4 / 21
2日目
2日目
翌朝も、いつもと同じ一日がはじまった。
朝早くから夏の日差しが部屋を焦がし、気温が急上昇していく。
窓の外は抜ける様な青空で、その向こうには天まで届く程の巨大な入道雲。
俺はオーブントースターでピザトーストを焼きながら、テレビをつける。
いつもと変わらない政治の駆け引きと、どうでもいい様な芸能人のゴシップ。長引く不況と泥仕合の外交のニュース。
それを軽く聞き流しながら、パンをインスタントコーヒーといっしょに腹のなかに流し込み、ネクタイを首にかけて、ズボンプレッサーから出したばかりの、ホカホカのスーツのパンツに、脚を突っ込むという朝のルーチンを、機械的にこなしていく。
バス停にはいつもの顔ぶれ。
すだれオヤジに几帳面アラフォー、ブランドおばさん。美脚OL。
「おはよう。今日も暑いなぁ~」
「おはようございます、葛西さん。暑いですね」
会社に着いて、受付嬢の篠崎陽菜と交わす会話も、昨日と同じだ。
「よう葛西。おまえ来週からの盆休みはどうする?」
「ああ、まだ考えてないけど、ありさの実家に行かないといけないかも。おまえはどうするんだ?」
「嫁に催促されてぶどう狩りにでも行こうと思うけど、実家に聞いてくれたか?」
「あ、いや。今度聞いとくよ。すまん」
「別にいいって。ヒマな時にでも頼むな」
オフィスに入るといつもの様に、同僚の村井と他愛のない会話をし、午前中は資料作成、昼食をどこかの店で摂って、そのまま午後からは外回り。
焼けつく様な日差しの炎天下を、汗だくになって市内の得意先を回る。
そして、いつもと同じくらいの時間に、仕事を終えるのだ。
あまりにいつもと同じ過ぎて、こうして退社時間になっても、今日一日の出来事がなにも思い出せない。
俺はいったい、なにしてたっけ?
一日、ちゃんと仕事した筈なんだけど、終わってしまえばなんの印象も残っていない。
楽しい時間は過ぎるのが短く感じるが、思い出としていつまでも深く心に刻まれる。
つまらない時間は過ぎるのが長く感じ、過ぎてしまえば記憶にさえも残らない。
人間の脳なんてそんな風に、案外いい加減にできているのかもしれないな。
つづく
翌朝も、いつもと同じ一日がはじまった。
朝早くから夏の日差しが部屋を焦がし、気温が急上昇していく。
窓の外は抜ける様な青空で、その向こうには天まで届く程の巨大な入道雲。
俺はオーブントースターでピザトーストを焼きながら、テレビをつける。
いつもと変わらない政治の駆け引きと、どうでもいい様な芸能人のゴシップ。長引く不況と泥仕合の外交のニュース。
それを軽く聞き流しながら、パンをインスタントコーヒーといっしょに腹のなかに流し込み、ネクタイを首にかけて、ズボンプレッサーから出したばかりの、ホカホカのスーツのパンツに、脚を突っ込むという朝のルーチンを、機械的にこなしていく。
バス停にはいつもの顔ぶれ。
すだれオヤジに几帳面アラフォー、ブランドおばさん。美脚OL。
「おはよう。今日も暑いなぁ~」
「おはようございます、葛西さん。暑いですね」
会社に着いて、受付嬢の篠崎陽菜と交わす会話も、昨日と同じだ。
「よう葛西。おまえ来週からの盆休みはどうする?」
「ああ、まだ考えてないけど、ありさの実家に行かないといけないかも。おまえはどうするんだ?」
「嫁に催促されてぶどう狩りにでも行こうと思うけど、実家に聞いてくれたか?」
「あ、いや。今度聞いとくよ。すまん」
「別にいいって。ヒマな時にでも頼むな」
オフィスに入るといつもの様に、同僚の村井と他愛のない会話をし、午前中は資料作成、昼食をどこかの店で摂って、そのまま午後からは外回り。
焼けつく様な日差しの炎天下を、汗だくになって市内の得意先を回る。
そして、いつもと同じくらいの時間に、仕事を終えるのだ。
あまりにいつもと同じ過ぎて、こうして退社時間になっても、今日一日の出来事がなにも思い出せない。
俺はいったい、なにしてたっけ?
一日、ちゃんと仕事した筈なんだけど、終わってしまえばなんの印象も残っていない。
楽しい時間は過ぎるのが短く感じるが、思い出としていつまでも深く心に刻まれる。
つまらない時間は過ぎるのが長く感じ、過ぎてしまえば記憶にさえも残らない。
人間の脳なんてそんな風に、案外いい加減にできているのかもしれないな。
つづく
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?