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茉莉 佳

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19 12月のダイアリー

12月のダイアリー 11月8日

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11月8日(金) 雨

今日は小説講座の日。
だけどわたしは出席しなかった。

ううん。
『できなかった』って言う方が正しい。

みっこにもそうだけど、今の状態でわたしは、川島君には会えそうもない。
わたしは川島君が好きだった。
それは過去形なんかじゃなく、現在進行形。
いろいろあったけど、やっぱりわたしは川島君が好き。
だけどもう別れてしまった今、この恋にも自分で終止符を打たなきゃいけない。

終止符…

なんて悲しい言葉。

そう言えば去年だったかな?
みっこが言ってた。
『たとえ、その時ピリオド打ったつもりでも、続きはあるかもしれない。それがどんなに『奇跡』に近くっても…』
って。
今のわたしと川島君に、そんな『続き』なんて、あるのかな?


そう言ってわたしを慰めてくれたみっこは、川島君を好きになった。
川島君にしても、みっこに好意を持っているから、彼女から『好き』だと言われれば、ふたりがつきあっても不思議じゃない。
わたしに気兼ねしてとか、思ったけど、あんなひどい別れ方をして、川島君がわたしのこと、許してくれる筈もない。

クルマから降りるときにわたしに向けられた、あの、とっても冷めた表情と、見下したような視線。
そして、『みっこのこと、見習ったら?』という、突き放したような言葉。
今でも鮮やかに思い出す。
思い出しては、いたたまれない気持ちになる。

わたしを降ろしたあと、川島君は荒っぽくクルマを運転して、視界から消えた。
あんな激しい運転をする彼を、今まで見たことがない。
日頃は冷静な川島君をそうしてしまうほどに、わたしへの怒りは大きかったんだと思う。
もう、わたしがどんなに彼のことを想っても、『続き』は奇跡が起きる以上に、ありえないことかもしれない。

わたしが川島君なら、もう、みっことつきあうな。
モデルに選ぶくらいだから、川島君にとってみっこはわたしより、女としてはるかに魅力的だろうし、人間的にも素敵だし、わたしよりウィットに富んでいて面白みもあるし。
こんな平凡でなんの取り柄もなく、おもしろくもないわたしに、無理してつきあうことはない。
みっことつきあえることになってよかった、って、思うだろう。

そう考えて、わたしは彼への想いを、すっぱりきっぱり断ち切るしかない。

つづく
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