、ちぎれんばかりに手を振るなか、ライトがゆっくりと落ちていき、ステージは漆黒の世界へ戻っていった。
つづく
ぎこちない足どりや、背筋を曲げて歩くだけで、いきなり服は死んでしまう。
モデルの自己主張が強すぎても、服は主役になれずに、かすんでしまう。
だけどみっこは、服を主役に引き立てて自由に舞い踊らせ、からだに鮮やかにからみつかせ、見る人の目に、印象的な残像を残していく。
小池さんは、それをただ、黙って見つめていた。
そうじゃない…
感動で、言葉が出なかったのかもしれない。
光り輝いたステージも、やがてフィナーレ。
みっこは、オフホワイトのサテン地に、生成りのレースをふんだんに使って、白のグラデーションを描いたウェディングドレス姿で登場した。
背中のレースアップとプリンセスラインが、可愛らしさのなかに女性の色香を醸しだしている。
長い豪華なトレーンを引きずりながら、みっこは清楚な足どりで、センターステージへ向かって、ゆっくりと歩いていく。
満面の笑みに、興奮を抑えるように紅潮した頬は、まるで本物の花嫁のよう。
センターステージの中央で、静かに腰をかがめて会釈したみっこは、フィナーレを飾るかのように、大きく腕を広げて観客の拍手に応え、持っていた真っ白なブーケを、客席に投げた。
『わっ』と、歓声が沸き起こる。
「…やっぱり、みっこちゃんに着てもらえて、よかった」
ずっと黙ったまま、目を凝らして、みっこのウェディングドレス姿を見守っていた小池さんは、ぽつりとつぶやいた。
きらびやかなステージを見つめる瞳には、涙がたまっている。
日頃はクールで、テキパキ仕事をこなす小池さんだったから、それは意外な光景だった。
「わたしの服が、こんな風に揺れたらいいな、広がったらいいな、って思ってたとおりに、みっこちゃんはわたしの服を魅せてくれた。
ううん。そうじゃない。
みっこちゃんは、わたしの服に、命を与えてくれた。
ほんとに嬉しい。
こんな嬉しいことって、ない!」
小池さんはそう言って、ハンカチで瞳を押さえた。
ああ…
この人は、こんなに服を作るのが、好きなんだ。
なんだかわたしまで、感動してきちゃう。
去年の学園祭でのみっこの言葉を思い出して、わたしは小池さんに告げた。
「みっこは言ってたんですよ。
『一着一着に作ってくれた人の愛情とか情熱を感じるし、それを着こなすことに、誇りと満足感みたいなものも感じる』、って」
小池さんは黙ってうなずきながら、またハンカチで瞳を拭った。
あのときのみっこの言葉の意味が、ようやくわかった気がして、なんだか胸が熱くなってきた。
『魂がシンクロする』っていうのかな?
デザイナーの小池さんの思いを、みっこがすべて受け止めて表現できたとき、ひとつの『奇跡』が生まれるのかもしれない。
エンディングのテーマ曲がクライマックスを迎え、興奮のさめない様子で、モデル全員がステージに並ぶ。
衣装を作ったチームのスタッフも、全員ステージにあがり、観客席に向かって笑顔で手を振る。
会場の万雷の拍手のなか、ライトがさらに輝きを増し、それぞれのチームのスタッフとモデルを紹介するアナウンスが流れ、紹介されたチームが中央に進んで会釈をしていき、観客は拍手を贈る。
『Misty Pink』はそのなかでも、ひときわ大きな拍手をもらい、小池さんはそれに応えるように、力いっぱい観客席に手を振った。
そしてフィナーレ。
全員が客席に、ちぎれんばかりに手を振るなか、ライトがゆっくりと落ちていき、ステージは漆黒の世界へ戻っていった。
つづく
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