はりぼてスケバン弐

あさまる

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彼女らは、元々三花の取り巻きであった。
しかし、そんなことを気にしてなどいられない。
今の彼女に遠慮の二文字などはないのだ。

「お、おぉ、華ちゃん。もう知ってるかもしれないけど三花、自主退学したらしいよ。もう噂回ってる。」

「華子、襲撃されたけど返り討ちしたらしいじゃんね?やるじゃん。流石頭ー。」

無遠慮に話し出した華子に、同じように馴れ馴れしく言葉をかける。
どうやら今は彼女に対して敵意はないようだ。

各々彼女に話し出す。
三花が退学をしたこと。
そして、華子が彼女の奇襲を受けたが返り討ちしたことも知っている。
人の噂とは、意図も容易く広まるものだ。

「それ、本当なの!?あいつ……学校辞めたって……。」

「うーん、どうだろう。うちも聞いただけだしー……。」

「右に同じー。」

確証はない。
しかし、大半の生徒がそれを知っているようだ。
つまり、やはり本当なのか?
しかし、周知されたものとはいえ、所詮は噂。
信憑性の低いものだ。

確信がほしい。
噂に振り回されては対策が出来ない。

教師に直接聞くか?
しかし、素直に教えてくれるだろうか?

一応は個人情報の類だ。
はぐらかされて終わるという結末が見える。
ではどうする?

「安心しろ。」

グルグルと思考が渦巻く。
そんな彼女の耳に、不意に届く声。

「……え?」
華子が見上げる。

そこにいたのは亥玄であった。
先ほどの声は彼のものであったのだ。

「お前は俺が守る。」
華子を真っ直ぐに見て言う。

その瞳の中には彼の目の前にいる彼女がいる。
そこに写るそれは、小さくとも表情がちゃんと見えるものであった。

「……こ、鯉崎君……。」
呟くように、彼の名前を言う華子。
彼女の目にも、彼の姿が反射していた。

「なっ!?俺もっす!姐さん、俺も守るっすよ!?」

「……ふふふ、藤柴君もありがとう。でも昨日、二人とも私のこと守れなかったよねー?」
最初は優しく、そして後半に向かうにつれていたずらっぽく微笑む華子であった。

悩んでいたのは本当だ。
しかし、昨日の襲撃に反応出来たことが彼女の自信にもなった。

きっと上手くいく。
くよくよしていてもしょうがない。


「その噂、本当だよー。」

「……うわっ!びっくりした……お、尾谷先輩……どうも……。」
驚きつつ、挨拶をする華子。
そこにいたのは心司であった。
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