Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
250 / 300
18 Rip Stick ~After side

Rip Stick 29

「わたしが『星川先生の所で働くの?』って訊いたとき、川島君、『そんなことじゃない』って答えたじゃない! また嘘ばっかり!」
「ごめん。あれは… あのとき、さつきちゃんとまた、揉めそうだったから…」
「だから嘘つくわけ? 誤魔化したってすぐバレるのに!」
「さつきちゃんとは夏休みの前にも、東京に行く行かないで、さんざんケンカしただろ。そんなことで言いあうのは、ぼくはもう、イヤなんだよ」
「イヤなら嘘ついてもいいの? みっこのことも嘘ばっかり! 嘘に嘘を重ねられて。なにも知らないわたしがバカみたい!」
「そんな… やっぱり、今話すことじゃなかったな。ぼくだって迷ってるんだ。さつきちゃんを置いて、東京には行けないし…」
「いいわよ! 川島君は東京でもどこでも行けば。そしてなりたかったカメラマンになって、みっこを恋人にして写真でも撮ってればいいわよ。長崎でやってたみたいにっ!」
「さつきちゃん…」
「もういいっ。ふたりしてわたしのこと騙して。もう、いやっ!」

最後はもう、涙声だった。
もう、どうでもいい!
川島君が東京に行きたいのなら、行けばいいし、わたしと別れてみっことつきあいたいのなら、そうすればいい。

そりゃわたし、今でも川島君のことは好き。
だれよりも。

そう…
森田美湖よりも。

川島君とは、やっぱり別れたくない。
だれに渡すのも、イヤ。
たとえそれが、みっこでも。

だけどもう、耐えられない。
わたしの気持ちはこの人を求めてるけど、別の自分が、激しく拒んでる。
川島祐二といっしょにいることを、激しく嫌悪している。

みっこを呼ぶ声で話しかけられたくない。
みっこを見る目で見つめられたくない。
みっこを触れた唇で触れられたくない。
みっこを抱いた腕で抱かれたくない。

とにかく、今はいっしょにいたくない!

「クルマ、止めて。わたしここで降りる!」
「さつきちゃん」
「降ろして!」
「今ここで降りるってことは、ぼくたちが別れるってことだよ」
「いいじゃない。川島君はわたしと別れたいんだから」
「ぼくはそんなこと、言ってない」
「いっしょよ。東京に行くんでしょ」
「もうちょっと、落ち着いて話そう」
「イヤ! わたしもう、川島君のことなんか、どうでもいい」
「さつきちゃん」
「大ッキライよ! 川島君も! みっこも!」
「…」
「もう、別れましょ!」
「…」
「川島君とつきあった1年なんて、無駄だった。意味がなかった! 時間を戻して!」
「…」

その言葉に川島祐二はなにも言わず、どんなことがあっても今まで見せたことがなかった、諦めたような、冷めた表情でわたしを見て、プイと視線をはずし、言い放った。
「そうだな。みっこはいいよ。美人だし、理性的だし、ヒステリーなんか起こさない。さつきちゃんももうちょっと、みっこのこと、見習ったら?」
「早くクルマ止めてっ! 降りるっ!!」

森田美湖なんかと較べないで!
それが本心なのね?
やっぱり川島君は、わたしよりみっこの方がいいんだ!

『みっこのこと、見習ったら?』

それは、最後のひと言だった。
川島君はそれっきりなにも言わず、クルマを舗道に寄せて、スピードを落とした。

え?
本当にわたし、降ろされるの?
自分でそう言ったくせに、本当にそうなるのは、イヤ!
だけど『やっぱり降りない』なんて、今さら言えない。
もう、さいは振られたんだ。
口に出した言葉は、取り戻せない。
こぼれた水は、元に戻らない。


川島君がクルマを止めるとすぐ、わたしは黙って『フェスティバ』のドアを開けた。
彼の方も見ずに、うしろ手でバタンとドアを閉め、わたしはそのまま歩いていく。

『行くな。さつきちゃん』

わたしの背中で、そう呼び止める彼の言葉を、期待しながら…

つづく
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

Emerald

藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。 叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。 自分にとっては完全に新しい場所。 しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。 仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。 〜main cast〜 結城美咲(Yuki Misaki) 黒瀬 悠(Kurose Haruka) ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。 ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
追放された『貸与者』は、不条理な世界を監査(清算)する 「お前のようなゴミはいらない」 勇者パーティの荷物持ちソラは、魔王討伐を目前に非情な追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 彼らの力はすべて、ソラの規格外のステータスを『借りていた』だけの虚飾に過ぎないことを。 「……わかった。貸していた力(資産)、すべて返還(清算)してもらうよ」 契約解除。勇者たちは凡人へと転落し、ソラはレベル9999の万能感を取り戻す。 しかし、彼が選んだのは復讐ではない。 世界に蔓延る「不条理な負債」を暴き、正当な価値を再定義する『監査官』としての道だった。 才能なしと虐げられた少女ミィナを助け、ソラは冷徹に告げる。 「君の絶望は、私が買い取った。利息として……君を最強にしてあげよう」 「因果の空売り」「魂の差し押さえ」「運命の強制監査」 これは、最強の『貸与者』が、嘘まみれの英雄や腐敗した領地を、帳簿の上から「ざまぁ」する物語。