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第1章 通信販売、始めました
第16話 転売屋との戦い(3)
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『ななな、なーんと!追加の3,000個も売り切れてしまったでシカ!』
『困ったわねえ。プロデューサー、何とかならない?』
ギルドカードの中では、シャイルとセナの“追加の追加”配信が流れている。転売屋の動きに合わせて、アニエスによる追撃が発動したのだ。
『え?なになに?太陽教会様の予備在庫も開放してもらえそうだ、ですって!?』
『まさかの、再追加2,000本でシカ!?凄すぎるシカ!』
我ながら、わざとらしい演出だ。でもまあ、これで良い。重要なのは、転売屋の財布と精神に圧をかけ続けることだ。
俺達3人は、転売屋集団のうち37人が集まり、転売オペレーションを行っているであろうリンゲン商会の倉庫裏で配信を見守っていた。ほどなくして、同じ配信を見たであろう彼らの動揺した声が壁越しに聞こえてくる。
(おいヘムジン!ポーションなんてそう大量に作れるはずないんじゃなかったのか!?)
(知らねえよ!初級の小回復ポーションでさえ、普通なら1日10本作れれば良い方なんだ!それ以上は魔力がもたねえよ!)
(スチームフロントの太陽教会なんて、魔法使える奴何人もいないだろ!どんな絡繰りがあれば10,000本なんて用意できるんだ!?)
(とにかくリンゲン様に連絡とれ!もう借金に突入してるんだぞ!?これ以上は無理だ!)
「……いや本当に、プロデューサーってばどうやってこんなに大量に確保したの?」
シャイルが中腰のまま振り返り尋ねてくる。セナが苦い顔をしているのは気配でわかった。
「俺の職業がさ、付与魔術師だってことは知ってるよな?」
「伝説の唯一職業よね。魔族大戦の英雄が持っていたという」
その本人であるということは伝えているんだが、イマイチ認識が薄いらしい。
「太陽教会の地下にな、生命魔力転送と自然魔力吸収の石像を作成したんだ」
「ん?んん?」
「混乱するのも無理ねーでシカ。セナも自分の目で見たものを信じられなかったでシカ」
さらっと言ったが、これらの効果を持つ魔道具は、仮に流通するならばとんでもない値打ちがつくだろう。生命魔力転送を持つパーティは消費魔力の均一化から休憩時間を大幅に短縮できるし、自然魔力吸収の石像なんて龍脈への接続が1本増えるレベルの意味を持つ。
「そんでな。あとはアニエスがフルーゴ司祭とトボコグ助祭に魔力を供給しまくった」
「わーお……」
驚いたというか呆れた表情でシャイルが固まる。
「あとは、二人に絶えず休まず、ノルマ達成までポーション化の魔法を使いまくっていただくだけだな。1回で風呂桶1杯分くらいの清水をポーション化できるみたいだから、どちらかと言うと瓶詰めする作業員を確保する方が手間取った」
作業員は24時間稼働させられないし、マスク手袋白衣なんかも支給する必要があった。
「究極のゴリ押しでシカね。姐さん、魔力貯蔵庫としてしか見てもらえていないでシカ。可哀想すぎるでシカ……」
聞こえの悪い言い方はやめてくれ。アニエスにしかできない仕事だから、アニエスに頼んだのだ。
「ちなみに、魔力以外の素材を調達した手腕の方も褒めてくれて良いんだぞ。あれはあれで大変だったんだからな。」
ポーションの素材は、清らかな水とガラスか陶器の瓶、そしてキャップとなるゴム栓だ。ゼラヌス茶の味は、ポーション化の魔力を込めると勝手につくらしい。
水は教会の井戸を使うとして、瓶とキャップを当日注文翌日納品させるのは相当な無茶を通す必要があった。具体的には、一般価格の10倍で買い取る旨を各工房に連絡し、他に受けていた仕事を全部中断してもらってこちらの仕事にリソースを回させたのだ。
「再来週が決算週で良かったよ。たぶん今回協力してくれた工房は業績急上昇で、株価にも影響するはずだ」
10倍の金額を支払うとはいえ、ポーション用の瓶なんて普通は一つ20カパくらいのものだ。キャップのゴム栓なんて10個で1カパもしない。
これに対し、ポーションの販売価格は一つ100ゴルド。
利益率がとびきり高い液物商材だからこそできる、札束ビンタ作戦であった。
「さて、そろそろ突入しよう。二人とも準備は良いか?声張れるか?」
「いつでも」
「行けるでシカよ」
裏話をしている間に、緊張もほぐれたようだ。俺たちは倉庫正面に回りながら最終確認を行う。
「よし、じゃあ正面受け付けの手前でカメラを回し始める。相手が出てきたら、考える隙を与えないよう一気にまくし立ててくれ。さっき裏口の扉に封印を掛けたから、そこからは逃げられないはずだ。裏口をガチャガチャやってる奴がいたら容赦なく問い詰めて、とにかくマウントをとり続けること」
「「了解!」でシカ!」
正面に到着する。搬入出用のシャッターは閉じているが、人が出入りする扉は施錠されていなかった。
作戦の第2段階、開始だ。
『困ったわねえ。プロデューサー、何とかならない?』
ギルドカードの中では、シャイルとセナの“追加の追加”配信が流れている。転売屋の動きに合わせて、アニエスによる追撃が発動したのだ。
『え?なになに?太陽教会様の予備在庫も開放してもらえそうだ、ですって!?』
『まさかの、再追加2,000本でシカ!?凄すぎるシカ!』
我ながら、わざとらしい演出だ。でもまあ、これで良い。重要なのは、転売屋の財布と精神に圧をかけ続けることだ。
俺達3人は、転売屋集団のうち37人が集まり、転売オペレーションを行っているであろうリンゲン商会の倉庫裏で配信を見守っていた。ほどなくして、同じ配信を見たであろう彼らの動揺した声が壁越しに聞こえてくる。
(おいヘムジン!ポーションなんてそう大量に作れるはずないんじゃなかったのか!?)
(知らねえよ!初級の小回復ポーションでさえ、普通なら1日10本作れれば良い方なんだ!それ以上は魔力がもたねえよ!)
(スチームフロントの太陽教会なんて、魔法使える奴何人もいないだろ!どんな絡繰りがあれば10,000本なんて用意できるんだ!?)
(とにかくリンゲン様に連絡とれ!もう借金に突入してるんだぞ!?これ以上は無理だ!)
「……いや本当に、プロデューサーってばどうやってこんなに大量に確保したの?」
シャイルが中腰のまま振り返り尋ねてくる。セナが苦い顔をしているのは気配でわかった。
「俺の職業がさ、付与魔術師だってことは知ってるよな?」
「伝説の唯一職業よね。魔族大戦の英雄が持っていたという」
その本人であるということは伝えているんだが、イマイチ認識が薄いらしい。
「太陽教会の地下にな、生命魔力転送と自然魔力吸収の石像を作成したんだ」
「ん?んん?」
「混乱するのも無理ねーでシカ。セナも自分の目で見たものを信じられなかったでシカ」
さらっと言ったが、これらの効果を持つ魔道具は、仮に流通するならばとんでもない値打ちがつくだろう。生命魔力転送を持つパーティは消費魔力の均一化から休憩時間を大幅に短縮できるし、自然魔力吸収の石像なんて龍脈への接続が1本増えるレベルの意味を持つ。
「そんでな。あとはアニエスがフルーゴ司祭とトボコグ助祭に魔力を供給しまくった」
「わーお……」
驚いたというか呆れた表情でシャイルが固まる。
「あとは、二人に絶えず休まず、ノルマ達成までポーション化の魔法を使いまくっていただくだけだな。1回で風呂桶1杯分くらいの清水をポーション化できるみたいだから、どちらかと言うと瓶詰めする作業員を確保する方が手間取った」
作業員は24時間稼働させられないし、マスク手袋白衣なんかも支給する必要があった。
「究極のゴリ押しでシカね。姐さん、魔力貯蔵庫としてしか見てもらえていないでシカ。可哀想すぎるでシカ……」
聞こえの悪い言い方はやめてくれ。アニエスにしかできない仕事だから、アニエスに頼んだのだ。
「ちなみに、魔力以外の素材を調達した手腕の方も褒めてくれて良いんだぞ。あれはあれで大変だったんだからな。」
ポーションの素材は、清らかな水とガラスか陶器の瓶、そしてキャップとなるゴム栓だ。ゼラヌス茶の味は、ポーション化の魔力を込めると勝手につくらしい。
水は教会の井戸を使うとして、瓶とキャップを当日注文翌日納品させるのは相当な無茶を通す必要があった。具体的には、一般価格の10倍で買い取る旨を各工房に連絡し、他に受けていた仕事を全部中断してもらってこちらの仕事にリソースを回させたのだ。
「再来週が決算週で良かったよ。たぶん今回協力してくれた工房は業績急上昇で、株価にも影響するはずだ」
10倍の金額を支払うとはいえ、ポーション用の瓶なんて普通は一つ20カパくらいのものだ。キャップのゴム栓なんて10個で1カパもしない。
これに対し、ポーションの販売価格は一つ100ゴルド。
利益率がとびきり高い液物商材だからこそできる、札束ビンタ作戦であった。
「さて、そろそろ突入しよう。二人とも準備は良いか?声張れるか?」
「いつでも」
「行けるでシカよ」
裏話をしている間に、緊張もほぐれたようだ。俺たちは倉庫正面に回りながら最終確認を行う。
「よし、じゃあ正面受け付けの手前でカメラを回し始める。相手が出てきたら、考える隙を与えないよう一気にまくし立ててくれ。さっき裏口の扉に封印を掛けたから、そこからは逃げられないはずだ。裏口をガチャガチャやってる奴がいたら容赦なく問い詰めて、とにかくマウントをとり続けること」
「「了解!」でシカ!」
正面に到着する。搬入出用のシャッターは閉じているが、人が出入りする扉は施錠されていなかった。
作戦の第2段階、開始だ。
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