241 / 300
18 Rip Stick ~before side
Rip Stick 20
「大変っ!」
ふたりの姿が重い楽屋口のドアの向こうに消えるのを見届けたわたしは、大慌てで川島君に叫んだ。
「どうしたんだい? さつきちゃん」
藤村さんが訝しげに訊く。
「『去年の夏のナンパの人たち』って、さつきちゃんが前に話してくれた、ナンパ兄ちゃんのことか? みっこにさんざんな目にあわされたっていう」
ピンときた様子で、川島君が言った。
「そう! そのときの人たち。今、みっこのことを『ヤッてやる』なんて言って、楽屋の方へ行った!」
「そりゃ大変だ。早くみっこを捕まえないと」
川島君も驚いた。
「『ヤッてやる』なんて、物騒な言葉ね」
「なんだかわからないけど、とにかくみっこちゃんと早く合流した方が、いいみたいだな」
「藤村さん。お願いしますっ。楽屋にいるはずですから」
わたしたちが楽屋に向かいかけたとき、ナオミとミキちゃんがやってきた。
「あ~。さつきちゃ~ん。なんかいい男たちに囲まれてるぅ~」
「あっ、ナオミ。みっこ見なかった?」
早口でナオミに尋ねる。
「ううん」
「楽屋の方、だれかいた?」
「今から行くんだけど…」
「ナオミ、いっしょにみっこ捜すの、手伝って!」
「うん。いいけどぉ…」
「わたしも手伝います」
状況の見えていないナオミとミキちゃんにも加わってもらい、わたしたちはとりあえず、楽屋に急いだ。
楽屋にはだれもいなかった。
冷たい蛍光灯の灯った無機質なコンクリートの部屋は、シンと静まり返っていて、みっこはおろか、人の気配もなかった。
「あっ。あの花束」
ナオミがそう言って、小部屋が並ぶ通路の奥に走っていく。
見ると通路の非常口の前には、真紅の大きな薔薇の花束が落ちていて、まわりに花びらが散らばっている。そこには踏みつけられたような痕があった。
これは…
みっこが藍沢氏からもらった花束!
それがこんな所に落ちているなんて…
なんだかイヤな予感がする。
「もしかして外かもしれない。ぼくは外の方を捜してみるよ」
川島君はそう言って、非常口を飛び出す。
「じゃあぼくも、外を捜してみよう」
藤村さんも外に出て、川島君と反対の方向へ小走りに駆けていく。
「わたしはトイレとか見てくる!」
「さつきちゃん。あたしも行く!」
「わたしも手伝います」
わたしが駆け出すと、ナオミとミキちゃんもいっしょについてきた。
「じゃあ、わたしはみっこが来たときのために、ロビーで待ってるわね!」
星川先生は、みっこを捜しに出たわたしたちに叫んだ。
楽屋やホールのトイレをくまなく捜し、だれもいないことを確認して、わたしたちはとりあえずロビーの星川先生の所に戻り、そこでみっこや他の人たちを待った。
いつまで待っても、みっこは来ない。
あれからもう、10分以上が過ぎている。
「どうしよう、星川先生」
わたしは不安と緊張で語尾を震わせながら、すがるように星川先生を見上げた。
どうしてこんなことになってしまったの?
せっかくファッションショーもうまくいって、久し振りにみっこや川島君との一体感も感じて、わたしの気持ちもようやく落ち着いてきたっていうのに。
つづく
ふたりの姿が重い楽屋口のドアの向こうに消えるのを見届けたわたしは、大慌てで川島君に叫んだ。
「どうしたんだい? さつきちゃん」
藤村さんが訝しげに訊く。
「『去年の夏のナンパの人たち』って、さつきちゃんが前に話してくれた、ナンパ兄ちゃんのことか? みっこにさんざんな目にあわされたっていう」
ピンときた様子で、川島君が言った。
「そう! そのときの人たち。今、みっこのことを『ヤッてやる』なんて言って、楽屋の方へ行った!」
「そりゃ大変だ。早くみっこを捕まえないと」
川島君も驚いた。
「『ヤッてやる』なんて、物騒な言葉ね」
「なんだかわからないけど、とにかくみっこちゃんと早く合流した方が、いいみたいだな」
「藤村さん。お願いしますっ。楽屋にいるはずですから」
わたしたちが楽屋に向かいかけたとき、ナオミとミキちゃんがやってきた。
「あ~。さつきちゃ~ん。なんかいい男たちに囲まれてるぅ~」
「あっ、ナオミ。みっこ見なかった?」
早口でナオミに尋ねる。
「ううん」
「楽屋の方、だれかいた?」
「今から行くんだけど…」
「ナオミ、いっしょにみっこ捜すの、手伝って!」
「うん。いいけどぉ…」
「わたしも手伝います」
状況の見えていないナオミとミキちゃんにも加わってもらい、わたしたちはとりあえず、楽屋に急いだ。
楽屋にはだれもいなかった。
冷たい蛍光灯の灯った無機質なコンクリートの部屋は、シンと静まり返っていて、みっこはおろか、人の気配もなかった。
「あっ。あの花束」
ナオミがそう言って、小部屋が並ぶ通路の奥に走っていく。
見ると通路の非常口の前には、真紅の大きな薔薇の花束が落ちていて、まわりに花びらが散らばっている。そこには踏みつけられたような痕があった。
これは…
みっこが藍沢氏からもらった花束!
それがこんな所に落ちているなんて…
なんだかイヤな予感がする。
「もしかして外かもしれない。ぼくは外の方を捜してみるよ」
川島君はそう言って、非常口を飛び出す。
「じゃあぼくも、外を捜してみよう」
藤村さんも外に出て、川島君と反対の方向へ小走りに駆けていく。
「わたしはトイレとか見てくる!」
「さつきちゃん。あたしも行く!」
「わたしも手伝います」
わたしが駆け出すと、ナオミとミキちゃんもいっしょについてきた。
「じゃあ、わたしはみっこが来たときのために、ロビーで待ってるわね!」
星川先生は、みっこを捜しに出たわたしたちに叫んだ。
楽屋やホールのトイレをくまなく捜し、だれもいないことを確認して、わたしたちはとりあえずロビーの星川先生の所に戻り、そこでみっこや他の人たちを待った。
いつまで待っても、みっこは来ない。
あれからもう、10分以上が過ぎている。
「どうしよう、星川先生」
わたしは不安と緊張で語尾を震わせながら、すがるように星川先生を見上げた。
どうしてこんなことになってしまったの?
せっかくファッションショーもうまくいって、久し振りにみっこや川島君との一体感も感じて、わたしの気持ちもようやく落ち着いてきたっていうのに。
つづく
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。