剣と魔法とネット通販 ~元勇者ですが、ネットアイドルのプロデュース始めました~

高山瑞希

文字の大きさ
11 / 57
第1章 通信販売、始めました

第11話 ダンジョン攻略(1)

しおりを挟む
ダンジョン”堕落の逆塔ザ・フォールン”は、先の戦争の際に魔族の支配していた領域の中にある。ブレンの治めるスチールフロントから見てほぼ真北、幾度となく会戦の行われた赤の荒野を挟んだ向こう側だ。
徒歩でも1日程度の距離ではあるが、アニエスに転移門ゲートを開いてもらえればダンジョン前までは一瞬だ。尚、帰りは頑張って歩くことになる。セナがドルイドの秘儀“取り替え子チェンジリング”を使えるようになると、転移門に似た瞬間移動ができるようになるのだが、それはもう少し先になりそうだ。

女優の二人と撮影役の俺はダンジョン手前のセーフポイントで攻略と撮影の流れを確認し、まずは一気に地下6階の入り口まで潜った。降りるだけなら、ダンジョン内の縦穴を利用すれば良いので楽勝だ。なお穴の際にロープなどを垂らして復路に備えたりもするのだが、大抵の場合はどこからともなく現れるスケルトンに断ち切られてしまう。ダンジョン製作者の執念が垣間見える設計だ。

「よし、じゃあ撮影に入る前に、ポーションの効果だけ試してみようか。まずはシャイルから」

5階から6階に通じる螺旋階段を降りると、俺は鞄からポーションを取り出した。

「おっ、いよいよね。これ、一気に飲んじゃって良いんだっけ?」
「ああ、一瓶一気に飲んじゃってくれ。体中に太陽神様の加護が行き渡るはずだから」
「りょうかーい」

シャイルはひとかけらの迷いもなく瓶を呷る。量的には200ミリリットルくらいあるはずなんだが、一気に飲み干した。

「これ……何の味?お茶っぽい感じよね」

けぷっと意外に可愛らしい息を漏らしながらシャイルが首をかしげる。

「ゼラヌス茶に寄せているらしい」
「ああ、太陽神様の」

この世界には様々なポーションが存在しており、それらの効果が分かりやすいよう味付けにも工夫が施されている。
ゼラヌスはヒマワリに似た大輪の花が咲く植物で、太陽神のシンボルに用いられていた。その葉を乾燥させると、独特の風味を持つ茶葉になる。

「一応、30分程度の効果は確認できているらしい。で、3歩分くらいの距離を取っていればだいたい気付かれない、と」
「一応とかだいたいとか、曖昧でシカねえ」
「まだ開発して間もないからな」

むしろ、そんな新商品を俺たちの通信販売で取り扱わせてもらえることの方が例外的な事態だったりする。巡り合わせに感謝だ。

「じゃあ、ちょっと行ってきまーす」

ふらりと近所の本屋にでも行くような気軽さでシャイルは通路の先に歩いて行った。ホール状になっている部屋には数体のエルダースケルトンが佇んでいるが、彼女に気付いた様子はない。

「大丈夫みたいでシカね」
「大丈夫みたいだな」

やや緊張気味に俺とセナが見守っていると、シャイルは足元にあったソフトボールくらいの大きさの石を拾って、

「あ、やばい。それはまずい」

俺が止める間もなく7、8メートル離れた所にいたスケルトンに投げつけた。
ごがん。
がしゃがしゃがしゃがしゃ。
石は見事に命中し、スケルトンは即座にシャイルへの突進を開始する。その動きに反応し、部屋中のスケルトンも敵対反応を示した。

「あははは!怒った怒った!たった一発で怒ったゲージ溜まりすぎっ!」

シャイルは目の前のスケルトンを一刀両断すると、あちこちに動き回って部屋の四方から飛来する矢を回避する。

「仕方ない。セナ、俺とフォーカス合わせて。まずは右の近い奴から」
「了解っ」

俺は一撃で倒さない程度の攻撃呪文を詠唱し、シャイルへ槍を突き出そうとしていたスケルトンにぶち当てた。不可視の衝撃に弾かれ、ふらついたところにセナの火弾が追撃すると、そのまま崩れ落ちる。それを尻目に、シャイルは奥の弓持ちに向かって走り出していた。そいつは彼女に任せ、俺は射線の通るようになった別のスケルトンへ次弾を放つ。そこへ、間髪入れずにセナが止めを刺す。
敵とのレベル差があったとはいえ、悪くない連携だ。最近、配信外ではこんな風に実践向けの動きを確認していたりする。

「おつかれー!ナイスファイッ!」

全てのスケルトンを殲滅した後、シャイルは朗らかに親指を立てて俺たちのところにやってきた。彼女一人で3体斃しているが、当然のように無傷だ。

「ナイスファイッ!じゃねえシカ。やる時は事前に言えといつも言ってるシカ」
「まあまあ。あの距離の投石で怒られるようじゃ、長槍とかでつつく攻撃も全部ダメね」
「昔から、アンデッドは敵意や殺意にも反応すると言われてたからな。たぶんもっと遠くから弓撃っても襲ってくるぞ」
「このあたり、動画でわかりやすく説明してあげないとね。その方が、視聴者お客様も買いやすいでしょ?」

なるほど、確かにそうだと俺はセナを見た。目の端で、シャイルも意地の悪い笑顔をセナに向けているのがわかる。

「ちょっと待つシカ!?打ち合わせではスケさんの間をすり抜ける程度の動きで十分って言って」
「セナ、初心を思い出して。私たちが一番大切にするものは何?」
「そ、それはお客様の笑顔でシカ。でもこういうのとはちょっと違うシカ!」

この調子では、いつものように言いくるめられるだろう。台本を書き換えないといかんな。視聴者が知りたい情報を得られつつ、画面映えする内容に。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!

神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。 そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。 これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。  

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

処理中です...