異世界へようこそ!

野上葵

文字の大きさ
31 / 33

31

しおりを挟む
「……チェック……メイト……」

静かな空間に1人静かに呟いた。声は谺し、遠く、遠くへ響き渡った。

「凄いのです!治!一気に2人やっつけちゃうなんて!素晴らしいのです!」

ぴょんぴょん跳ねながら、いずみは精一杯大声を出していた。可愛い。こんな妹が欲しかったのに……。

「治!何言ってるの!?全然チェックメイトじゃないじゃない!」
「は?でも、ちゃんと倒したし……」
「あ・れ!!!」

ナイトが指をさす方を向くと、今にも爆破しそうな時限爆弾が置いてあった。……え!?全然ハッピーエンドじゃないじゃん!

「あと15分で、このホルストごとひとっ飛びよ。なんとかして、策を練らないと……」
「なあナイト。お前運は強いんだよな?そしたら、お前のスキルとかで、これを飛ばせないのか?どこかに」
「飛ばせるのは飛ばせるけど、自分の運がどうとかじゃないの。もし、飛ばしたないなら、治かいずみかノヴィアの運を借りる必要があるわ」

けど、俺らの中に特別強い幸運を持ってる奴はいないし……。

「そうだ、ナイト!そのスキルを俺に教えてくれ!俺が飛ばせば、ナイトの運も借りられるだろ!?な?」
「良いけど、少し難しいスキルよ?大丈夫なの?」
「大丈夫さ!多分……。まあ、とりあえず教えてくれ」

そうして、教えてもらう事約3分。殆ど習得してしまった。何が少し難しいだ。全然難しくないじゃないか。

「いい?治。難しいのはこれからよ。この時限爆弾を人が密集しているところじゃなくて、辺りに何もない所、林とか草原とかなんでも良いわ。何もない所に飛ばさなければ、市街地調査本部から連絡がくるわ。そして、治は塀の中よ。いい?それを逃れるためにも、必死に想像するのよ!」
「へ!?そんな事言われたって……。どこに落とせばとか、イメージできるわけ……」
「イメージしないと人が密集してる所に落ちてしまうの!!!そうだ!レザン草原!あの草原を思い出して!あそこに落とすの!絶対あそこには人がいないから!」
「レザン草原って、ふもとにある大きな草原のことか?」
「他に何があるっていうの!ほら!もう時間がないのよ!あと5分で爆破よ!?」
「ちょっと待て!さっきホルストごと吹っ飛ぶって!」
「レザン草原は別よ!早く!早くして!」
「分かったよ!じゃあ早く手をおけ!!!!いくぞ……。どうなっても知らないからな……。能力!月夜叉!!!!」
「お願い!落ちて!レザン草原に!」

スキルを発生したと同時に、時限爆弾は光に包まれ遥か彼方へ消えていった。あ、レザン草原に落ちたのかな……。これで捕まらなければ良いのだけれど。俺が。

「治!大丈夫!?多分レザン草原にはちゃんと落ちてるはず……!でもまあ、捕まるのは治だし!良い事にしましょう!」
「良くねぇよ!!異世界生活始まって以来、ロクなもんにあってねぇだろ!?あのデブとかユーリさんとかルイナとか!それに!今1番ロクじゃねぇのはお前だよ!ナイト!何、自分が捕まらなければOKみたいな言い方してんだよ!責任はナイトにもあるからな!」
「勝手にほざいてなさい。私は役者よ!そんな演技なんて容易くできるの!責任は私にもあるなんて、さっきは聞いてなかったんだから。大人しく治だけ捕まってればいいのよ」

こいつ……。この世の中でこんなに意地の悪い役者はいない……。大人しく捕まれなんて、底辺が言うようなことだろ……。よし、あいつのことも俺の最大限の演技力で言ってやろう。

「さあ!帰ってパーッと遊びましょう!あの人たちは、フォールダークネスよ!絶対賞金が出てるに違いないわ!早く戻りましょう!」
「はいなのです!私、早くお風呂に入りたいのです……。もう汗でベトベトなのです……」
「帰ろう……」
「そうだな。帰るか!」

こうして、フォールダークネスの跡地(?)を出た俺たちは、職業管理施設に戻った。

「どうして!?どうして、賞金がでてないの!?」
「そう言われましても……。一応ルイナ先輩はこの管理施設の受付をされていましたし、ユーリさんもライフスタイルの店主さんだったわけで……。なので、このような場合は賞金は出ないことになっているんです」
「なんでよ!?私たち命懸けで戦ったのよ!?それが賞金無しなんて、聞いてないわよ!早く出しなさいよ!賞金!!あなたのお金でも良いから!」
「申し訳ありません……」

ナイトは新受付のお姉さんのカレンさんにお金をねだっている。全く、女神だなんて。聞いて呆れるわ。ナイトが女神なら、誰でも女神になれる気がする。

「いずみ。もし、人が密集してる所に飛んだら、いつぐらいに連絡が来るんだ?」
「えっと……場合にもよりますけど、大体すぐに来るので、もう来ないと思いますよ」

こんな会話をして早2日。やはり、人が密集しているとこには落ちなかったららしい。本当に良かった……。捕まるなんてごめんだからな。

「あ、治。私依頼がきてるわ。新しく、異世界に来る人のね」
「あ、ああ。行って来い。ちゃんと紹介出来るんだろうな?」
「あったりまえでしょ!?私を誰だと思ってるの!?可愛くて清純な女神様よ!じゃあ、行ってくるわ」

あんな奴が女神なんて、やっぱり信じられない……。少しおかしかったので、笑ってしまった。

「お疲れ様です。あなたは今日をもって死人となりました……」

ここは笑って、紹介する。全力で!

「異世界へようこそ!!」

夜空にはキラキラと星が輝いていた。

******
最後まで、見てくださりありがとうございました。また、番外編つくるかもです。よろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...