33 / 57
第2章 空飛ぶ物流改革
第6話 赤い髪の策士(セナ視点)
しおりを挟む
プロデューサーが緊急ボタンを押してすぐ。たぶん、呼吸5回分も待たなかったと思います。
「リュート、大丈夫!?」
虚空から血相を変えたアニエス姐さんが飛び出てきました。
服装は研究所でよく見る白衣ですが、右手には見たことのない杖が握られています。
遠目にも眩暈がするほどの魔力を秘めていることがわかるそれは、姐さんが本気を出すときにしか使わないという伝説の神具、“征服者”に違いありません。
「あれ?シャイルとセナも無事ね。何が起きてるの?」
「すまんアニエス、命の危険はないから、とりあえず安心してくれ」
プロデューサーは両手を広げ、差し迫った状況ではないことを強調しました。
姐さんは拍子抜けした顔で口をとがらせます。
「な、何よ。びっくりしたじゃない。じゃあ何が起きたって言うの?」
そんな姐さんの両肩を、プロデューサーはがっしりと掴みました。
そして瞳を逸らさず、こう言ったのです。
「アニエス、これから君の部屋に行って良いか?」
プロデューサー!だからあんたのそういう所でシカ!
思わずツッコみそうになる私の口を、シャイルが塞ぎました。
(しっ!もう少し見守るわよ)
これは悪いことを考えているときの顔です。
「はえっ!?今から!?駄目ではないけれど、私にも準備というものが」
案の定、姐さんは良からぬ方に勘違いしています。
やや早合点しすぎな気もしますが、あんな風に肩を掴まれて言われると、そう捉えるのも無理はありません。
「あー、すまん。さすがに急すぎたな。今日じゃなきゃダメなことはないんだが、こういうのってタイミングがあるからな。出来れば早い方が嬉しい。明日は空けられるけれど明後日からは王都に出張があるから、それ以降だと次に戻れるのは」
「わかったわかった、今日でいいから!」
へ、部屋を片付ける時間くらいは待ってて頂戴と姐さんは顔を赤らめます。
何でしょう、この恥ずかしい気持ちは。
(プロデューサー、本当に質が悪いわよね)
(アニエス姐さん、あれは覚悟を決めた顔でシカよ)
混乱から立ち直り、転移門の準備を始める姐さんに、シャイルが追い打ちをかけます。
「あ、アニエス姐さん!私たちスタッフさんと晩ごはん食べて帰るんで!お酒も入れたい気分だから、部屋に戻るのは遅くなると思います!」
なっ!?そうなの!?と振り返る姐さんは、耳まで真っ赤です。
ぐっ!と親指を立てるシャイルは、悪魔にしか見えません。
(次の選択当番、セナよね。姐さんの勝負下着が洗われてるかどうか確認よろしく)
(あー、箪笥の奥の、一番えっちなやつでシカ)
(そうそう、黒の透け透けの、高そうなやつ)
(今回もプロデューサーに見せる機会はないんでシカね……)
(いやいや、プロデューサーも男だもの。もしかしたら、もしかするかもよ?)
(本当にそう思うなら、賭けるでシカ?セナ、何も起きない方に1万ゴルドぶっこむでシカよ?)
(ごめん、私が悪かったわ)
二回も発動に失敗してようやく転移門を開く姐さんを、私とシャイルは温かい目で見守りました。
◇◇◇
その日の夜、ほろ酔いで部屋に帰った私たちは、ダイニングテーブルに力なく突っ伏す姐さんを発見します。
「もう本当に最低……今すぐ死にたい……」
「姐さん、私、姐さんにはもっといい男がいるんじゃないかって思うんですよ」
シャイル、さてはこれが狙いでしたね。仲を取り持つフリして遠ざけるとは、恐ろしい策士です。
「いないもん、そんな人」
「まあまあ、元気出してください。そして視野を広げましょう」
「あーーーーもう!リュートのばかーーーっ!!!」
この日の夜は、もうちょっとだけ姐さんのお酒に付き合いました。
「リュート、大丈夫!?」
虚空から血相を変えたアニエス姐さんが飛び出てきました。
服装は研究所でよく見る白衣ですが、右手には見たことのない杖が握られています。
遠目にも眩暈がするほどの魔力を秘めていることがわかるそれは、姐さんが本気を出すときにしか使わないという伝説の神具、“征服者”に違いありません。
「あれ?シャイルとセナも無事ね。何が起きてるの?」
「すまんアニエス、命の危険はないから、とりあえず安心してくれ」
プロデューサーは両手を広げ、差し迫った状況ではないことを強調しました。
姐さんは拍子抜けした顔で口をとがらせます。
「な、何よ。びっくりしたじゃない。じゃあ何が起きたって言うの?」
そんな姐さんの両肩を、プロデューサーはがっしりと掴みました。
そして瞳を逸らさず、こう言ったのです。
「アニエス、これから君の部屋に行って良いか?」
プロデューサー!だからあんたのそういう所でシカ!
思わずツッコみそうになる私の口を、シャイルが塞ぎました。
(しっ!もう少し見守るわよ)
これは悪いことを考えているときの顔です。
「はえっ!?今から!?駄目ではないけれど、私にも準備というものが」
案の定、姐さんは良からぬ方に勘違いしています。
やや早合点しすぎな気もしますが、あんな風に肩を掴まれて言われると、そう捉えるのも無理はありません。
「あー、すまん。さすがに急すぎたな。今日じゃなきゃダメなことはないんだが、こういうのってタイミングがあるからな。出来れば早い方が嬉しい。明日は空けられるけれど明後日からは王都に出張があるから、それ以降だと次に戻れるのは」
「わかったわかった、今日でいいから!」
へ、部屋を片付ける時間くらいは待ってて頂戴と姐さんは顔を赤らめます。
何でしょう、この恥ずかしい気持ちは。
(プロデューサー、本当に質が悪いわよね)
(アニエス姐さん、あれは覚悟を決めた顔でシカよ)
混乱から立ち直り、転移門の準備を始める姐さんに、シャイルが追い打ちをかけます。
「あ、アニエス姐さん!私たちスタッフさんと晩ごはん食べて帰るんで!お酒も入れたい気分だから、部屋に戻るのは遅くなると思います!」
なっ!?そうなの!?と振り返る姐さんは、耳まで真っ赤です。
ぐっ!と親指を立てるシャイルは、悪魔にしか見えません。
(次の選択当番、セナよね。姐さんの勝負下着が洗われてるかどうか確認よろしく)
(あー、箪笥の奥の、一番えっちなやつでシカ)
(そうそう、黒の透け透けの、高そうなやつ)
(今回もプロデューサーに見せる機会はないんでシカね……)
(いやいや、プロデューサーも男だもの。もしかしたら、もしかするかもよ?)
(本当にそう思うなら、賭けるでシカ?セナ、何も起きない方に1万ゴルドぶっこむでシカよ?)
(ごめん、私が悪かったわ)
二回も発動に失敗してようやく転移門を開く姐さんを、私とシャイルは温かい目で見守りました。
◇◇◇
その日の夜、ほろ酔いで部屋に帰った私たちは、ダイニングテーブルに力なく突っ伏す姐さんを発見します。
「もう本当に最低……今すぐ死にたい……」
「姐さん、私、姐さんにはもっといい男がいるんじゃないかって思うんですよ」
シャイル、さてはこれが狙いでしたね。仲を取り持つフリして遠ざけるとは、恐ろしい策士です。
「いないもん、そんな人」
「まあまあ、元気出してください。そして視野を広げましょう」
「あーーーーもう!リュートのばかーーーっ!!!」
この日の夜は、もうちょっとだけ姐さんのお酒に付き合いました。
0
あなたにおすすめの小説
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜
音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった!
スキルスキル〜何かな何かな〜
ネットスーパー……?
これチートでしょ!?
当たりだよね!?
なになに……
注文できるのは、食材と調味料だけ?
完成品は?
カップ麺は?
え、私料理できないんだけど。
──詰みじゃん。
と思ったら、追放された料理人に拾われました。
素材しか買えない転移JK
追放された料理人
完成品ゼロ
便利アイテムなし
あるのは、調味料。
焼くだけなのに泣く。
塩で革命。
ソースで敗北。
そしてなぜかペンギンもいる。
今日も異世界で、
調味料無双しちゃいます!
木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!
神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。
そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。
これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる