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第1章 通信販売、始めました
第7話 営業もアイドルのお仕事です
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翌日、商品紹介依頼を受けていた中から3社を選び、俺はシャイルとセナを伴って挨拶に出向いた。
営業活動では、紹介する商品の実物を見てこれから行う冒険でどのように紹介するかを話し合い、気持ちが盛り上がったところで広告料の交渉をする。更に、どれくらいの在庫を確保できるか、売り切れた場合の補充にどれだけの時間がかかるかといった確認も行う。相手の反応次第では、欠品時の逸失利益やお客様の反応なんかも解説したりする。
シャイル・セナの知名度が上がってきたことで、営業先での相手の反応はおおむね良好……なのだが、逆に二人に会いたいがために商品紹介を依頼してくる社長さんもいないわけではない。二人が紹介する以上、商品の品質と供給体制を確保するのは俺の仕事だ。
午前中に探索用鞄のデザイン会社、昼食後はガラス瓶工房と会談を終え、3社目となる太陽神教会のドアをノックしたのは夕方よりも少し手前くらいの時間だった。
「まさか、教会からお仕事の依頼を貰えるなんてね」
周辺の建物の中でも一際巨大な教会の待合室。シャイルは柄にもなく委縮した様子で呟いた。
こちらの世界では、何柱かのメジャーな神様が信仰を集めている。太陽神の教会はかつて最大の信徒を集めていたが、現在は商業神などに押され気味だ。今いる建物も、元の作りは華美で立派なものだったと思われるが、壁の一部には染みなども見えることから、運営に苦慮している様が伺える。
「対象商品がちょうど良さそうなんだよ。対アンデッド用の不可視ポーションの開発に、ついに成功したとか」
俺の知る限り、この世界には完全な不可視の魔法は存在しない。人族や動物を相手とする認識阻害の魔法は俺も使えるのだが、アンデッドは視覚に頼らず生物を知覚しているため、この魔法は通用しないのだ。
「え、それが本当なら世界が変わるじゃないでシカ?アンデッド系ダンジョンの攻略、バカみたいに楽になっちゃうんじゃないでシカ?」
「どこまでできるかは、まだわからないけどな。まあその辺りも確認しよう。実際にサンプルを貰って実験したい」
アンデッドから“見えなく”なるということは、音は聞こえるのか。一方的に攻撃し続けたりできるのか。持続時間や解除条件はどんなものなのか。
そんなことを考えていると、待合室のドアがノックされた。温和な表情の老ドワーフと、従者と思しき若手のノームが入室してくる。共に男性で、身に着けているローブの意匠から格の違いが見て取れる。
「初めまして。太陽神様にお仕えしております、フルーゴと申します。本教会では司祭の役割をいただいております」
「わ、わたくしはトボコグと申します。じょ、助祭をやらせていただいています」
典型的な上司と部下といったところかな。
さて、俺の仕事を始めよう。
◇◇◇
教会との会談は順調だった。フルーゴ司祭は技術革新に肯定的で、俺たちがやっているネット配信業にも好意的な立場を示してくれた。太陽神教は最古の宗教ということで保守的なんじゃないかとう先入観があったのだが、それは良い意味で裏切られたと言える。
もっとも、深読みするならば、それだけ教会の経営が厳しいという予想もできる。なりふりは構いつつ――特に彼らは体裁を重んじる――一定以上の収入源を確保する必要性に駆られているのだろう。
また、終始おどおどしていたトボコグ氏だが、彼が今回の対アンデッドポーションの発明者らしい。その功績をもって助祭に昇進したとのことで、今回のビジネスでもキーパーソンとなる。彼とはもう1、2回会って関係を深めた方が良いかもしれない。
「次の撮影のメイン、これで決まりね」
教会からの帰り道、シャイルは上機嫌に歩いている。例のポーションをいたく気に入ったようだ。
「確かに良いモノだとは思うでシカ、動画のシナリオは考え直せないでシカ?ああいう役周りはシャイルの担当でシカ」
「あら、ファンに『あのシカ回復しかしてない』って言われるのが嫌だったんでしょう?いい機会じゃない?」
「いやでも、これは思ってたのとは違うシカ」
会談の中で、今回の商品紹介はセナがメインを張ることになった。本人には伝えていないが、現在コメント欄のキーワードランキングで“セナ虐”が急上昇中だったりするのだ。イキりとビビり間で反復横跳びする芸風は、実に配信映えする。
「シャイルの言う通りだ。今回はファンのみなさんにセナの頑張りを知ってもらう回にしよう」
「うう、セナの頑張りは、たった一人のプロデューサーに理解してもらえればそれで良いのでシカよ?」
わざとらしく瞳を震わせてこちらを見上げてくる。こういうところが芸人ポジを確立しているんだけど、本人は気付いているんだろうか。
「あっ、プロデューサーさん、あのお店の焼き串美味しそう」
「良いね、2本貰おうか」
「ちょっと待つシカ!いまセナが大事な話してたシカ!あと買うなら3本買えシカ!」
結局、アニエスと開発チームの分も山ほどお土産を買うことになった。ブレンは今日もどこかのお偉いさんと会食しているはずだ。王族兼領主兼社長は、夜も忙しい。あいつにはいつか地球産のプレミアムビールでも買っていってやろう。
営業活動では、紹介する商品の実物を見てこれから行う冒険でどのように紹介するかを話し合い、気持ちが盛り上がったところで広告料の交渉をする。更に、どれくらいの在庫を確保できるか、売り切れた場合の補充にどれだけの時間がかかるかといった確認も行う。相手の反応次第では、欠品時の逸失利益やお客様の反応なんかも解説したりする。
シャイル・セナの知名度が上がってきたことで、営業先での相手の反応はおおむね良好……なのだが、逆に二人に会いたいがために商品紹介を依頼してくる社長さんもいないわけではない。二人が紹介する以上、商品の品質と供給体制を確保するのは俺の仕事だ。
午前中に探索用鞄のデザイン会社、昼食後はガラス瓶工房と会談を終え、3社目となる太陽神教会のドアをノックしたのは夕方よりも少し手前くらいの時間だった。
「まさか、教会からお仕事の依頼を貰えるなんてね」
周辺の建物の中でも一際巨大な教会の待合室。シャイルは柄にもなく委縮した様子で呟いた。
こちらの世界では、何柱かのメジャーな神様が信仰を集めている。太陽神の教会はかつて最大の信徒を集めていたが、現在は商業神などに押され気味だ。今いる建物も、元の作りは華美で立派なものだったと思われるが、壁の一部には染みなども見えることから、運営に苦慮している様が伺える。
「対象商品がちょうど良さそうなんだよ。対アンデッド用の不可視ポーションの開発に、ついに成功したとか」
俺の知る限り、この世界には完全な不可視の魔法は存在しない。人族や動物を相手とする認識阻害の魔法は俺も使えるのだが、アンデッドは視覚に頼らず生物を知覚しているため、この魔法は通用しないのだ。
「え、それが本当なら世界が変わるじゃないでシカ?アンデッド系ダンジョンの攻略、バカみたいに楽になっちゃうんじゃないでシカ?」
「どこまでできるかは、まだわからないけどな。まあその辺りも確認しよう。実際にサンプルを貰って実験したい」
アンデッドから“見えなく”なるということは、音は聞こえるのか。一方的に攻撃し続けたりできるのか。持続時間や解除条件はどんなものなのか。
そんなことを考えていると、待合室のドアがノックされた。温和な表情の老ドワーフと、従者と思しき若手のノームが入室してくる。共に男性で、身に着けているローブの意匠から格の違いが見て取れる。
「初めまして。太陽神様にお仕えしております、フルーゴと申します。本教会では司祭の役割をいただいております」
「わ、わたくしはトボコグと申します。じょ、助祭をやらせていただいています」
典型的な上司と部下といったところかな。
さて、俺の仕事を始めよう。
◇◇◇
教会との会談は順調だった。フルーゴ司祭は技術革新に肯定的で、俺たちがやっているネット配信業にも好意的な立場を示してくれた。太陽神教は最古の宗教ということで保守的なんじゃないかとう先入観があったのだが、それは良い意味で裏切られたと言える。
もっとも、深読みするならば、それだけ教会の経営が厳しいという予想もできる。なりふりは構いつつ――特に彼らは体裁を重んじる――一定以上の収入源を確保する必要性に駆られているのだろう。
また、終始おどおどしていたトボコグ氏だが、彼が今回の対アンデッドポーションの発明者らしい。その功績をもって助祭に昇進したとのことで、今回のビジネスでもキーパーソンとなる。彼とはもう1、2回会って関係を深めた方が良いかもしれない。
「次の撮影のメイン、これで決まりね」
教会からの帰り道、シャイルは上機嫌に歩いている。例のポーションをいたく気に入ったようだ。
「確かに良いモノだとは思うでシカ、動画のシナリオは考え直せないでシカ?ああいう役周りはシャイルの担当でシカ」
「あら、ファンに『あのシカ回復しかしてない』って言われるのが嫌だったんでしょう?いい機会じゃない?」
「いやでも、これは思ってたのとは違うシカ」
会談の中で、今回の商品紹介はセナがメインを張ることになった。本人には伝えていないが、現在コメント欄のキーワードランキングで“セナ虐”が急上昇中だったりするのだ。イキりとビビり間で反復横跳びする芸風は、実に配信映えする。
「シャイルの言う通りだ。今回はファンのみなさんにセナの頑張りを知ってもらう回にしよう」
「うう、セナの頑張りは、たった一人のプロデューサーに理解してもらえればそれで良いのでシカよ?」
わざとらしく瞳を震わせてこちらを見上げてくる。こういうところが芸人ポジを確立しているんだけど、本人は気付いているんだろうか。
「あっ、プロデューサーさん、あのお店の焼き串美味しそう」
「良いね、2本貰おうか」
「ちょっと待つシカ!いまセナが大事な話してたシカ!あと買うなら3本買えシカ!」
結局、アニエスと開発チームの分も山ほどお土産を買うことになった。ブレンは今日もどこかのお偉いさんと会食しているはずだ。王族兼領主兼社長は、夜も忙しい。あいつにはいつか地球産のプレミアムビールでも買っていってやろう。
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