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第1幕 - 第4巻 : 新たなる始まり
第86章:孵化の下にある不在
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お知らせ
皆さん、こんにちは。
少しお知らせがあります。
申し訳ありませんが、物語の更新を1~2週間ほどお休みさせていただきます。
詳しいことは話しませんが、体調を崩してしまい、今は思うように筆が進みません。
疲れが取れず、このままでは満足のいく文章が書けそうにありません。
無理をすれば書き続けることはできます。
でも、それでは自分が納得できない中途半端なものを出してしまうと思うんです。
もともと自分にはまだまだ課題や欠点があるのはわかっています。
それを少しずつ直していきたいと思っているのに、今この状態で続けたら、
せっかくの物語を自分の手で壊してしまいそうで……。
読んでくださる皆さんに、妥協したものを見せたくはありません。
だから、少しだけ休ませてください。
ご迷惑をおかけして本当にすみません。
体調が戻り次第、すぐに続きを再開します。
それでは、どうか良い読書の時間を。
そして、また元気にお会いしましょう。
第86話
帰り道は、妙な静けさに包まれていた。
ヴェイルはゆっくりとした足取りで歩き続け、
カエラはそんな彼の背を見つめながら、何度も言葉を飲み込んでいた。
ヴァルドルンを出てから、すでに二時間が経つ。
森の木々は淡い光を浴びているはずなのに――
ヴェイルの目には、どこか色を失った景色に映っていた。
「……ねぇ、そろそろ休憩にしようか。」
カエラがようやく口を開いた。
近くの岩に腰を下ろし、彼を見上げる。
だがヴェイルはその声にも気づかず、黙々と歩き続けていた。
「ヴェイル? ……ヴェイルっ! 聞いてるの!?」
カエラの声が森に響く。
ようやく彼は立ち止まり、振り返った。
焦点の合わない瞳で。
「……悪い。何て言った?」
「だから、休憩。もう足が痛いの。
それに……あんた、顔が死人みたいよ。
少しは座りなさいっての。」
「死人ね……言い得て妙だ。」
苦く笑いながら、ヴェイルは岩の隣に腰を下ろした。
小さな水筒を取り出して一口飲み、震える手でカエラに差し出す。
「……大丈夫よ。あの子も、お母さんも。
ちゃんとやっていけるわ。
それに――ヴェイル、別にアルデリオンへ戻らなくてもいいのよ。
望むなら、あの親子のそばに残っても。」
カエラの声は優しかった。
しかしヴェイルは小さく首を振る。
「“望む”……か。
俺は……何を望んでるんだろうな。
今までは、ただ戦って、倒して、進むだけだった。
考える暇もなかった。
でも今回は……何かが違う。」
彼は視線を落とし、手のひらをじっと見つめた。
その中には何もない――けれど、そこに残る温もりだけは、まだ消えていなかった。
カエラは無言で水を一口飲み、また彼に返す。
ヴェイルは残りを飲み干し、機械的な動作で水筒をしまった。
「……あの子が言った言葉が、ずっと頭に残ってるんだ。
“お母さんはどこにいるの?”――って。
俺には、家族がいるんだろうか。
どこかで俺を探してる人が、いるんだろうか。
もし、いたとしても……今さら会ったところで、俺にとっては他人だ。」
カエラは言葉を失った。
彼女の視線はヴェイルの横顔をとらえたまま、動かない。
「……あのね、ヴェイル――」
「わかってる。答えを出すのは俺自身だ。」
ヴェイルは手を軽く上げ、彼女の言葉を制した。
「ごめん。
ただ、最近はずっと……何もかも早すぎてさ。
休む間もないまま、戦って、走って、また戦って。
このままじゃ、本当に壊れそうだ。
……少しだけ、息をつきたいんだ。」
言葉を吐き出すようにして、彼は目を閉じた。
(……あの声。
ダンジョンの中で聞いた“お前が必要だ”という声。
あれは、誰なんだ……?
なぜ、あれ以来何も言わない……?
――あの声のせいで、俺は記憶を失ったのか……?)
ヴェイルは目を開け、空を仰ぐ。
木々の隙間から差し込む光が、ぼやけて見えた。
「……よし、行こうか。」
ようやく立ち上がり、カエラに手を差し出す。
わずかに笑みを浮かべて。
「戻ったら、二日くらい休むよ。
何も考えず、何も背負わず、寝倒す。」
カエラはその手を取り、立ち上がる。
「そうしなさい。
じゃなきゃ、ほんとにゾンビになるわよ。」
二人は軽く笑い合い、再び歩き出した。
途中、小川を見つけて水を汲み、手を冷やしながら何気ない話を交わす。
さっきまでの重い空気は、少しずつ和らいでいった。
やがて、午後の陽が傾きはじめたころ。
森の向こうに、石壁が見えた。
「やっと……着いたわね。」
カエラが息をつく。
「次に依頼を決めるときは、私を止めなさいよ。
……鎖でも縄でもいいから、口を塞いで。」
ヴェイルは苦笑し、肩をすくめた。
「了解。次は縄を用意しておく。」
二人の笑い声が、夕暮れの風に溶けていった。
門へとたどり着いた頃には、すでに行列ができていた。
ヴェイルとカエラはその列に並び、黙って順番を待つ。
列は思ったより早く進み、すぐに彼らの番が来た。
見慣れた兵士が書類を確認し、無言で通行許可の印を押す。
――コツン。
扉の開く音と共に、彼らは再びアルデリオンの街の中へと足を踏み入れた。
「……やっぱり、この感じね。」
カエラが深呼吸する。
賑やかな喧騒、香ばしい屋台の匂い、笑い声。
それらすべてが、長い旅路の終わりを告げるように温かかった。
「小さな村も嫌いじゃなかったけど……やっぱり街の方が落ち着くわ。
この匂い、音、人の声……ちょっと懐かしい。」
彼女はそう言って、通り沿いの店を覗き込みながら歩く。
ヴェイルは小さく笑い、隣で歩調を合わせた。
やがて二人は冒険者ギルドへとたどり着く。
中は活気にあふれていたが、今日はどこか落ち着いた雰囲気があった。
受付に向かい、依頼の完了報告を行う。
村の嘘については語らず、エスメスの報告書どおりに提出した。
「まったく……無事で何よりだが、危険すぎる依頼だぞ。」
書類をめくりながら、トルヴェンが眉をひそめる。
「この種の魔獣は、本来ランクB以上のパーティにしか割り当てられない。
君たちが生きて帰ったのは奇跡だ。」
「……子どもが危険に晒されてたのよ。
戻って救援を呼んでたら、間に合わなかったわ。」
カエラの声には鋭さがあった。
彼女は受け取った報酬袋を一瞥し、無言で踵を返す。
ヴェイルが後に続く。
ギルドを出た後も、彼女の表情は硬いままだった。
「……わかってるけど、腹が立つのよ。」
彼女は小さく息を吐き、道を歩きながら続けた。
「心配してくれてるのはわかるけど、
“逃げろ”って言われるの、嫌いなの。
戦う覚悟があって冒険者になったんだから。」
その言葉に、ヴェイルは苦笑を漏らす。
「……らしいな。」
夕暮れが近づくころ、二人は宿へと戻った。
木製の扉をくぐり、テーブル席に腰を下ろす。
カエラは報酬袋を開け、数枚の硬貨を取り出して給仕に渡した。
残りをヴェイルの方へ押し出す。
「これ、全部あんたの分。」
「何言ってるんだ。
あの小さな火の精霊がいなきゃ、俺たち全員死んでた。
それに、あんただって十分頑張ったろ。」
ヴェイルは硬貨を半分に分け、彼女の前に置く。
カエラは少し黙り込み、彼の真剣な目を見てから――
「……わかったわ。」と呟き、硬貨を自分の袋へしまった。
その後は、静かな夕食が続いた。
旅の疲れを癒すように、温かなスープと焼き魚を口にしながら、
他愛もない話を交わす。
笑い声が戻ったころには、夜がすっかり降りていた。
食後、ヴェイルが大きくあくびをする。
「明日は……休みにする。
どこにも行かないで、ひたすら寝る。」
「ふふ、いいと思う。
私も……もう少しのんびりしたい気分だし。
明日、街をぶらついてもいい? 買い物とか、外の空気とか。」
「もちろん。
じゃあ、明日の朝に決めよう。
……それぞれの体調次第ってことで。」
二人は立ち上がり、軽く手を上げて別れた。
ヴェイルは部屋に戻り、服を脱いで窓のカーテンを開く。
月明かりが部屋の中を静かに照らした。
「……やっと、まともなベッドだ。」
彼は毛布を胸まで引き上げ、穏やかな笑みを浮かべる。
(もう……椅子の上で寝るのは御免だな。)
目を閉じながら、ふと心の中で呟く。
(エレノア……元気にしてるかな。
たった三日しか経ってないのに、
もう何年も経った気がする。)
静かな夜が、ゆっくりと彼を包み込んだ。
翌朝――
窓から差し込む朝日で目を覚ますと、下の食堂から香ばしい匂いが漂ってきた。
ヴェイルが階段を降りると、そこにはすでにカエラの姿があった。
その姿を見た瞬間、彼は思わず足を止めた。
淡い黄色のローブに白いリボン。
肩で結われた短い髪を、薔薇の髪飾りが留めている。
「……えっと。」
「何? そんなに見る?
それとも、女の子の服を見るのが趣味?」
カエラがくすりと笑う。
「い、いや……違う。
ただ、驚いたんだ。
いつもの鎧姿と違って……すごく似合ってる。」
「ふふ、ありがと。
でもヴェイル、あんたは相変わらず戦闘服ね。
今日、任務する気ないんでしょ?」
「……それはその……習慣で。」
照れくさそうに頭をかくヴェイルを見て、
カエラは楽しそうに笑った。
「……ああ、ただ服がこれしかないんだ。
そろそろ新しいのを買わないとな。
最近ちょっと……自分でも臭う気がする。」
ヴェイルは鼻をつまみながら苦笑した。
「今日は買い物に行こうと思ってる。」
「ぷっ……!」
カエラが吹き出し、肩を震わせながら笑った。
「いいわね、それ。久しぶりに街を歩くのも悪くないわ。」
二人は和やかに朝食を終え、陽気な雰囲気のまま街へと繰り出した。
日差しの中、露店の声が響き、香ばしい匂いが漂う。
カエラは次々と店を覗き込み、ヴェイルをあれこれ引きずり回す。
その結果――
「……これで三着目ね。
まさか、男の服選びでここまで歩くとは思わなかったわ。」
カエラが笑いながら袋を抱える。
ヴェイルは肩を落とし、息を吐いた。
「正直、モンスター退治より疲れた……。」
「ふふっ、修行よ。これも社会勉強ってやつ。」
日が沈むころ、二人はようやく宿に戻った。
体中が重く、脚が棒のようだ。
食堂で軽く夕食を取り、
ワインを一杯だけ交わしてから、それぞれの部屋へ戻る。
「……まったく、普通の一日ってのも結構疲れるんだな。」
ヴェイルはそう呟きながら、ベッドに身を沈めた。
あっという間に眠りに落ちる。
翌朝――
ヴェイルはいつものように階下へ降り、食堂に入る。
そこにはすでにカエラの姿があった。
彼女は明るい黄色のドレスを身にまとい、白いリボンが腰に結ばれている。
短くまとめた髪を、薔薇の飾りが留めていた。
「……えっと。」
「なに? そんなに見たいなら料金取るわよ?」
カエラがくすりと笑う。
「いや……似合ってる。
ちょっと驚いただけだよ。」
「ありがと。
でも、あんたは相変わらずその格好ね。
今日、依頼受けるつもり?」
「いや……その、ただ慣れてるだけで。」
「ふふっ、らしいわね。」
軽い笑いが交わされ、二人はいつものように朝食を済ませた。
昼になり、今日は久しぶりにギルドの依頼を受けることにした。
簡単な討伐――森のスライムの数を減らすだけの任務。
二人は出発したが、道中の空気はどこか重かった。
カエラは笑顔を保ちながらも、どこか落ち着かない。
視線を合わせようとせず、話しかけても話題をすぐ変える。
(……俺、何かしたか?)
ヴェイルの胸に小さな不安が芽生える。
スライムを切り伏せる剣筋に、いつもより力がこもっていた。
昼休憩。
簡単な弁当を食べながらも、会話は弾まない。
空を見上げると、カエラは木の根に背を預け、黙ったままだった。
そのまま夕方。
任務を終えた二人は、再び街へ戻り、報告を済ませる。
そして宿へ。
食堂で向かい合うが、会話はほとんどなかった。
ヴェイルは耐えきれず、拳を握った。
「……なあ、カエラ。俺、何かしたか?
一日中、ずっとよそよそしいじゃないか。
何か言いたいことがあるなら、ちゃんと聞く。」
カエラは肩を震わせ、小さく息を吐いた。
「……違うの、ヴェイル。
あんたのせいじゃない。
でも……もう、選ばなきゃいけないの。」
「……選ぶ?」
「昨日、手紙が届いたの。
寝る前に読んだんだけど……家族が困ってるみたいで。
私、戻らなきゃいけないの。」
ヴェイルの手が止まる。
彼女は俯いたまま続けた。
「でも……嫌なのよ。
やっと居場所を見つけた気がしたのに。
ヴェイルと一緒にいる時間が……楽しかったから。」
静寂が落ちる。
ヴェイルは立ち上がり、彼女の隣に座る。
そっと肩に手を置いた。
「……行け。
家族がいるなら、今はそっちを大事にしろ。
俺の方は大丈夫だ。
戻ってきたら、また一緒にやろう。」
カエラはわずかに首を横に振る。
「……そうじゃないの。
あのね、ヴェイル。
もし……もし嫌じゃなかったら、一緒に来てほしいの。
家は遠いけど……でも、あんたと離れたくないの。」
一瞬、時間が止まった。
ヴェイルの胸が締めつけられる。
(……一緒に、か。)
楽しかった日々が脳裏をよぎる。
けれど――
彼は、ある約束を忘れてはいなかった。
「……ごめん、カエラ。
行けない。
俺は……誰かを待ってる。
あいつに“強くなる”って約束したんだ。
まだ、何も果たせてない。」
カエラの唇が震えた。
「……アリニアのことね。」
その名を出した瞬間、彼女は力なく笑った。
「やっぱり……そうだと思ってた。
あんたが話す時、いつも優しい顔してたもん。」
彼女の声は静かだったが、どこか切なげだった。
ヴェイルは俯き、小さく息を吐く。
「……あいつは、面倒で短気で、正直怖い時もある。
でも、放っておけないんだ。
俺にとって――大切な人なんだ。」
カエラは小さく頷き、笑顔を作った。
だがその笑みは、どこか滲んでいた。
心の奥で、ヴェイルはわかっていた。
自分の言葉が、彼女を慰めることにはならないと。
けれど――嘘だけは、つきたくなかった。
彼女はそれに値しない。
「……そっか。」
カエラは微笑んだ。
けれど、その笑顔はどこか壊れそうだった。
「明日の朝、早く出発するつもり。
だから、たぶん会えないと思う。
でも……戻ってきたとき、あんたがまだここにいるなら、
また一緒に行けるよね?
……アリニアがいても、いいでしょ?」
その笑顔が、かえって胸に痛かった。
「もちろんだ。
また妙な依頼を見つけてきてくれよ。
お前はそういうのを嗅ぎつける天才だからな。」
ヴェイルが笑うと、カエラもつられて笑った。
その笑いはほんのひととき。
お互いに言葉を選びながら、重くなりかけた空気を軽く見せかけて、
それでもどこか心の奥に沈むものを隠しきれなかった。
やがて夜が深まり、
二人は席を立った。
カエラはヴェイルの前に立ち、そっと腕を回す。
柔らかい抱擁。
何も言わず、ただ小さく息を吐いた。
「……ありがとう、ヴェイル。」
彼女はそう言って離れ、
ゆっくりと階段を上っていった。
その背中が見えなくなるまで、ヴェイルは動けなかった。
やがて自分の部屋に戻り、
ベッドに体を沈める。
毛布を胸まで引き上げながら、天井をぼんやりと見つめた。
(……悪くないな、こういう日々も。)
小さく笑みが浮かぶ。
(この世界も、捨てたもんじゃない。
人と出会って、別れて……それでも前に進める。
――エレノア、カエラ。
あいつらのおかげで、少しだけ“生きてる”気がした。)
瞼を閉じる。
(アリニアに話したら、きっと怒るだろうな。
“また女に引っかかってたの?”って。
……でも、あいつなら笑ってくれるかもな。)
そんなことを思いながら、
ヴェイルは静かに目を閉じた。
夜は静かに流れ、
新しい朝が、また始まろうとしていた。
皆さん、こんにちは。
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詳しいことは話しませんが、体調を崩してしまい、今は思うように筆が進みません。
疲れが取れず、このままでは満足のいく文章が書けそうにありません。
無理をすれば書き続けることはできます。
でも、それでは自分が納得できない中途半端なものを出してしまうと思うんです。
もともと自分にはまだまだ課題や欠点があるのはわかっています。
それを少しずつ直していきたいと思っているのに、今この状態で続けたら、
せっかくの物語を自分の手で壊してしまいそうで……。
読んでくださる皆さんに、妥協したものを見せたくはありません。
だから、少しだけ休ませてください。
ご迷惑をおかけして本当にすみません。
体調が戻り次第、すぐに続きを再開します。
それでは、どうか良い読書の時間を。
そして、また元気にお会いしましょう。
第86話
帰り道は、妙な静けさに包まれていた。
ヴェイルはゆっくりとした足取りで歩き続け、
カエラはそんな彼の背を見つめながら、何度も言葉を飲み込んでいた。
ヴァルドルンを出てから、すでに二時間が経つ。
森の木々は淡い光を浴びているはずなのに――
ヴェイルの目には、どこか色を失った景色に映っていた。
「……ねぇ、そろそろ休憩にしようか。」
カエラがようやく口を開いた。
近くの岩に腰を下ろし、彼を見上げる。
だがヴェイルはその声にも気づかず、黙々と歩き続けていた。
「ヴェイル? ……ヴェイルっ! 聞いてるの!?」
カエラの声が森に響く。
ようやく彼は立ち止まり、振り返った。
焦点の合わない瞳で。
「……悪い。何て言った?」
「だから、休憩。もう足が痛いの。
それに……あんた、顔が死人みたいよ。
少しは座りなさいっての。」
「死人ね……言い得て妙だ。」
苦く笑いながら、ヴェイルは岩の隣に腰を下ろした。
小さな水筒を取り出して一口飲み、震える手でカエラに差し出す。
「……大丈夫よ。あの子も、お母さんも。
ちゃんとやっていけるわ。
それに――ヴェイル、別にアルデリオンへ戻らなくてもいいのよ。
望むなら、あの親子のそばに残っても。」
カエラの声は優しかった。
しかしヴェイルは小さく首を振る。
「“望む”……か。
俺は……何を望んでるんだろうな。
今までは、ただ戦って、倒して、進むだけだった。
考える暇もなかった。
でも今回は……何かが違う。」
彼は視線を落とし、手のひらをじっと見つめた。
その中には何もない――けれど、そこに残る温もりだけは、まだ消えていなかった。
カエラは無言で水を一口飲み、また彼に返す。
ヴェイルは残りを飲み干し、機械的な動作で水筒をしまった。
「……あの子が言った言葉が、ずっと頭に残ってるんだ。
“お母さんはどこにいるの?”――って。
俺には、家族がいるんだろうか。
どこかで俺を探してる人が、いるんだろうか。
もし、いたとしても……今さら会ったところで、俺にとっては他人だ。」
カエラは言葉を失った。
彼女の視線はヴェイルの横顔をとらえたまま、動かない。
「……あのね、ヴェイル――」
「わかってる。答えを出すのは俺自身だ。」
ヴェイルは手を軽く上げ、彼女の言葉を制した。
「ごめん。
ただ、最近はずっと……何もかも早すぎてさ。
休む間もないまま、戦って、走って、また戦って。
このままじゃ、本当に壊れそうだ。
……少しだけ、息をつきたいんだ。」
言葉を吐き出すようにして、彼は目を閉じた。
(……あの声。
ダンジョンの中で聞いた“お前が必要だ”という声。
あれは、誰なんだ……?
なぜ、あれ以来何も言わない……?
――あの声のせいで、俺は記憶を失ったのか……?)
ヴェイルは目を開け、空を仰ぐ。
木々の隙間から差し込む光が、ぼやけて見えた。
「……よし、行こうか。」
ようやく立ち上がり、カエラに手を差し出す。
わずかに笑みを浮かべて。
「戻ったら、二日くらい休むよ。
何も考えず、何も背負わず、寝倒す。」
カエラはその手を取り、立ち上がる。
「そうしなさい。
じゃなきゃ、ほんとにゾンビになるわよ。」
二人は軽く笑い合い、再び歩き出した。
途中、小川を見つけて水を汲み、手を冷やしながら何気ない話を交わす。
さっきまでの重い空気は、少しずつ和らいでいった。
やがて、午後の陽が傾きはじめたころ。
森の向こうに、石壁が見えた。
「やっと……着いたわね。」
カエラが息をつく。
「次に依頼を決めるときは、私を止めなさいよ。
……鎖でも縄でもいいから、口を塞いで。」
ヴェイルは苦笑し、肩をすくめた。
「了解。次は縄を用意しておく。」
二人の笑い声が、夕暮れの風に溶けていった。
門へとたどり着いた頃には、すでに行列ができていた。
ヴェイルとカエラはその列に並び、黙って順番を待つ。
列は思ったより早く進み、すぐに彼らの番が来た。
見慣れた兵士が書類を確認し、無言で通行許可の印を押す。
――コツン。
扉の開く音と共に、彼らは再びアルデリオンの街の中へと足を踏み入れた。
「……やっぱり、この感じね。」
カエラが深呼吸する。
賑やかな喧騒、香ばしい屋台の匂い、笑い声。
それらすべてが、長い旅路の終わりを告げるように温かかった。
「小さな村も嫌いじゃなかったけど……やっぱり街の方が落ち着くわ。
この匂い、音、人の声……ちょっと懐かしい。」
彼女はそう言って、通り沿いの店を覗き込みながら歩く。
ヴェイルは小さく笑い、隣で歩調を合わせた。
やがて二人は冒険者ギルドへとたどり着く。
中は活気にあふれていたが、今日はどこか落ち着いた雰囲気があった。
受付に向かい、依頼の完了報告を行う。
村の嘘については語らず、エスメスの報告書どおりに提出した。
「まったく……無事で何よりだが、危険すぎる依頼だぞ。」
書類をめくりながら、トルヴェンが眉をひそめる。
「この種の魔獣は、本来ランクB以上のパーティにしか割り当てられない。
君たちが生きて帰ったのは奇跡だ。」
「……子どもが危険に晒されてたのよ。
戻って救援を呼んでたら、間に合わなかったわ。」
カエラの声には鋭さがあった。
彼女は受け取った報酬袋を一瞥し、無言で踵を返す。
ヴェイルが後に続く。
ギルドを出た後も、彼女の表情は硬いままだった。
「……わかってるけど、腹が立つのよ。」
彼女は小さく息を吐き、道を歩きながら続けた。
「心配してくれてるのはわかるけど、
“逃げろ”って言われるの、嫌いなの。
戦う覚悟があって冒険者になったんだから。」
その言葉に、ヴェイルは苦笑を漏らす。
「……らしいな。」
夕暮れが近づくころ、二人は宿へと戻った。
木製の扉をくぐり、テーブル席に腰を下ろす。
カエラは報酬袋を開け、数枚の硬貨を取り出して給仕に渡した。
残りをヴェイルの方へ押し出す。
「これ、全部あんたの分。」
「何言ってるんだ。
あの小さな火の精霊がいなきゃ、俺たち全員死んでた。
それに、あんただって十分頑張ったろ。」
ヴェイルは硬貨を半分に分け、彼女の前に置く。
カエラは少し黙り込み、彼の真剣な目を見てから――
「……わかったわ。」と呟き、硬貨を自分の袋へしまった。
その後は、静かな夕食が続いた。
旅の疲れを癒すように、温かなスープと焼き魚を口にしながら、
他愛もない話を交わす。
笑い声が戻ったころには、夜がすっかり降りていた。
食後、ヴェイルが大きくあくびをする。
「明日は……休みにする。
どこにも行かないで、ひたすら寝る。」
「ふふ、いいと思う。
私も……もう少しのんびりしたい気分だし。
明日、街をぶらついてもいい? 買い物とか、外の空気とか。」
「もちろん。
じゃあ、明日の朝に決めよう。
……それぞれの体調次第ってことで。」
二人は立ち上がり、軽く手を上げて別れた。
ヴェイルは部屋に戻り、服を脱いで窓のカーテンを開く。
月明かりが部屋の中を静かに照らした。
「……やっと、まともなベッドだ。」
彼は毛布を胸まで引き上げ、穏やかな笑みを浮かべる。
(もう……椅子の上で寝るのは御免だな。)
目を閉じながら、ふと心の中で呟く。
(エレノア……元気にしてるかな。
たった三日しか経ってないのに、
もう何年も経った気がする。)
静かな夜が、ゆっくりと彼を包み込んだ。
翌朝――
窓から差し込む朝日で目を覚ますと、下の食堂から香ばしい匂いが漂ってきた。
ヴェイルが階段を降りると、そこにはすでにカエラの姿があった。
その姿を見た瞬間、彼は思わず足を止めた。
淡い黄色のローブに白いリボン。
肩で結われた短い髪を、薔薇の髪飾りが留めている。
「……えっと。」
「何? そんなに見る?
それとも、女の子の服を見るのが趣味?」
カエラがくすりと笑う。
「い、いや……違う。
ただ、驚いたんだ。
いつもの鎧姿と違って……すごく似合ってる。」
「ふふ、ありがと。
でもヴェイル、あんたは相変わらず戦闘服ね。
今日、任務する気ないんでしょ?」
「……それはその……習慣で。」
照れくさそうに頭をかくヴェイルを見て、
カエラは楽しそうに笑った。
「……ああ、ただ服がこれしかないんだ。
そろそろ新しいのを買わないとな。
最近ちょっと……自分でも臭う気がする。」
ヴェイルは鼻をつまみながら苦笑した。
「今日は買い物に行こうと思ってる。」
「ぷっ……!」
カエラが吹き出し、肩を震わせながら笑った。
「いいわね、それ。久しぶりに街を歩くのも悪くないわ。」
二人は和やかに朝食を終え、陽気な雰囲気のまま街へと繰り出した。
日差しの中、露店の声が響き、香ばしい匂いが漂う。
カエラは次々と店を覗き込み、ヴェイルをあれこれ引きずり回す。
その結果――
「……これで三着目ね。
まさか、男の服選びでここまで歩くとは思わなかったわ。」
カエラが笑いながら袋を抱える。
ヴェイルは肩を落とし、息を吐いた。
「正直、モンスター退治より疲れた……。」
「ふふっ、修行よ。これも社会勉強ってやつ。」
日が沈むころ、二人はようやく宿に戻った。
体中が重く、脚が棒のようだ。
食堂で軽く夕食を取り、
ワインを一杯だけ交わしてから、それぞれの部屋へ戻る。
「……まったく、普通の一日ってのも結構疲れるんだな。」
ヴェイルはそう呟きながら、ベッドに身を沈めた。
あっという間に眠りに落ちる。
翌朝――
ヴェイルはいつものように階下へ降り、食堂に入る。
そこにはすでにカエラの姿があった。
彼女は明るい黄色のドレスを身にまとい、白いリボンが腰に結ばれている。
短くまとめた髪を、薔薇の飾りが留めていた。
「……えっと。」
「なに? そんなに見たいなら料金取るわよ?」
カエラがくすりと笑う。
「いや……似合ってる。
ちょっと驚いただけだよ。」
「ありがと。
でも、あんたは相変わらずその格好ね。
今日、依頼受けるつもり?」
「いや……その、ただ慣れてるだけで。」
「ふふっ、らしいわね。」
軽い笑いが交わされ、二人はいつものように朝食を済ませた。
昼になり、今日は久しぶりにギルドの依頼を受けることにした。
簡単な討伐――森のスライムの数を減らすだけの任務。
二人は出発したが、道中の空気はどこか重かった。
カエラは笑顔を保ちながらも、どこか落ち着かない。
視線を合わせようとせず、話しかけても話題をすぐ変える。
(……俺、何かしたか?)
ヴェイルの胸に小さな不安が芽生える。
スライムを切り伏せる剣筋に、いつもより力がこもっていた。
昼休憩。
簡単な弁当を食べながらも、会話は弾まない。
空を見上げると、カエラは木の根に背を預け、黙ったままだった。
そのまま夕方。
任務を終えた二人は、再び街へ戻り、報告を済ませる。
そして宿へ。
食堂で向かい合うが、会話はほとんどなかった。
ヴェイルは耐えきれず、拳を握った。
「……なあ、カエラ。俺、何かしたか?
一日中、ずっとよそよそしいじゃないか。
何か言いたいことがあるなら、ちゃんと聞く。」
カエラは肩を震わせ、小さく息を吐いた。
「……違うの、ヴェイル。
あんたのせいじゃない。
でも……もう、選ばなきゃいけないの。」
「……選ぶ?」
「昨日、手紙が届いたの。
寝る前に読んだんだけど……家族が困ってるみたいで。
私、戻らなきゃいけないの。」
ヴェイルの手が止まる。
彼女は俯いたまま続けた。
「でも……嫌なのよ。
やっと居場所を見つけた気がしたのに。
ヴェイルと一緒にいる時間が……楽しかったから。」
静寂が落ちる。
ヴェイルは立ち上がり、彼女の隣に座る。
そっと肩に手を置いた。
「……行け。
家族がいるなら、今はそっちを大事にしろ。
俺の方は大丈夫だ。
戻ってきたら、また一緒にやろう。」
カエラはわずかに首を横に振る。
「……そうじゃないの。
あのね、ヴェイル。
もし……もし嫌じゃなかったら、一緒に来てほしいの。
家は遠いけど……でも、あんたと離れたくないの。」
一瞬、時間が止まった。
ヴェイルの胸が締めつけられる。
(……一緒に、か。)
楽しかった日々が脳裏をよぎる。
けれど――
彼は、ある約束を忘れてはいなかった。
「……ごめん、カエラ。
行けない。
俺は……誰かを待ってる。
あいつに“強くなる”って約束したんだ。
まだ、何も果たせてない。」
カエラの唇が震えた。
「……アリニアのことね。」
その名を出した瞬間、彼女は力なく笑った。
「やっぱり……そうだと思ってた。
あんたが話す時、いつも優しい顔してたもん。」
彼女の声は静かだったが、どこか切なげだった。
ヴェイルは俯き、小さく息を吐く。
「……あいつは、面倒で短気で、正直怖い時もある。
でも、放っておけないんだ。
俺にとって――大切な人なんだ。」
カエラは小さく頷き、笑顔を作った。
だがその笑みは、どこか滲んでいた。
心の奥で、ヴェイルはわかっていた。
自分の言葉が、彼女を慰めることにはならないと。
けれど――嘘だけは、つきたくなかった。
彼女はそれに値しない。
「……そっか。」
カエラは微笑んだ。
けれど、その笑顔はどこか壊れそうだった。
「明日の朝、早く出発するつもり。
だから、たぶん会えないと思う。
でも……戻ってきたとき、あんたがまだここにいるなら、
また一緒に行けるよね?
……アリニアがいても、いいでしょ?」
その笑顔が、かえって胸に痛かった。
「もちろんだ。
また妙な依頼を見つけてきてくれよ。
お前はそういうのを嗅ぎつける天才だからな。」
ヴェイルが笑うと、カエラもつられて笑った。
その笑いはほんのひととき。
お互いに言葉を選びながら、重くなりかけた空気を軽く見せかけて、
それでもどこか心の奥に沈むものを隠しきれなかった。
やがて夜が深まり、
二人は席を立った。
カエラはヴェイルの前に立ち、そっと腕を回す。
柔らかい抱擁。
何も言わず、ただ小さく息を吐いた。
「……ありがとう、ヴェイル。」
彼女はそう言って離れ、
ゆっくりと階段を上っていった。
その背中が見えなくなるまで、ヴェイルは動けなかった。
やがて自分の部屋に戻り、
ベッドに体を沈める。
毛布を胸まで引き上げながら、天井をぼんやりと見つめた。
(……悪くないな、こういう日々も。)
小さく笑みが浮かぶ。
(この世界も、捨てたもんじゃない。
人と出会って、別れて……それでも前に進める。
――エレノア、カエラ。
あいつらのおかげで、少しだけ“生きてる”気がした。)
瞼を閉じる。
(アリニアに話したら、きっと怒るだろうな。
“また女に引っかかってたの?”って。
……でも、あいつなら笑ってくれるかもな。)
そんなことを思いながら、
ヴェイルは静かに目を閉じた。
夜は静かに流れ、
新しい朝が、また始まろうとしていた。
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