田舎を追放された俺、財閥の容姿になって無双する〜元いじめられっ子が世界を変えるまで〜

第六話 いざ帝王学・実践訓練！

翌朝、鈴木邸の会議室に呼び出された。

重厚な木製扉を開けると、鈴木会長が静かに紅茶を口にしていた。
背後にはレナが控えている。

「優斗。そろそろ“実戦”の時だ。」

「実戦……？」
椅子に腰を下ろす間もなく、胸が高鳴る。
会長は分厚い封筒を差し出した。
「これが今日からお前が指揮を執る会社の資料だ。　
“アーステック”――環境関連の子会社だが、今は倒産寸前だ。」

「僕が……社長、ですか？」

「代理だ。社員十五名、資金は三ヶ月もたぬ。　だが、ここで人を導けるかどうかが、お前の真価を決める。」

レナが補足する。
「現場では誰もあなたを“会長の孫”としては見ません。　“田舎上がりの若造”として見下すでしょう。　それでも、信頼を掴めるかどうか。」

俺は拳を握りしめた。
「やってみます。」


～アーステック社～
昼過ぎ、黒塗りの車が古びた雑居ビルの前で止まった。
社名プレートは色あせ、ガラス扉の中は薄暗い。
エアコンは壊れ、机には山積みの書類。

社員たちの顔には、疲労と諦めが刻まれていた。

「……ここが俺の最初の現場か。」

レナは車を降りながら微笑んだ。
「ようこそ、“戦場”へ。」

ドアを開けると、オフィスの奥から鋭い声が飛んできた。
「どなたですか？　営業のアポイントは――」

「今日からここで社長代理を務める、鈴木優斗です。」

一瞬、空気が凍りついた。男たちは顔を見合わせ、誰かが小さく笑った。
「……会長の孫って噂、本当だったのか。お坊ちゃん研修かよ。」（まさかみんな知っていたとは...）

冷たい視線。


俺は心の奥で“昔の自分”を思い出していた。
教室で、孤立していたあの日の感覚。

――でも、もう逃げない。
「俺は研修じゃない。会社を立て直しに来た。」

～ 第一戦　信頼の火種～
午後。
会議室に全員を集め、俺はホワイトボードに数字を書き出した。
「売上、三ヶ月連続赤字。主力の契約は細川グループに切られた。　でも……まだ終わっていない。」

社員の一人が笑った。
「終わってるよ。資金繰りも地獄、社長は逃げた、残ってるのは俺ら底辺だけ。」

「じゃあ質問です。」
俺はゆっくりと前を見渡した。
「もし、この会社を一度だけ再建できるとしたら、あなたは残りますか？」

沈黙。
やがて一人の若い女性社員が小さく手を上げた。
「……できるなら、残りたい。ここで働くの、好きでした。」

俺は頷いた。
「ありがとう。じゃあそれでいい。　会社は“数字”じゃなく“人”でできてる。　
俺はあなたたちを信じる。だから、三ヶ月で奇跡を起こそう。」

その言葉に、室内の空気が少しだけ変わった。
疑いが、わずかに希望に変わる。

それと同時に、年配社員からは
「なんだあいつは？生意気だな」
と、嫉妬の声も聞こえてきた。

それを横目に、レナが隅で静かにメモを取っているのが見えた。


～数字の攻防～
翌週から、俺たちは必死に動いた。
眠る時間も惜しみ、古い顧客リストを洗い直し、提案資料を作り直す。

細川系列に切られた契約先にも頭を下げ、誠実に話を重ねた。
周りからはどうせ無理だと嘲笑いされる生活だった。

レナは日々報告を取りまとめ、俺に助言をくれた。
「焦らないこと。数字は“信頼の結果”に過ぎません。　
あなたが人を動かせれば、結果は後からついてきます。」

二週間後。一件の大型契約が決まった。
取引先の担当が笑顔で握手をしてくれたとき、胸の奥が熱くなった。
（これが……“導く”ということか。）

僕を嘲笑っていた年配社員たちは、何も言えなくなっていた。
なんか清々しい気分だ！


～影の動き～
だが、平穏は長く続かなかった。

夜、会社を出ようとした時、レナがスマートフォンを見て表情を変えた。
「優斗様。情報部から報告が。細川グループが動いています。」

「……何？」

「アーステックの主要取引先を“買収”しにかかっているようです。　
つまり、あなたの再建を潰すつもりです。」

静かに拳を握る。
あの細川が、また俺の前に立ちはだかるのか。

「わかりました。次は“盤上”じゃない。“現実”の戦いですね。」

レナは少しだけ笑った。
「ええ。これこそが帝王学の真骨頂です。」