Campus91

茉莉 佳

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20 Lucky Lips

Lucky Lips 7

「そんな…」
「『適当な言い訳して』って、さつきは思うかもしれない。
だけど、そう考えないと、あたしは自分の気持ちに区切りをつけられないの」
「…」
「確かにあたし、いい子ぶってるかもしれない。
嘘つきかもしれない。
『独占欲がない』なんて言っておいて、川島君に会えないと辛いなんて、矛盾してる。
そうやってあの頃のあたしは、いろんな矛盾と葛藤でいっぱいだった。
親友の彼氏に横恋慕するなんて、最後はどうなるか、わかり切ったことかもしれない。
いつかそんな、終わりの日が来るかもしれないって思ってて、あたしはいつも、怯えてた。
そしてやっぱり、あたしには天罰が下ったわ。
あの事件は、あなたに嘘をつき、騙してまで、川島君への想いを隠し続けた、あたしへの罰だったのかもしれない」
「そんな。罰だなんて…」
「ううん。そう思っていた方が、逆に気が楽なの。だけど、そのとばっちりで、あなたたちが別れることになっちゃったのが、あたしはいちばん悲しい。
そのことで、あなたからどんなひどいこと言われても、仕方ないって思ってるし、どんなことをしてでも、あなたには償いたい」
「償う?」
みっこがなにをしたいのか、わからない。わたしはみっこの瞳を、訝しげに覗き込んだ。
彼女はまばたきもしないまま、わたしの瞳をまっすぐ見つめて、そして訊いた。

「さつきは今でも、川島君のこと、好きなんでしょう?」
「…」
わたしの心のなかに、ストレートに飛び込んでくる言葉だった。

そう。
わたしは今でも、川島君のことが、好き。
別れてしまって、連絡が途絶えてしまって、わたしは痛いくらい、それがよくわかった。
川島君が、そしてみっこが、わたしのなかで、どれだけ大きな部分を占めていたかってことが。

「去年、みっこは藍沢さんのことで、ずいぶん辛い思いをしてたでしょ」
今度はわたしの方から話しはじめた。
当時を思い出すように瞳を閉じ、みっこは黙ってうなずく。
「みっこと藍沢さんって、お互い嫌いあっていた訳じゃなかった。だけど、『Moulin Rouge』で二人が再会しても、元には戻れなかった。
一度別れた恋人が、以前と同じ気持ちで、またつきあえるようになるなんて、できないのかもしれない。
それに、川島君は来年の春、東京に行っちゃう。
そうしたらもう、再会もないわ」
「あたし、いつか言ったでしょ。『恋愛に最終ページはない』って」
「奇跡の再会があるってこと?」
「心を開いて、それを望めば、いつかは再会できて、願いもかなうと思う」
「…」
「そしてあたしは、そのお手伝いがしたい」
みっこはそう言って、腕時計を見た。
11時30分。
彼女は確認するかのようにうなうずいて、おもむろに立ち上がると、わたしの手をとって言う。
「行きましょう」
「え? どこへ?」
「インフォメーション」

みっこはそう答えながら、空港のインフォメーションに、わたしを引っ張っていった。


 空港ビルの中央にあるインフォメーションセンターのあたりは、いろんな格好の人々でにぎわっていた。
ビジネスマンや旅行者。搭乗手続きをしている人や、到着ゲートの前で、恋人の到着を待ち焦がれているような若い女性。手を握りあって別れを惜しむ光景なんかが、あちこちで見られる。
みっこは右手でスーツケースを転がしながら、もう片方の手でわたしの手を引き、そんな雑踏の間をすり抜けていく。

「ここから先は、さつきひとりで行って。あたしはここで見てるから」
みっこはインフォメーションセンターから少し離れたところで立ち止まると、そう言ってわたしの肩をポンと押した。
わけがわからず、二・三歩歩いて、わたしはみっこを振り返る。
彼女は立ち止まったまま、わたしを見つめてニッコリ微笑み、小さく手を振った。
その姿から、なにげなく視線をインフォメーションの方へ向けたわたしは、『あっ』と、叫びそうになった。

人垣のあいだから、男の人がこちらを見ている。
忘れられない顔。
川島君!

つづく
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