異世界へようこそ!

野上葵

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「私がもっと強ければ!家族を失う事はなかったのです!!!」

涙を流し、叫んだいずみの声は遠く、世界の彼方に響いているような気がした。

「は?……」
「……いずみ……!もう……やめて」
「ノヴィア……」
「とりあえず、俺たちはクエストに行くのをやめよう。クエストに行くのは、いずみの話を聞いてからだ。」

ケンカから出てきた過去のいずみの過ちに、俺たちは騒然となった。ひとまずいずみを椅子に座らせて泣き止むのを待つことにした。重たい空気になりながらも、俺たちは必死で話を聞こうとした。

「もう、いいのです。落ち着いたのです」
「いずみ大丈夫?私、知らなかったから、あんな酷い態度とって……ごめんなさい」
「過去を知ったからってそんな優しくしなくてもいいのです」

涙こそとまっていたものの、いずみは悲しげだった。既に、諦めているような……そんな気がした。
過去の事を知ってしまった以上、元には戻れないといずみは思っているらしい。だが、実際それは間違いだ。

「いずみ。お前の過去を知ったって、俺はお前をパーティーから外したりしないし、裏切ったりもしない。無理矢理自己完結すんな」
「治……」
「治がまともな事言ってるわ。大丈夫?」
「心配するのは俺じゃないだろ」

少しいずみが笑っている。

「皆さんありがとうなのです。でも……その癒えない傷でクエストに行くのは……」
「ピックミーアップ!!!」

さすがは、空気が読めないクズ女神だ。すぐに傷は癒えてしまった。

「治ったのです!」
「当たり前でしょ!女神を舐めんじゃないわよ!!」

き、急展開過ぎる……。いずみの過去より、こっちに驚きなのだが……。まあ、いいか。

「傷も癒えたし、行くぞ!クエスト!」
「でも、どこに行くの?」
「スゴロククエストしか開いていないのです。今日はスポーツクエストも、パズルクエストも定休日なのです」
「クエストに定休日なんてあるんだな……まあ、行くぞ!スゴロククエスト!」

こうして俺たちは、スゴロククエストにやってきた。

<スゴロククエスト 相手に勝利せよ>

『やぁ!また会ったね!僕はたけもん!!今日はスゴロククエストでの挑戦かな?』

「そうなのです!たけもん!説明をお願いしますなのです!」

『よし!それじゃあ、説明をするよ!スゴロククエストは簡単に言ったら、人生ゲームみたいなものなんだ!
スゴロクを振って先にゴールしたチームが勝ち。だけど……失敗しちゃうと育成強化のために、特別室へ連れて行かれちゃうんだ!だから、失敗しないように気をつけてね!何か質問はないかい?』

野蛮な話をされた後に質問を聞く勇気がない。俺たちは黙って、首を振った。

『よし!ないようだね!じゃあ早速行ってみよー!!!』

そして、スゴロククエストの扉を開けると、見たこともない景色が広がっていた。

「なんだこれ。よくアニメとかで見る、草とか気が大きくなってるんだが」
「私たちが小さくなっただけなのです。たけもんが来るまで少し待つのです」

『やあ!お待たせ!たけもんだよ!ここは森林スゴロク!自然と触れ合いながら、進んでいくクエストだよ!ああ!言い忘れていたけれど、1番早くても獲得賞金が低ければ、場合に応じて逆転勝利されちゃうかもだから、気をつけてね!それじゃあ、対戦相手の登場でーす!』

向こうのほうから、人が歩いてくる。見覚えのある顔だ。
……え?

「またあったな!田中治!このデイヴ様に2回も当たるなんて、可哀想な奴だ」

対戦相手の運がつくづくない。なんでこいつなんだ。よりによって。

「えっと……デフ……だったっけ?」
「デイヴだ!お前!デイヴ様のエクスカリバーを取っておいて、その態度とは……痛い目をみても、知らないからな」

フンッと鼻を鳴らし、そっぽを向く。子供かて。お前。

『じゃあ、早速サイコロ振っていこー!!まずは、治チーム!』

「賞金を獲得すればいい話でしょ?ここは、駆け引きが強い私の出番ね!」

そう言い放つと、ナイトは4を出した。

「4って……微妙だな」
「まあ、見てなさいって!1.2.3.4!!」

頭上にミッションが映し出される。どんなものなんだ……ミッションって……。簡単なものがいいな。ここの物を移動しろとか。とにかく戦わなければ何でも良いんだが。

<ドラゴンを倒して、一攫千金しよう!>

……は?ドラゴン?また戦うのか。
あ、そういえば、スキル覚えてなかった。
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