はりぼてスケバン弐

あさまる

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「え?えっと……。」
しまった。
どうやら彼にはその内容を最後まで見られてしまったようだ。
言葉に詰まる華子。

「お前、こいつとまだ縁が切れてなかったんだな。」
ため息。
心底呆れたように亥玄が言う。

「なっ!?関係ないでしょ!?放っておいてよ!」
流石にその物言いに、苛立ってしまった。
つい刺々しい声色になってしまう華子。

「そうだな、お前がここの頭じゃなければ好きにすれば良い。だが……。」

「も、もう!分かったよ!」
強制的に話題を終わらせる。

駄目だ。
勝てない。
この話題を出されると、華子は絶対に亥玄との口論に負けてしまうのだ。

「それで、どうするんだ?」
再度の質問。
真っ直ぐに彼女を見て話す亥玄。

「そ、それは……。」

「え、えっと……鯉崎、何を姐さんに話してるんっすか?」
空気が張り詰めたのを察した丸雄が割って入る。

「こいつは俺らに隠れて襲撃の主犯格と会うつもりだとさ……。」
亥玄のその一言で、教室内の空気が凍ってしまった。


「な、なんだってー……っす!?」
何とか自身のアイデンティティを保ちつつ、驚きの声を上げる丸雄。
その困惑は、瞬く間に教室中へ広がっていった。

皆、口々に華子へ自身の意見を述べていく。
恐らくどれもこれも理に適ったものなのだろう。

きっと、そうなのだろう。
しかし、それが彼女の耳へ正確に届くことはなかった。

無理はない。
それぞれがあまりにも大きな声であるが故に互いに相殺してしまっていたのだ。

「ちょ、ちょっと皆!また騒いでると……!」
華子の胸中に、嫌な予感。
そういった当たってほしくない類のものは、だいたい当たってしまうものである。

激しい足音。
そして、勢い良く開けられる教室の扉。
飛鳥と番仁朗がやって来たのだ。

「またか鼬原ー!早く何とかしろー!」

「鼬原、頼む!本当に大人しくさせてくれ!」

真っ赤な顔で怒り心頭な番仁朗。
そして、真っ青な顔で嘆願する飛鳥。
対照的な両者であったが、言っていることは同じようなものであった。

「……あぁ、もうっ!言わんこっちゃない!分かってますってー!皆、大人しくしてー!」
華子の悲痛な叫び。
事態が鎮静化したのはそれから数分後してからであった。


「……とにかくっ!俺は反対っす!」

時は進み、放課後。
暴動を起こさないと約束し、華子は生徒達を体育館に集めていた。
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