ENDLESS SUMMER

茉莉 佳

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10日目

          10日目

 気がつけば、もう水曜日の夕方になっていた。
俺はテニスクラブへ向かうバスに乗っている。

どうしてだ?
また記憶がスリップしている。
月曜日から今までの事が思い出せない。
まあいいか。
どうせいつもの様に仕事仕事で、忙しい時間を過ごしていただけだろう。
人間、忙しすぎると、心が亡くなるもんだ。

 毎週水曜日の夜は、テニスクラブの練習日。
短い時間だが、ありさにも会える。
テニスコートに出た時、ありさは他の男性会員に囲まれて話をしていた。
顔もスタイルもよくてその上巨乳のくせに、そんな事を少しも鼻にかけずに素朴で純朴なありさは、男性会員に抜群の人気がある。
ありさが他の男どもと笑い合っている光景を目の当たりにするのは、一抹の不安があるが、彼女は俺以外の男には目もくれず、ファーストネームで俺を呼んでくれる。

「稜哉さん。秋のランキングが発表されたんだって。あなた9位らしいわよ。とうとうベストテンに入ったわね。今度のクラブ内トーナメントでもシードされるらしいわ。すごいわね~」

そう言ってありさは、他のどの男にも見せない親しげな微笑みを、俺だけに向ける。

ふふん。
優越感に浸れる一瞬だ。

その日、俺は練習メニューを完璧にこなし、ミニゲームでは格上の相手に快勝。
気分よくシャワーを浴び、アフターにクラブの親しい仲間と食事に行って、楽しい時間を過ごした。

「今日は暑かったし、部屋に寄って、うちでなにか冷たいものでも飲む?」

ありさをマンションまで送ると、彼女は甘えながら、意味深に俺を誘う。
部屋に上がるとすぐ、ありさを抱きしめ、キスをした。
ありさも俺を受け入れ、ふたりは激しく愛しあった。

「カボススカッシュよ。稜哉さんの実家は日田の方でしょ」

クールダウンした後、ありさは俺の田舎の名産品を使ったドリンクを作ってくれた。
そう言えば、カボススカッシュは以前も作ってくれた気がするけど… 気のせいかな?
だけど、彼女のこういう気配りは家庭的で、本当に心がやすらぐ。
そんな彼女といっしょにいると、俺は改めて『一生ありさを愛する』と、固く誓うのだ。


 またたく間に数日が過ぎ、日曜日。
俺は天神地下街のインフォメーションの前にいて、地下鉄の駅からありさが降りて来るのを待っていた。

「わたし、買い物に行きたいな。式の準備とか新居の準備とか、いろいろあるでしょ。今から少しずつ見ておきたいし」

そう言って、ありさは俺を買い物に付き合わせた。

あれ?
先週もこんな買い物しなかったか?

まあいいか。
俺の買い物は行く店を決めて、欲しいものだけを見て買う感じで、ウインドショッピングなんてあまりしないけど、女性にとって買い物ってのは、一種の趣味みたいなものだからな。
気の向くままブラブラ見て回る彼女のショッピングに付き合うのは、ちょっと面倒臭いんだけど、それでもありさが楽しいのなら、俺も我慢するさ。
それに、先週の買い物は下見っぽい感じだったから、今日こそはいろいろ買うんだろう。

天神付近の店をいろいろ回ったあと、俺達は博多駅ビルに移動して、月曜日に見つけたイタリアンレストランで、昼食をとる。
レストランは満員だったが、俺達は運よく、窓ぎわの一番眺めのいい席に座る事ができた。

「ほんと、美味しい! さすが稜哉さんの選んだお店ね」

料理をスマホで撮ったあと、ありさは満足そうに頬張る。
結局、今日もたいした買い物はせず、その後は彼女の部屋へ行って、昼間から愛しあった。

「今度、稜哉さんの実家に連れていってね」

ベッドの中で、はだかのまま俺に腕枕されながら、ありさはささやく。
ありさは『すみ酒』だの『結納』だのの話をする。
俺達は結婚するんだなぁと、ありさとの会話で実感する。
俺はありさを幸せにすると誓う。
ありさのウエディングドレス姿は、さぞ綺麗だろうな。
早く見てみたいもんだ…

つづく
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