Campus91

茉莉 佳

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18 Rip Stick ~before side

Rip Stick 19

「そういえば、みっこちゃんは?」
藤村さんがわたしに訊いた。
「今お化粧直ししてます。もう少しかかるそうです」
「そうか。みんなで食事でもと思ったけど、どうかなぁ?」
「9時からショーの打ち上げパーティがあるんですけど… みなさんもいかがですか?」
「そうねぇ。わたしたちは部外者だから、遠慮しとくわ」
「そうだな。こんなおじさんが行くより、若い女の子だけででワイワイやった方がいいだろ」
わたしの誘いを、藤村さんと星川先生は遠慮する。川島君はわたしに訊いた。
「さつきちゃんもみっこと、打ち上げに行くのかい?」
「ええ。せっかくだから行こうと思ってるんだけど…」
「いいよ。せっかく藤村さんや星野さんが東京から来てくれたし、ぼくは先生たちと食べに行くから」
「ごめん、川島君」
「いいよ。今日は楽しかったし」
「ほんとに?」
「ああ。さつきちゃんとは昼間、いろいろ回れたからな」
「そうね。わたしも楽しかった」
「…あのさ。打ち上げのあとでいいから、ちょっと会えないかな?」
少しの間があって、川島君が切り出した。
「あと、さつきちゃんにも、話しておきたいこともあるし」
「なにを?」
「そのときにゆっくり話すよ」
「なんか怖いけど…」
「大丈夫だよ。悪い話じゃないんだから」
「そう?」
「心配しなくても、さつきちゃんのことは、これからもずっと、大事にするよ」
「…ん。 嬉しい」
彼の言葉に、わたしは素直にうなずいた。

川島君の話が、たとえわたしたちの恋愛に距離を生むようなことでも、それが彼の選んだ道なら、わたしもそれを受け入れてあげたい。祝福してあげたい。
川島君には人を感動させられる仕事をしてほしいし、それができるだけの力を、彼は持っているし、回りの人たちから認めてもらっている。
わたしの小さなわがままで、そんな彼の可能性を潰したくはない。

ひとつのステージが、頑なだったわたしの気持ちを、開かせてくれた。
今までのわだかまりが、さっきのファッションショーの感動の余韻のなかで、まるで春の淡雪のように消えていくみたいだった。
やっと抜け出せそう。
そう思って、わたしはようやく、心に日が射してくるような気持ちになった。


「まっびぃ~!」
「あの女、すっげ~エロいじゃん。あんなのとヤリてぇよな~」
「『ガーターベルト』っていうんやろ? ふともものあの紐はそそるよな。パンちらも生だったしな」
「あれ、やっぱりノーブラだったろ? ビーチク透けて見えてたぜ。オレ興奮したぜ」
「西蘭のミスコンがわりだっていうから来てみたけど、あの女最高だったよな」

そのときわたしのうしろの方で、ふたりの男が興奮しながら話しているのに、気がついた。
なんだか聞き覚えのある声。
何気なく振り向き、ハッとして目をそらすと、わたしはあわてて川島君の陰に隠れるようにした。

「さつきちゃん。どうしたんだ?」
わたしの突然の行動に、川島君が不審がる。
わたしは小さく叫んだ。
「去年の夏の、ナンパの人たちっ!」

そうだ!
去年の夏、わたしがはじめてみっこと海に遊びに行ったとき、みっこをナンパしてきて、逆に手玉に取られ、さんざん奢らされたあげく最後は夜の海で醜態さらけ出した、『サングラス』と『はにわ』だ。
わたしにはまったく気づかない様子で、ふたりは話を続けた。
「だけどあのモデル。もしかして去年オレたちのこと、騙してバカにしやがった女じゃないのか?」
「おまえもそう思った? オレも『なんか見たことある女やな』って思ってたんよ」
「だろ?!」

うそっ。
この人たち… みっこのこと、覚えてたんだ!

「こんなところにいたとか、ビックリだい!」
「くっそ~っ。あの女のせいでオレのクルマ、あのあと戻ってみたらムチャクチャにされてたんだよな~。カーコンポも盗られるしさ」
「2万円もするメシも、おごらされたよな」
「おまけにもう一歩のところで逃げやがってよ。思い出しただけでも腹が立つゼ!」
「なんとかしてーな」
「なんとかしたいゼ」
「ヤッちゃるか?」
「そうだな!」
「こっちが楽屋か!」

『サングラス』と『はにわ』は語気を荒げながら、足早に楽屋へ続く通用口へ入っていった。

つづく
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