あのこのためなら

真城詩

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あのこのためなら

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「やぁっ……やめ……先輩っ」
「ん?どうした?」
サッカー部室。陽はすでに落ちてあたりは薄暗い。先輩と呼ばれた男は自分の体の下の少年を見下ろし、口元をゆがめた。腰を動かし、刺激を与える。少年は吐息を零した。
「ふっ、あ、はぁっ……」
男は少年の体内の感触を楽しみながら声をかけた。
「おい、お前。お前いっつもボール磨いてるよな?俺の分もやっておいてくんね?」
少年は答えなかった。確かに彼はいつもボールを磨いている。だからと言って他人の、しかも今現在自分を犯している男のボールを磨くなんて要求は認められない。言葉が口を突いて出た。
「だれがあんたのボールなんか磨くかぁっ!」
対して男は喉を鳴らして笑った。
「随分と余裕だな。今流行りのツンデレか?だとしたら俺はツンの部分しか見ていないんだがなあ」
そういいながら突き上げる。細い少年の躰は、彼の意思とは関係なく跳ねた。
「いいか、よく聞けよ。今お前を支配しているのはこの俺だ。分かってるよな?これからお前を支配し続けるのも俺だ。俺がやれと言ったらやるんだよ。でないとこのこと、可愛いあの子にばらして、あの子をお前の代わりにするからな」
そう言って少年の首元に口づける。強く吸い付くと少年から、明らかに嬌声とわかる高い声が出た。
「おーおー、しっかり感じてくれちゃって。けっこうかわいいもんだなあ」
ついに泣き始めた少年から自身を引き抜くと扱き、体液を少年の腹にかけた。そのまま部室を出ていく。残された少年は涙をぬぐい、男の体液を拭くと立ち上がった。あの男には従わなければならない。それはよくわかっていた。たとえ一瞬でもあの男の言いなりになるなんて耐えられないが、男が”あの子”と言ったときにもう覚悟は決めていた。
男のいう”あの子”とはきっと自身の想っているあの少女のことだろう。あいつを守らなければ。そんな思いが胸を駆け巡った。

それから少年は毎日のように犯されていた。ボールがきれいに磨けていないと言っては犯し、反抗的な目をしていると言っては犯してくる。もう何をしても無駄のようだった。もっとも、さらにひどくされるのはごめんなので、ボールだけは磨き続けていたが。少年の目に”あの子”が映る。男に言われたことが頭をよぎった。あいつがあの男のことを好いているのは知っている。しかし男は”あの子”を少年を従わせるための道具としか思っていない。あいつをあの男に近づけてはいけない、そう少年は思う。彼は走る男をちらりと見た。さわやかな笑顔とともにボールを追いかけている。あの見た目と、サッカーの技術に女は惹かれるのだろう。もうそろそろ活動時間が終わる。吐き気がした。きっと男はまた少年を抱くのだ。
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